【事後レポート】エンゲージメント・サミット2023

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エンゲージメント向上を軸とした組織開発・人材育成コンサルティング支援を行う株式会社NEWONE(本社:東京都千代田区 代表取締役:上林周平、https://new-one.co.jp/ 以下、NEWONE)は、2023年7月27日、今年で4年目を迎えたエンゲージメント・サミット2023~人的資本経営の未来~ を開催し、700名を超える方にご参加をいただきました。

エンゲージメントサミット2023 ~人的資本経営の未来~ - セミナー | 株式会社NEWONE | エンゲージメント向上の新人研修・管理職研修など
すべての人に、働きがいを。すべての組織を、ONE TEAM に。

NEWONEは、「他にはない、新しい(new one)価値を生み出す」を社名に掲げ、エンゲージメントをテーマに、「個人の意識変革」と「関係性の向上」を中心とした企業向けコンサルティング、人材育成・組織開発を提供しております。

弊社では2019年より”エンゲージメントサミット”と題し、エンゲージメントやHR領域のトップリーダーの皆様と「より良い組織と個人の関係性」について探求して参りました。


今年4回目となる「エンゲージメント・サミット2023」では、「人的資本経営の未来」と題し、人的資本経営の最前線、人的資本の最大化はいかにして可能か?人的資本経営とエンゲージメント向上との望ましい関係性とは?などを、経済産業省の人材版伊藤レポートの座長であり人的資本経営コンソーシアム会長である伊藤邦雄氏(一橋大学名誉教授)、弊社顧問でもあり自律型キャリア開発(プロティアン・キャリア)の第1人者である法政大学キャリアデザイン学部教授の田中研之輔氏、「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」の事務局長である村澤典知氏(パーソルキャリア株式会社執行役員)および「人的資本の活かしかた」著者であり弊社代表の上林の4名で討論させていただきました。

<パネルディスカッション要約>

  • 日本での学校と企業の在り方、組織論と関係性の束

・大学でいうゼミの教師と学生との関係は、先生が教えてあげる印象があるが教師も学生も上下なく、学生のポテンシャルを教師側が見抜き、潜在的なナレッジや力を引き出し顕在化させるのが、ゼミの先生の役割ではないか。

・そして先生が学生に教えてやる、という構造に似た、会社は雇ってあげている、育ててあげている、仕事をさせてあげている、その関係がまだ続いてる会社も少なくない。

・そういう意味では、会社側が研修を整え、その後エンゲージメントにフォーカスを変えたのは素晴らしいことだが、一部管理職では未だ「教えてやる」と上から行く感覚がなかなか抜けていない。このあたりは経営者の方も悩まれてるポイント。

・大学と企業の一つの大きな違いは、エンゲージメントの後の結果へのコミットメント。・エンゲージメントは、常にダイナミックに変動し、関係性の中で紡ぎ出されるものと捉える。

・組織論でいえば、個人と組織のフラットな関係性が必要だと捉えられるようになってきた。しかしオフィスを見てみれば、一部権力集中の傾向がみえたりする。そのあたりを一つ一つ作り直していくことも、ダイナミックなトランスフォーメーションの中で必要と感じる。

  • エンゲージメントと人的資本経営はどう関連して考えるか?

・エンゲージメントを高めるとなると新しい目標数値が下りてくる。ではどう数字を高めるか、になるが、そもそも社員の力をいかに引き出すかの本質的なところは、人によって定義・解釈が変わるので注意が必要である。

・ビジネスシーンでは、エンゲージメントが数字でコントロールされるときもあるが、エンゲージメントを良くしても、実際に経営状態にどう響くかを経営層・管理職は気にしている。

・最近は、アメリカのギャラップ社のデータによると、収益性・離職率が時価総額と連動してる等のデータも出ているので社内説得する傾向もある。

・しかしエンゲージメントスコアを現場で支援する目標がノルマのようになり、嫌々やることになる時点でエンゲージメントは上がらない状況になり悪循環傾向。

・考え方として人的資本をバランスシートに置き換えて捉える考え方もある。

  • エンゲージメントの改善をするには?

