ブラザー工業は、2008年に岐阜県および郡上市とともに、郡上市白鳥町、美並町、八幡町のスキー場跡地など計3カ所のエリアを対象に森林の復元や保全を目指す協定を締結し、「ブラザーの森 郡上」として従業員とその家族が参加する環境保全活動を継続してきた。さらに、2014年からは名古屋大学大学院環境学研究科の支援を受け、産・官・学の三位一体の活動としてより学術的な活動へと発展させている。白鳥町では、活動場所のゾーニングや土壌に合った苗木の植樹、森林全体の環境整備などの結果、固有種であるギフチョウをはじめとした希少種の生息が確認されるようになり、森林全体の生態系の回復という成果へとつながっているようだ。
ブラザーは、「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」の中で、生物多様性保全をグループが取り組む重要課題の一つとし、「グループ全体で事業活動が生態系へ与える環境負荷を最小化し、環境負荷を上回る修復・保全活動をしている」をありたい姿として定めており、「ブラザーの森 郡上」は、ブラザーグループの生物多様性保全に対する取り組みの象徴的な拠点となっている。そして、今回の協定の締結延長をきっかけとし、これまでは従業員とその家族や地元住民の方々の協力で行ってきた森林保全活動に、一般の方が参加可能となるエコツーリズムの仕組みの構築を行うという。さらに、間伐材は2024年に名古屋市瑞穂区で着工予定の新社屋の内装へ活用することも視野に入れている。
担当者は、「今後も引き続き、こうした生物多様性保全活動および環境保全啓発の新たなコミュニケーション活動に取り組み、企業活動のあらゆる面においても地球環境の配慮に前向きで継続的な取り組みを行っていきます」と語った。
■ブラザーの森 郡上の紹介
白鳥町(エリア面積:約8ヘクタール)
スキー場跡地である白鳥町は、森林の復元を目標に従業員参加の植樹ツアーなどの環境保全活動を行ってきた拠点で、希少種の生息など生き物の多様性を取り戻しつつある。今後は、補完的な植樹や樹木の保育、調査によってこの環境を大切に守りながら、生物多様性の大切さを啓発していくコミュニケーション活動の拠点に発展させていくという。
美並町・八幡町(エリア面積:2カ所あわせて約20ヘクタール)
美並町にある郡上市保有のスギ林では、2008年から2016年まで間伐活動を行った。適切な間伐で樹木の生育を促すことにより健全な森林を維持し、表土流失の防止や水源かん養を高めている。今後も継続した活動を行いながら、森林保全活動を推進していくという。また、美並町で間伐したスギ材は、名古屋市瑞穂区に建設予定の新社屋の内装材に使用したり、混抄紙の資源として生かし、さまざまなアイテムなどに活用したりしながら、CO2の固定によるCO2の削減に貢献していくとともに環境コミュニケーションのきっかけ作りに役立てられる。