しかし、世界では今も5人に1人が適切なトイレが利用できない生活をしています。また、世界の3分の1近くの学校には男女別の清潔なトイレがなく、女の子たちは月経期間中、学校を休むほかないこともあります。実際、南アジアでは3人に1人の女の子が月経期間中、学校に行けず、教育の機会を失することで、将来自分が希望する職に就けなかったり、貧困の輪から抜け出せなくなってしまったりします。
世界中の労働者の39.5%は女性であり、月経の問題は多くの女性たちにとって悩みの種ですが、職場における女性の健康と月経は見落とされがちです。アパレル業界で働く女性の80%が衣料品の生産に従事していますが、利益優先型の工場では、女性が安心して持ち場を離れてトイレを利用できるような職場環境が整っていないことが多くあります。このような職場では、スタッフの入れ替わりも激しいため、月経衛生と健康を促進するセッションを定期的かつ頻繁に行う必要があります。女性が労働者の多くを占める農業でも、農園や畑が広大であったり、農園の場所が地形的に険しいところにあったりするため、トイレや衛生設備の利用には困難が伴います。
インド西ベンガル州ダージリン県にあるナグリファーム茶園の管理者ジャルさんは、女性が長時間、生理用品の交換ができないことで発疹に悩まされることが多いと言います。
「茶園で働く女性労働者が直面する最もよくある問題のひとつは、月経期間中の不快感です。私も13年間、茶摘み職人として働いていた経験があるので、身にしみてわかります。発疹がひどかったり、月経痛に耐えられなかったりして、女性が休憩後に仕事に戻れる状態ではないこともあります」
ウォーターエイドは、英国トワイニング社の「Sourced with Care(配慮を伴う調達)」プログラムの支援を受けて、茶園で働く人たちに月経衛生セッションを実施し、職場での月経衛生管理に関するアドバイスやサポート、環境にやさしく、かつ肌触りがよく快適な選択肢として、布製ナプキンの使用に関するアドバイスなどを始めました。このトレーニングは、水、トイレ、衛生習慣に関する他の取り組みと並行して実施され、月経による発疹やかゆみの事例が減少しました。
リベリアのジュディ・ジンザー記念学校の校長のオーガスタさん(57歳)は、職場で月経衛生管理が難しいことを身をもって経験し、この状況を変えようと決意しました。
「私は校長としての役割を果たすべく、学校内の月経にまつわるタブーを払拭しました。男性教師にも協力してもらって、月経衛生に関する意識向上の授業を始めました。保護者の意識を高めるためにも保護者会にも呼びかけを行いました」
5月28日の月経衛生の日を前に、ウォーターエイドは月経衛生を含む女性の健康への取り組みがジェンダー平等のためにも不可欠であると各国政府や企業に認識されるよう呼びかけています。月経衛生への意識が高まり、取り組みが進めば、職場、学校、家庭の場、どんな場面にあっても、月経のために女性たちの可能性や夢が制限されることはなくなります。
ウォーターエイドの南アジア地域プログラムマネージャーであるテレス・マホンは、次のように述べています。
「月経にまつわる偏見をなくし、オープンに話し合うべき時です。ウォーターエイドは、政府に対して、女性や女の子たちが適切なトイレや清潔な水の利用を確保できるように、また月経保健衛生に関する情報を提供し、衛生的かつ尊厳をもって月経中を過ごすことができるような支援を提供するよう求めています。企業も積極的に取り組む必要があります。職場環境を見直し、月経中の女性のニーズが満たされるように変えていくべきです。これによって従業員の健康、ウェルビーイング、仕事の満足度を向上させるだけでなく、欠勤を減らし、生産性を向上させるという、ビジネス上のメリットがあります」
ウォーターエイドは、月経保健衛生に関する情報、適切なトイレ、安全で手頃な価格の生理用品を人々が確実に得られるように、活動国において学校や職場、コミュニティで活動を続けています。この活動には、再利用可能な材料を使った生理用品の作り方、生理用品の安全な使用方法を伝えることも含まれています。
また、昨年発表したグローバル戦略においても、月経を取り巻く偏見をなくすために国際的なキャンペーンを行うことを掲げ、これを通して政府の方針、支援事業、その関連予算に月経保健衛生が組み込まれるように働きかけていきます。
ウォーターエイド グローバル戦略:https://www.wateraid.org/jp/publications/global-strategy-2022-2032-japanese