コスモエネルギーホールディングス株式会社に対する株主提案について

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詳細は弊社ウェブサイト(http://ci11.bz/)をご覧ください。

弊社は、コスモエネルギーホールディングス株式会社(以下「コスモ社」といいます。)の株式を共同保有者分と合わせて議決権で約20%所有する大株主です。

弊社は、4月19日、コスモ社に対し、本年6月開催予定の第8回定時株主総会で審議されるものとして社外取締役1名の選任議案について株主提案を行いました。

本株主提案は「再生可能エネルギー事業子会社の上場について真摯に議論を行い、その結果を公表すべきである」という考えに基づくものであり、「再生可能エネルギー事業子会社を今すぐに上場させなければならない」と主張するものでも、これを強いようとするものでもありません。もちろん弊社としては再生可能エネルギー事業子会社の上場が株主価値向上に資すると確信していることについては先般公表した通りです。弊社は「コスモ社の企業価値・株主価値向上に最も資する選択は何か」という観点から取締役会で真摯に議論が行われるようになることを目指しています。

一方、過去のコスモ社の対応を見ると、コスモ社経営陣は、株主価値向上については重きを置いていないように思われます。コスモ社は、弊社が株主になるまでは、業界他社が在庫影響除き総還元性向50%をコミットする中、在庫影響除き総還元性向が10%にも満たない大変消極的な株主還元にとどまっていました。また、コスモ社は昨年、弊社が全部買い入れを提案していた転換社債についても、320億円の転換を行い、結果としてPBR 1倍割れでの増資を招いてしまいました。そして、コスモ社取締役会は、再生可能エネルギー事業子会社のスピンオフや上場について真摯な議論を行っていません。同業のENEOSホールディングス株式会社が5月11日に完全子会社であるJX金属株式会社の上場準備の開始を公表し、コングロマリットディスカウントの解消に積極的取り組んでいることと対照的です。

再生可能エネルギー事業については、今後3カ年で1,400億円、8カ年で4,000億円にも及ぶ投資計画であるにもかかわらず、リターンの目線や投資基準、採算基準についても開示がありません。昨年、注力していた秋田県由利本荘市沖の洋上風力案件を失注したことの振り返りや市場変化についての対応策などの説明はないまま、過大な投資計画を掲げており、コスモ社が計画するほどの利益が生み出される投資が実現するのかは懐疑的です。また投資が実現しなかった場合の対応についても、開示がありません。

弊社は、このような状況下、弊社が提案する社外取締役が選任されることで、コスモ社におけるガバナンスが強化され、コスモ社がPBR 1倍以上の株価を実現するため、取締役会で真摯に議論が行われるようになることを目指しています。

なお、4月21日に弊社が公表した「コスモエネルギーホールディングス株式会社に対する株主提案について」に対して株主の皆様から頂いたご質問も踏まえ、後段のとおり、コスモ社に対する弊社の考え方をまとめましたので、ご覧いただけると幸いです。

コスモ社に対する弊社の考え方

1. 株主に対するコスモ社の姿勢

総還元性向や転換社債の件など株主価値向上についてのコスモ社のこれまでの対応を見ますと、株主と正面から向き合って対話・説明を行って理解を得ようする姿勢そのものが不十分であると感じております。

直近の具体例は、第7次中計における必要自己資本の説明です。前中期経営計画で4,000億円を目指すとしていたものが、一挙に1.5倍である6,000億円に引き上げられました(1)が、この変化について株主にとって十分な説明がなされていません(2)。

(1) 前中計と第7次中計の目標値は、自己資本が4,000→6,000億円(+50%)とされる一方で、利益目標は経常利益が1,200→1,650億円(+37.5%)、純利益が500→600億円(+20%)に留まる。すなわちROEが悪化する目標設定となっている。

(2) コスモ社からは「資産に内在するリスクを類似企業比較で算定した」という極めて抽象的な説明のみ。セグメント毎の数値や個別具体的な説明は一切なし。QAでは「他(石油精製以外)のセグメントについても当社が考えていた以上にリスクがある。定量的にお示しすることは難しいが、特に石油開発と再生可能エネルギー」と回答(この点、QAの別箇所では「洋上風力については資本的に大きなリスクがあるわけではない」とも回答しているので理解困難でもある。)。

2. 再生可能エネルギー事業への投資計画

再生可能エネルギー事業への投資計画についても、コスモ社は株主に正面から向き合って対話・説明を行って理解を得ようする姿勢が欠如しています。第7次中期経営計画では、初出の需給調整・蓄電ビジネス等これまでの内容と大きく異なる投資・利益計画が何ら具体的な説明なく示されています(3)が、従前の計画・方針に固執するあまり適正なリターンを生む蓋然性のない投資が漫然と進められるのではないかと危惧されます。調整・蓄電については「2023年度から実証」とされていますが、実証期間、結果の見極め方法、投資計画の変更可能性、変更される場合の余剰資金の行方、利益計画の変更可能性、等については何ら言及がありません。