・大きく捉えれば自己成長=期待値となり経済的報酬だけではない。とりわけ若い人たちは、最低限の期待値を持って会社に入ってきている傾向がある。その期待値が3年勤めて満たされてないとなると、投資家が株主にするように離職する。

・ある意味人的資本コストを満たされなければ離脱してしまうので、その声を会社はどうやって汲み取るのか。

・会社として、社員の声を対話だけでなく会社にどんなことを望むのかを汲み取ると同時に方向性に同意してもらうのがよい。

・社員の声を聞く姿勢でいないと会社と社員との間にはギャップが生まれ、離脱社員が多くなれば自己成長期待値も満たせなくなり業績は悪くなる。

・エンゲージメントは、生き生きと働いてもらうために、その確認作業をするための対話だったり、調査も1つの手段かもしれないがエンゲージメントの捉え方を間違うケースもある。

  • 対話の機会をどこで作っていく?会社側と社員の関係性が変わる

・人事部が作ってもいいし、社内のイントラなどもうまく活用して定期的に声を束ねる。

・最近だとキャリアオーナーシップにスポットがあたっている。キャリアオーナーシップに目覚めると、会社の成果より自分の成果となり、今の会社ではなくても良いとなる傾向がある。会社も人材を惹きつける求心力を持たないといけない。その時に初めて個人と企業のエンゲージメントが緊張感ある関係になる変曲点となる。

・昔より管理職とメンバーの関係が対等になることが益々広がっていく傾向にある。

・今までは社員はメンバーシップ型で勤める代わりに長期雇用の世界だった。しかし長期雇用でメンバーになったら、あとは会社の言いなりになる。人事異動も含め自己申告もするがほぼ受け入れられなかった。

・我々はこれからの時代、社員側は雇用関係を続けていく企業と、そして会社側は社員の主体性を認めながら組織を組み立てられるかという、ちょうど試練に立っている。

・社員は、肉体だけでなく、知的労働力や自己期待値、自己成長期待値を満たせなければ、離脱していく。ある意味で社員に主体性がないと成り立たない話である。

  • 辞めていく理由は本当にキャリア自律?

・主体的なキャリア形成自律を応援すると辞めていくという悩みがあるが、ここが間違っている。

・辞めてく理由は他にあるので、根拠のないバイアスで物事を見ず、チャレンジしたいのであれば応援し、そして連携することは非常に大事。

・エンゲージメント調査では、自身の自律性を意識せずに答えるのと、意識した上で答えるのではずいぶん違う結果になる。社員の自律性というキャリアオーナーシップもそうだが、会社や組織がどれだけキャリア自律を認めることができるか。

・現在はトランジション移行期であり、いざ社員がエンゲージメント、自律的キャリア形成に目覚め、どうキャリアを自分の行動に反映させるか選択するとなったときに、会社側の体制が整っていない可能性があり、同期化してない時期も当然ある。

・日本企業・社会は他の国と比べやはり低成長傾向。この前提で目をつぶらず、その改善の特効薬の1つが人的資本経営である。

・統計データで証明されてるのは優秀な人材から抜けていく。なぜなら携帯一つで情報が入る時代。

・優秀な人材を獲得し、エンゲージメントを高めたいならば、どんな職業においてもしっかり各人がキャリアについて考えることが必須。

・また、管理職と現場においては、現在、世代間のコンフリクトが起こっている。

・いわゆる組織内キャリア型でやってきた世代が、管理職層に残っており、若手は自分らしくやりたい自立型が多いため大手企業が働き方のスタンスを抜本的に変えていかないといけない。

・ただ、組織の環境改善も抜本的なことは必要なく、別に仕事を変えずとも、今の会社の中であなたのキャリアだと、こういったプラス面がある、今の仕事もこんなキャリアに繋がる、といった対応説明が必要。

・よって外に行くことだけが学びではなく、今目の前にあること自体の意味づけができる点もある。

  • キャリア自律で大切なのは自分の内省の時間

・人事現場界隈では、エンゲージメント・主体性が足りないのでどうにかキャリア開発に取り組む・エンゲージメント調査を実施するが、調査結果が良くない、のようなパターンもある。しかしそれは順序が違う。

・キャリア自律において大事なのは、自分と向き合う時間を長くとること。自分と向き合うと、会社から言われなくても自分からリスキリングする機会を見つける。自律性をもう少し本質的に捉えた方がいい。

・環境が変わらずとも、自分がその組織の中でどういうポジションであるか、それを目指すのがキャリア開発・外的キャリアと言われるが、自分の中で何を大事にするのかの内的キャリアを大切にしていく歴史的トランジションの局面でもある。

・欧米の例だと、キャリアクラフティングという考え方で、仕事のみならず介護・育児・健康状態もある中で、キャリア丸ごとをラフティングしていく。ビジネスパーソンは、自分はこの仕事を通じてどうなりたいのか、内省的な時間を持ち、キャリア自律をデザインする訓練が必要。

  • エンゲージメントを高めるための投資は数値化できる?

