5月は、連日の電力不足解消のカギとなる可能性のある「核融合」に国内でも注目が高まっており、資金調達の動きが出てきています。また、アメリカの急激なインフレによる資金調達環境への逆風は既に国内にも影響があり、上場延期や高いバリエーションでの資金調達が困難になる企業も出てきているため、今後の資金調達環境にも着目していきます。
日々、様々なスタートアップと関わるプロトスターの視点で注目を集めているニュースを紐解き、トレンドの背景や業界の動向を考えていきます。
*3,000以上のWEBメディアをモニタリングできるPR分析サービスQlipperのデータに基づいた調査結果
- 5月の記事数とツイート数の推移
次世代エネルギーとして世界で開発が進められている核融合炉の分野において、日本のスタートアップも進出し、資金調達の動きも活性化してきています。その中でも、今月はディープテック分野に精通する出資者達による支援が5月10日と25日に続けて発表されたことで、メディア露出数とSNS投稿数に盛り上がりが見られました。
また31日には、政府が「国民皆歯科健診」の導入を検討していることが報道されたことに伴い、歯科医療人材の不足を解消するスタートアップが「国民皆歯科健診」の実現に向けた3つの提言を発表したことでメディア露出件数が急増しました。
ニュースの背景:世界で進む核融合の実用化、日本でも民間企業が参入
連日世間では電力不足のニュースが流れているように、電力の安定供給が非常に求められています。今回の供給不足は戦争による石油高騰や国内での原発問題など、複数の要因によって引き起こされました。そのような中、全く新しいエネルギー供給の方法論に注目が集まっています。プロトスターではその中でも核融合に注目をしており、国内においては京都フュージョニアリングやEX―Fusion、Helical Fusionなど複数のスタートアップが創業しています。国主導でなく、民間においてこのような非常に高度な技術力を有するスタートアップが誕生していること自体注目に値します。グローバルでも注目されている領域でもあり、今後の展開次第で世界のエネルギー供給の縮図が激変する可能性があります。
- トレンドワードランキングTOP5 ※単純な記事数ではなく、時間軸なども踏まえてAIが判断
1位には、スタートアップの大規模資金調達の発表と、日本初のスタートアップ向けデットファンドを立ち上げたVCの発表により「資金調達」というワードがトレンド入りしました。2位は先月に続き「NFT」関連がランクイン。愛知県豊中市が協働実験「Urban Innovation TOYONAKA」で、NFTを利用したクリエイターの支援などへ参加するスタートアップ企業の募集を開始した記事によるものや、人気NFT作品のアニメ化プロジェクト等に取り組む企業がマイクロソフト社のスタートアップ向け支援プログラムに採択されたニュースが話題となりました。3位の「Helical」は、新エネルギーとして注目のヘリカル型核融合炉の開発を目指すスタートアップが資金調達を実施したことによるものです。4位の「AWS」はスタートアップを支援するアマゾン ウェブ サービスのプログラム「AWS Startup Ramp」に参加した多数の企業の発表が記事となりました。
ニュースの背景:米インフレに伴う資金調達の減速
現在、足元においてスタートアップの資金調達環境に逆風が吹き始めています。主なきっかけはアメリカにおける急激なインフレと、その抑制に向けた金利上昇、それに伴う株価の急落などがあげられます。久しく国内のスタートアップは潤沢な資金調達によって支えられてきましたが、今回の件により既に国内においても上場延期や高いバリエーションでの資金調達が困難になるなどの影響が出ています。
一方で、このような厳しい環境下でも大型資金調達を実現する企業もあり、スタートアップ内の評価格差が広がっているように思います。
このような厳しい環境は数年続く可能性がありますが、世界的にイノベーションの重要性は増しており、またベンチャーキャピタルファンド自体にはお金があることを踏まえると中長期的にはまた適正に戻ると予想されます。今回のショックに勝ったスタートアップはその後の世界でますます力強く成長するでしょう。
<調査概要>
■調査期間:2022年5月1日〜5月31日 (Qlipperの記事確認日時)
■調査方法:株式会社トドオナダのPR分析サービス「Qlipper」(サービスURL:https://qlipper.jp/)で、見出しに「スタートアップ」の語を含むウェブニュース記事を収集・集計
※仮想PV:国内3,000媒体以上のWEBメディアをモニタリングしているQlipperが取得したサイト構造を基に、独自エンジンで記事のページビューを予測・算出(特許出願中:特願2021-201103)
- 解説:代表取締役CEO 前川英麿
2008年、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ株式会社(現、大和企業投資株式会社、SMBCベンチャーキャピタル株式会社)に入社し、ベンチャーキャピタルに従事。その後、常駐のターンアラウンド支援に特化したフロンティア・ターンアラウンド株式会社を経て、2015年スローガン株式会社に参画。投資事業責任者としてSlogan COENT LLPを設立し、執行役員カンパニープレジデント就任。2016年11月に挑戦者支援インフラを創るべくプロトスター株式会社を創業。その他、サイトビジット社外監査役、ホロラボ社外監査役、経済産業省 先進的IoTプロジェクト選考会議 審査委員・支援機関代表、東京都 政策目的随意契約認定審査会 外部審査委員などを歴任。青山学院大学「アントレプレナーシップ概論」非常勤教師。
- 会社概要
プロトスターは、起業家と投資家を繋ぐプラットフォーム「StartupList」や、スタートアップとメディアを繋ぐコミュニティ「STARTUP 広報室」など、多様なサービスを展開しており、国内最大規模のスタートアップの支援実績を保持しています。直近では、大手企業を中心にスタートアップとの共創やアクセラレーションを促す「アライアンス事業」、起業やSaaSを中心としたスタートアップの情報を発信・アーカイブする「起業ログ」等の事業が堅調に推移し、広く“挑戦者”を支援する体制を整えています。
会社名:プロトスター株式会社( 英名:ProtoStar Inc. )
所在地:〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町9-4 日本橋富沢町ビル 501
設立日:2016年11月30日
代表者:代表取締役 CEO 前川 英麿
参加団体:一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会 賛助会員、経済産業省 J-Startup
Supporters、東京都産業労働局 インキュベーションHUB推進プロジェクト 平成
28年度採択事業、独立行政法人中小企業基盤整備機構 スタートアップエンジェル
連携推進協議会(SANA)会員