三菱ケミカルグループと三井化学は、これらの取り組みを通して、持続可能かつ強靭な化学品物流の実現を目指していきます。
- 本件の背景
近年、新型コロナウイルス感染症の拡大や自然災害の多発を背景に、安定したサプライチェーン構築の重要性が広く認識されるようになっています。こうしたサプライチェーンを支える物流業界は、小口貨物を中心とする消費財物流が増加する一方で、ドライバーや船員の高齢化、人手不足を背景に、逼迫した状況が続いています。さらに「物流の2024年問題(注2)」も加わり、将来における物流の輸送・保管能力不足は、両社の事業運営にとって、極めて重要な課題の一つとなっています。
- 2022年度内から検討、段階的に実行していくテーマ
① 中京エリア内および他エリア向けの共同輸送
両社の事業所・工場が立地する中京エリアで出荷製品を集約し、同エリア内および他エリアへの輸送を共同化する
② 輸送ネットワークの相互活用
主に中小口貨物について、三菱ケミカルグループの西日本~関東エリアの輸送ネットワークと、三井化学の東北エリアの輸送ネットワークを相互に活用する
③ 内航船の共同利用
ケミカルタンカー(液体化学品輸送船)の貸し借りおよび積み合せを行い、積載率向上、BCP確立を図る
④ 輸送ルート・マッチングツールの活用による共同物流案件の拡大
貨物と車両の最適な組合せ(マッチング)を両社での試験運用から開始し、将来的には多数企業とのマッチングへ展開する
また、共同物流の推進に不可欠となる、化学業界における物流の標準化・情報基盤整備に関しても、両社がともに参画しているSIP地域物流ネットワーク化推進協議会(注3)の活動を通じて、国、自治体および業界団体等と連携しながら取り組む予定です。
注1:三菱ケミカルグループは、三菱ケミカルグループ株式会社とそのグループ会社の総称です。
注2:働き方改革関連法によって、2024年4月より「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」が適用されることにより、物流業界に生じる人手不足等の諸問題を指します。
注3:内閣府が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「スマート物流サービス」(情報を活用したスマート物流の構築を目指すプロジェクト)において代表研究機関である株式会社セイノー情報サービスが構築した商流需給オープンプラットフォームおよび物流需給オープンプラットフォームを活用した「地域物流モデル」の社会実装を目的として、2021年11月16日に設立された協議会です。会員数は、企業・団体・個人を含めて126(2023年1月10日時点)。
- 三菱ケミカルグループ 代表執行役エグゼクティブバイスプレジデント チーフサプライチェーンオフィサー/福田 信夫のコメント
自然災害の頻発や世界情勢の変動、少子高齢化など、サプライチェーンに関して不安材料が増えてきています。化学産業は、人々の健康で快適、便利な生活を支える製品やサービスを提供するだけではなく、社会や地球の課題解決のためのソリューションを提供する役割を担っており、顧客への安定供給は社会における使命でもあります。足下で予測されている物流危機は安定供給を阻害する要因となり得ますが、個社レベルで対応できるものではありません。特殊な形態、制約条件の多い化学業界の物流領域においては、「競争」だけではなく「協調」による課題解決が求められていると考えます。また2050年のカーボンニュートラル実現に向けては、物流におけるGHG削減も必要不可欠です。
このたび三井化学様と共に課題解決に取り組むことになりましたが、今後、広く化学業界の皆様のご賛同を得つつ、この取り組みを加速させていきたいと思っています。
- 三井化学 常務執行役員 CDO デジタルトランスフォーメーション推進本部長/三瓶 雅夫のコメント
物流の現場では、ホワイト物流の推進、24年問題への対応、更にはGHG削減への取り組み等、社会課題への対応が急務であり即応することが極めて重要である一方、事業運営上の重要な機能である物流の諸課題解決を、化学会社各社が個々に取り組むことには限界が伴います。この状況下、三菱ケミカルグループ様と当社とで日本の競争力強化に資するべく、物流分野で共同化・共有化を進めることは、有意義な取り組みであると考えます。
三菱ケミカルグループ様と当社は、両社の物流ノウハウとDX技術を融合し、化学品物流分野におけるナショナルイノベーションをリードして参ります。