・人的資本経営は極論、サイエンスではない。家庭環境等、様々なものが時間の変遷の中で変わっていく。価格は普遍的な真理・原則を求めるが、人的資本を扱う経営はそうはいかず、ただ無尽蔵に人材にお金を投資すればいいわけではない。

・アウトカムを意識したような人的資本(人材)への投資を、会社、あるいは社員も納得してどれだけやるか。自分の価値はどの程度で、金額的にこのくらい会社に貢献する、ということを頭の整理として考えておく必要がある。

・ねじれが発生している事象は、アウトカムを待てないこと。経営者はスピードを求めすぐに結果を求めるが、人の育成は時間がかかるため、例えばキャリア開発で3年から5年は待つ時間軸を1個持っておいてあげることも必要。

・現実に起こってるのは、有能な人材に、会社はそれなりの時間軸を持っていろんな機会を提供し、将来会社を担う人材になってほしいと思う。そうすると本人がキャリアオーナーシップ意識を持つ。しかしどうもこの会社では自己成長できないと思うと、会社を出てしまう。会社としては期待していた、ということがある。会社の期待値を視野に入れずに自分のキャリアのことばかり考えてしまうことが起こりすぎても困る。

・そこで、例えばその経営人材、将来経営になってほしい人材は、いわゆるキャリアオーナーシップとは少々違い、会社として、例えばヨーロッパ事業を経験させる、あるいは事業として三つ経験させるというときは、それなりの会社の時間軸の中での期待がある。しかし大事なことは、それを本人に伝えていないケースが多い。

大事なのは言語化する・コミュニケーションする・伝えるということ。まさにエンゲージメントにも関わる。

・今までは平等に配慮していた時代だが、これからは人々のキャリアに合った機会やポストを与えると、結果的に組織エンゲージメントに繋がりやすくなる。本人の意思も、上司の期待も、キャリアの未来を対等に考えることが大事。

・エンゲージメント=エンゲージメント調査が直観的に連想されがちである。

・しかし対話を深くするのがエンゲージメント。本質をちゃんと理解しておかないと、うまく作用しない。

・上司と部下の関係性の対応の深さもそうだし、会社の戦略やカルチャー、メンバーの理解と深さ、全ての線の数を増やし太く深くすることが大事。

・対話しながらお互いのニーズや期待値を深くしていくと、ある種のミスマッチはだいぶなくなる。

  • 人的資本経営とエンゲージメントと評価はどうひも解く!?

・欧米系のジョブ型で規定するような、次なる「ジョブ型2.0人事制度評価」を作ると仮定するなら気にすべきは二つの観点。

・1つは時間軸の観点。短期的にすぐ結果が出るものと、中長期の3年後に結果が出るようなもの。パフォーマンス結果だけでなく、継続的な中長期目線で、人的資本や組織開発するようなものを、評価の中に一定のウェイトとして置かないといけない。

・もう1つは業績評価に加え、上司側も本人のキャリア自律的な能力開発や、将来どう繋がるかを考える意識が高まっているため、上司と部下との間の納得感形成のため行動評価のウェイトに重きが増えている傾向がある。

・目標設定のときにしっかり対話し、期待を伝える場であるぐらいのトランスフォーメーションの感覚ができてくることが大事である。

・キャリア主体形成=自分のことだけやればいいのではなく、我々が人的資本経営でやらなければならないことは、企業丸ごとの競争力と、生産性を高め、日本のプレゼンスを高めること。

・今、若手のキャリア自律が強い人の中には自分さえ良ければという人もいる。組織で働く意味は何かや、組織で働くメリットは何かなど、そこをちゃんと理解する必要がある。

・自分の強みと他人の強みを掛け合わせ、チームで達成するのが仕事の醍醐味なので、ここの理解が必要だということに加え、企業としてはチームというものに対しメンバーがエンゲージすることと、メンバー同士が対等に対話する力をどれだけ強められるの仕組みが重要。

・リレーションを置き忘れたキャリアオーナーシップは果たして幸せになれるか。テレワークやハイブリッドワークになってきて若手は効率化しているが、孤独孤立化して大変という話もある。

・その辺の調和的な取り組みをどうしていけばいいかはまだ今後の課題。

  • 今後の人事の未来とは?

