- コロナ融資企業の27%が借り入れ依存”70%”超え 「過剰債務」の副作用顕在化
- 最も割合高い業種は「旅館・ホテル」の74%、業績厳しいB to C業種が上位に
- 今年から返済本格化のコロナ融資、返済原資のない中小企業の「あきらめ」倒産増懸念
コロナ融資企業の27%が借り入れ依存”70%”超え 「過剰債務」の副作用顕在化
コロナ融資の副作用が顕在化しつつある。「コロナ融資」を導入する企業のうち、2019~21年(各1~12月期)の財務状況が判明した約2万6000社の財務状況について調査した結果、月商に対する借入金の比率を示す「借入金月商倍率」は平均4.8カ月に達したことが分かった。コロナ前(2019年)の3.4カ月から約1.4カ月分増え、「適正」の目安とされる4カ月を大幅に上回った。全国平均の3.9カ月を約1カ月上回っているほか、倍率の差も0.4カ月差から0.9カ月差に拡大している。コロナ融資を受けた企業では、業績の悪化と借入金の増加を背景に、企業における債務負担が急速に膨張している。
また、企業の土地や建物といった総資産のうち、借入金が占める割合(借入依存度)について調査を行った。借入依存度は、高くなればなるほど返済負担が増加し、資金繰りに悪影響が出る可能性が高くなる。一般的に50~60%以内が目安とされ、70%以上は倒産リスクが高い警戒すべき水準とされる。こうしたなか、コロナ融資を借りている企業のの借入依存度平均は50.9%に達した。また、こうした企業の約27%が資産の70%以上を借入金で調達している=過剰債務状態となっていることが分かった。全国平均と比べても約6ポイントの開きがあるほか、コロナ前の19%から10ポイント近く割合が上昇しており、コロナ融資企業の4社に1社が倒産懸念の高い「倒産予備軍」だった。全国200万件・40兆円に上る無利子・無担保融資(コロナ融資)は、コロナ禍で窮地に陥った中小企業の資金繰りを下支えする命綱としての役目を果たし、これまで倒産を大幅に抑制してきた。しかしその半面、こうした手厚い支援の副作用が、返済能力を大幅に超過した債務を抱える企業を大量に生み出す「過剰債務」問題として顕在化しつつある。
最も割合高い業種は「旅館・ホテル」の74%、業績厳しいB to C業種が上位に
業種別にみると、借り入れ依存度が70%を超えている割合が最も高いのは「旅館・ホテル」で、コロナ融資企業の7割超に上った。旅館・ホテルでは、借入金が総資産を上回る債務超過の割合も21年で3割超を占めており、20年(19%)、19年(10%)に比べても大幅に増加した。旅館・ホテルでは需要の消失による運転資金需要を借入金で賄ってきたなかで、過剰債務の深刻さが増している。旅館・ホテルに次いで高いのは「居酒屋」の65%だった。
このほか、「中古車販売」(61%)、「ラーメン店・中華料理」(58%)などが続き、総じて長引くコロナ禍で業績回復が遅れるB to C業種が上位を占める。
今年から返済本格化のコロナ融資、返済原資のない中小企業の「あきらめ」倒産増懸念
コロナ融資企業全体でも、過剰債務によって財務体質が危機的状況に陥っているケースがみられるなかで、足元では今後の返済に不安を感じる企業も少なくない。帝国データバンクが全国の中小企業を中心に行った2月の調査では、コロナ融資を受けたと回答した約5000社のうち、「返済に不安を抱えている」との回答が約1割に達した。このうち、既に数社が経営破綻しており、逆風下にあった事業者の「命綱」となってきたコロナ融資が、業績が回復しない中小企業の資金繰りをより苦しめる要因となっている。
コロナ融資を受けた後に倒産した「コロナ融資後倒産」は、6月時点で既に前年の件数を上回っている。これまで減少を続けてきた倒産動向は、早ければ今夏にも本格化するコロナ融資の返済が追い打ちとなり、先行きが見通せず「あきらめ」による倒産が急増する可能性が高まっている。