南アジア「極端な高温」に見舞われる子ども、76%と世界で最も高く~ユニセフ、子どもを守る対策提示【プレスリリース】

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ユニセフの臨時学習センターの前に立つ9歳のムハマッドさん。未だに多くの地域で浸水状態が続いているパキスタンでは、今年の雨季にさらなる熱波が予想されており、多くの子どもたちが気候危機にさらされている。(パキスタン、2023年5月撮影) © UNICEF_UNユニセフの臨時学習センターの前に立つ9歳のムハマッドさん。未だに多くの地域で浸水状態が続いているパキスタンでは、今年の雨季にさらなる熱波が予想されており、多くの子どもたちが気候危機にさらされている。(パキスタン、2023年5月撮影) © UNICEF_UN

【2023年8月7日 ニューデリー(インド)/カトマンズ(ネパール)】

極端な高温にさらされている子どもの割合が世界で最も高い地域は南アジアである、とユニセフ(国連児童基金)は分析しています。

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ユニセフの推計によると、南アジアの18歳未満の子どもたちの76%にあたる4億6,000万人が、摂氏35度を超える日が年間83日以上ある「極端な高温」にさらされています。つまり南アジアでは4人に3人の子どもがすでに極端な高温にさらされていますが、世界全体ではそのような子どもの割合は3人に1人(32%)に留まっています。この分析は、入手可能な最新データである2020年のデータに基づいています。さらに、熱波にさらされる子どもの割合は、世界平均は24%であるのに対し、南アジアでは28%の子どもが年に4.5回以上熱波にさらされています。

 

7月の世界の平均気温は観測史上最高を記録しており、気候変動を主な原因として、南アジアをはじめ世界中の子どもたちがより頻繁で過酷な熱波に直面すると予想される将来について、さらなる懸念が高まっています。

 

ホースト州の村に流れている川に、祖父母と一緒にロバを連れて水を汲みに行く6歳のヌーバラさん。夏は炎天下になる中、毎日2時間かけて水を汲みに行っている。(アフガニスタン、2023年6月撮影) © UNICEF_UNI399211_Bidelホースト州の村に流れている川に、祖父母と一緒にロバを連れて水を汲みに行く6歳のヌーバラさん。夏は炎天下になる中、毎日2時間かけて水を汲みに行っている。(アフガニスタン、2023年6月撮影) © UNICEF_UNI399211_Bidel

ユニセフ南アジア地域事務所代表のサンジャイ・ウィジェセケラは、「地球沸騰化にある中、このデータは、南アジア全域の何百万人もの子どもたちの生活とウェルビーイングが、熱波と高温によってますます脅かされていることを明確に示しています。この地域の国々は、今世界で最も暑いわけではありませんが、この高温は何百万人もの弱い立場にある子どもに、生命を脅かすリスクをもたらしています。特に、熱射病など深刻な状態に最も陥りやすい乳幼児や栄養不良の子どもたち、妊娠中の女性について憂慮されます」と述べています。

 

ユニセフの2021年版「子どもの気候危機指数(CCRI)」によると、アフガニスタン、バングラデシュ、インド、モルディブ、パキスタンの子どもたちは、気候変動の影響の「極めて高いリスク」を受けています。

 

2022年に世界で最も暑い都市であったジャコババードを含むパキスタン南部シンド州の一部では、今年6月の気温が40度を超え、180万人が短期的かつ長期的に深刻な健康リスクにさらされました。2022年8月にシンド州南部の大部分を水没させた壊滅的な洪水から1年も経たないうちにこの猛暑が襲ったのです。 洪水の被害を受けた地域で暮らす80万人以上の子どもが、2023年6月には過酷な熱ストレスの危険にさらされました。

 

ヒマラヤ山脈の北部にある、ザンスカール渓谷の川の氷河が解けている様子。世界では、4億人が山の氷河の水を頼りにしているが、ヒマラヤ山脈の一部は干上がってしまっている。(インド、2022年3月撮影) © UNICEF_UN0619443_Kolariヒマラヤ山脈の北部にある、ザンスカール渓谷の川の氷河が解けている様子。世界では、4億人が山の氷河の水を頼りにしているが、ヒマラヤ山脈の一部は干上がってしまっている。(インド、2022年3月撮影) © UNICEF_UN0619443_Kolari

雨季であっても、高温は子どもたちの健康状態を悪化させます。子どもは気温の変化に素早く適応できず、体内の余分な熱を出すことができません。そのため特に、幼い子どもでは体温の上昇、心拍数の増加、けいれん、激しい頭痛、錯乱、臓器不全、脱水、失神、昏睡などの症状や疾患を、乳児では精神発達の遅れを引き起こし、その他、神経機能不全、心血管疾患などの発達の遅れも起こります。また暑さに特に弱い妊婦にとっては、早産、高血圧、発作、早産、死産などのリスクがあります。

 

幼い子どもには、氷のう、扇風機、霧吹きなどで体温を下げることが有効で、年長の子どもは冷水につかることで体温を下げることができます。

 

この危機に対応するには、教育、認知、備えが鍵となります。ユニセフは、高温の時期には、現場の最前線で業務にあたる人々、親、家族、養育者、地元当局に対し、子どもたちを守り、”B.E.A.T. the heat(暑さをしのぐ)”の頭文字に沿って以下のような対策を講じるよう呼びかけます。

  • BE AWARE(知っておく):熱ストレスに注意し、自分自身と子どもを守る。予防策を講じ、熱ストレスを認識し、取るべき行動を知っておく。

  • EASILY IDENTIFY(簡単に見分ける):症状を簡単に見分けられるようにする。養育者や地域社会、最前線で対応する人々が知っておくべき、高温に関連するさまざまな疾患の症状を認識する。

  • ACT IMMEDIATELY(即座に行動する):子どもたちを守るために、即座に行動できるようにする。養育者や現場で業務にあたる人々が、短時間で体温のバランスを取り戻すために取るべき応急処置を学ぶ。

  • TAKE(連れていく):保健医療施設に連れていく。最前線で対応する人々、家族、養育者は、熱ストレスによる症状、特に熱射病の兆候を直ぐに見分け、罹患者を保健医療施設に連れて行くよう取り計らわなければならない。

 

結局のところ、異常気象による最も大きな犠牲を負うのは、最も弱い立場にある子ども、若者そして女性です。

 

「幼い子どもたちは暑さに対処することができません。私たちが今行動しない限り、幼い子たちは、自分たちのせいで起きている気候危機ではないにもかかわらず、今後何年間、より頻繁に、より過酷な熱波の矢面に立たされ続けるでしょう」とウィジェセケラ代表は述べています。

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■ 地域別推計は、利用可能な最新データである2020年のデータの分析に基づいています。

用語の定義

  • 熱波(Heatwave):3日以上の期間、各日の最高気温が現地の15日平均気温の上位10%に入ること。

  • 高頻度で発生する熱波(High heatwave frequency):熱波が1年平均4.5回以上発生すること。

  • 過酷な熱波(High heatwave severity):熱波の平均温度が地域の15日平均気温より摂氏2度以上高いこと。

  • 極端な高温(Extreme high temperatures):摂氏35度を超える日が年平均83.54日以上あること。

■ 気候変動に関するこれまでの配信はこちらからご覧いただけます。

https://www.unicef.or.jp/children/children_now/select.html?tag=climate 

■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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