・経営と繋ぐ、個人とキャリアと繋ぐというところで、いままでの調整役ではなく価値共創プロデューサーという役割になっていきそうである。

・チーム編成としては、経営戦略・事業戦略を理解する人が人事部に入った方がブリッジできる。さらにキャリア開発やキャリアコンサルタントを入れた方がいい。あとは人事制度とか仕組み化をする人。その三つのタイプの人たちが融合して、経営と現場を繋ぐ構成があった方がいい。

・経営戦略から人材戦略に紐付け、そこにたどり着くために視座を上げ、事業のことを見るスタンスが大事。

・戦略人事の観点でいうと、今ChatGPTが登場したので、部門横断人事や人事異動をやってる人たちは今後採用されなくなっていく。しかし、人の生産性の評価ができる人はこれからも変わらず採用される。結果、今までのような調整型の人事は急速に発展するAIに代替される。言い方を変えれば、もう戦略人事しかなくなる未来が来る。

・AIができないような、経営戦略と人材戦略のマッチングをどうするかが大事になり、経営戦略のわかる人事部門のスタッフじゃないと人事の役割を担えない時代が来る。

  • これからの組織エンゲージメントとは

・対等に対話し、多様な質を高め、一緒になっていいものを作り出す関係に組織エンゲージメントが進化しなければならない。

・なぜこの会社で働くかを図る物差しが組織エンゲージメントなので、遠心力としてのキャリアオーナーシップと、求心力としての組織エンゲージメントの両方を、妥協せず、両方高めることが必要である。

・2030年には640万人程の人が不足すると言われる中、テクノロジーも進化しているが、労働人口は確実に減ってきている。

・これから10年、お金を払ってでもやりたいと思う仕事でないと、人を簡単に採用できなくなる時代になる。魅力的な仕事でないと、人は集まってこない。

・高いエンゲージメントを得られる仕事を作っていくことが企業の強さであり、これから5年10年経つと、経営戦略を考えるときに、うちのこのビジネスモデルだとみんなのエンゲージが上がらないからやめるべきではないか、という発想が当たり前に出てくるって時代になると予想する。

・エンゲージメント論は、組織内ではなく企業が存続するための話であり、ビジネスモデル論であり、企業の在り方の話になる。人事領域だけではない俯瞰的な考え方が重要になる。

・これからのエンゲージメントを考えるときに、何のためのエンゲージメントなのかは、「価値にこだわる」ことと同義語であり重要な要素である。

・人の潜在価値をどのようにエンゲージメントを通して伸ばせるかが大事で、人材の深化と探索なくして事業だけではできない。これからのエンゲージメントはそういう意味でも、さらに重要視される。

・我々の究極の目標の1つは、1人1人が主体的に人的資本の最大化を行い、人的資本経営でそれを応援してもらうことである。日本企業と日本社会のより良い未来を作っていくという志をもって自分たちも進化していく。

【「エンゲージメント・サミット2023」概要】

■開催⽇時:2023年7月27日(木)13:30~15:30

■開催形式:zoomウェビナー or YouTubeライブ配信

■URL:https://old.new-one.co.jp/seminar/engsummit2023/

■内容(予定):

・13:30-14:00 オープニング 株式会社NEWONE 代表取締役社長 上林 周平

・14:00-15:25 パネルディスカッション

        -人的資本情報開示の先に行うべきこととは?

          -過去の人事の役割、未来の人事の役割

        -AIが当たり前な時代におけるこれからの人事の在り方とは

          -エンゲージメントが高い組織をつくれるか、否かの本質的な分岐点とは

<登壇者>

 ・一橋大学CFO教育研究センター長/一橋大学名誉教授 伊藤 邦雄氏

 ・パーソルキャリア株式会社 執行役員 村澤 典知氏

 ・法政大学キャリアデザイン学部教授/一般社団法人プロティアン・キャリア協会代表理事 田中 研之輔氏

 ・株式会社NEWONE 代表取締役 上林 周平

株式会社NEWONE 会社概要】

「他にはない、新しい(new one)価値を生み出す」を社名に掲げ、エンゲージメントをテーマに、「個人の意識変革」と「関係性の向上」を中心とした企業向けコンサルティング、人材育成・組織開発を提供。Softbank、カゴメ、三菱地所ホームをはじめ、多数の企業様の支援を実施しています。

*2022年7月に企業経営者や人事担当者、マネジメント層と接してきた経験をもとに、これからのリーダーに必要なマネジメントのノウハウ本『人的資本の活かしかた』発売しました。
URL:https://www.amazon.co.jp/dp/477621217X

・所在地:東京都千代田区隼町2-19-4F
・設立日:2017年9月1日
・代表者:上林周平
・事業内容:コンサルティング、企業研修・組織開発等
・URL:https://new-one.co.jp/

【本件に関する企業様からのお問い合わせ先】
https://new-one.co.jp/contact/

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