また、直近は、洋上風力発電の熾烈な受注競争により、利益率が急激に低下しているほか、失注の可能性も高まっています。コスモ社が計画している通りの投資が実現しない場合には、そのキャッシュフローを何に活用するのかについても、具体的な開示を行うべきです。

こうした観点からも、取締役会におけるガバナンス強化が必要であると考えます。

(3) 前中計では「2030年に発電能力100万kW・経常利益200億円」だったものが、第7次中計では同年の経常利益が「発電150億円+調整50億円+小売100億円+モビリティ50億円」となり、同年までの8年で蓄電に1,500億円が投資されるものとされた。注力していた秋田県由利本荘市沖の洋上風力案件を失注したことの振り返りや市場変化についての対応策などの説明はなされていない。調整・蓄電についても、調整力の種類、蓄電容量や容量単価などの具体説明はない。

3. 再生可能エネルギー事業子会社のスピンオフや上場についての考え方

コスモ社は、再生可能エネルギー事業子会社のスピンオフや上場に関連して、事業の成長やそのための資本市場の存在意義を誤認しているようにも感じられます。

コスモ社は「莫大な投資が発生するわけではない」ことをスピンオフを行わない理由の一つに挙げていますが、“本業で蓄積できた資本や現有リソース等の制約条件の下で応札を進め、落札できなかった洋上風力案件の逸失利益は蓄電池等の次善策で埋め合わせ、辻褄を合わせればよい”という思考回路ではなく、“事業の成長や洋上風力案件獲得のために必要であるならば莫大な投資が発生してもよく、そのために他人資本や資本市場を活用すればよい”というのが健全な考え方ではないでしょうか。

弊社は、現状のコスモエコパワー株式会社(再生可能エネルギー事業子会社)には競争力・成長性があり、一層の飛躍のためには他人資本の活用・上場が有効であること、またスピンオフであればこれまで資本を振り向けた分の果実を既存株主が享受できること、今のタイミングであれば20%未満だがコスモ社も果実を得られること、をコスモ社経営陣に説明してきましたが、十分に理解いただいているか甚だ疑問に感じます。

4. 石油事業の今後

石油事業(開発・精製・化学)についても、取締役会において適切な議論がなされているか疑問に感じております。国内の石油精製品需要は2050年には現状の半分以下に減少すると見られています(4)。製油所の統廃合については、近隣主要納入先や同業他社(5)との協議、跡地の利用方法決定、地元の理解浸透など、相当の時間が必要なテーマであり、再生可能エネルギー事業子会社のスピンオフがあろうとなかろうと既に着手は待ったなしの状況にあります。にもかかわらず、コスモ社山田社長は4月27日会見において「今後10年間は現状の体制を維持する」と発言しており、株主を含むステークホルダーの不安は煽られる一方となっています。

(4) 資源エネルギー庁の2050年には500~600千B/D(現状の20%以下)となるシナリオを参照。出光興産株式会社(以下「出光興産社」という。)では2022/11/16発表の中計において「2030年に2割減」を、ENEOSホールディングス株式会社(以下「ENEOS社」という。)では2023/5/11発表の中計で化石事業の投下資本を2040年度にかけておおよそ半減させることを、それぞれ前提として計画を策定している。

(5) コスモ社の千葉製油所・堺製油所には近隣にENEOS社の製油所が、四日市製油所には近隣に出光興産社の製油所が存在する。

5. 本来議論され開示されるべき内容

現在のコスモ社株価は、再生可能エネルギー事業の価値について正当に反映されていないのはこれまで申し上げてきた通りですが、石油事業についても過剰なディスカウントが働いていると考えています。その原因は、今後生じるであろう製油所統廃合コストについて、市場が不安視しているからです。従って、今後の石油事業の在り方や製油所統廃合シナリオを策定し、コストやリスクも算定した上で、株主にも理解や試算ができるよう開示することで、不安感が払拭され、バリュエーションはより向上するものと考えます。

6. 株式に転換された320億円の転換社債に対する対応

2022年12月満期ユーロ円CB600億円のうち株式へ転換された320億円分については、PBR 1倍割れでの増資を招いてしまいました。コスモ社は、原油価格の高騰により、過去に例を見ない利益を達成しており、このような状況下、PBR 1倍割れでの増資は、全く必要がなく、一株当たり株式価値の希薄化を招くものでした。弊社は、株式に転換されてしまった320億円を原資として、原油価格の下落によって一時的に低迷しているコスモ株式について、速やかに自己株式取得を実施することを求めます。

7. 社外取締役1名の選任議案

コスモ社においては、現状の石油精製業界構造の中で他発的に生じた有利な状況(稼働率やマージン)と、それによって蓄積できた資本、また25年にわたって育成した再エネ事業を守ろうとする前提思想が強くあるがゆえ、株主を見た施策や説明がなされない傾向が根強いと感じます。取締役会による会社の私物化とまでは申しませんが、少なくともブラックボックス化が進行していると見ています。

弊社は今回、特に再エネ事業子会社の上場についての議論を取締役会で真摯に行い、公表することを公約とする社外取締役1名の選任議案を提案しておりますが、株主の目線を理解しながら公平・不偏の議論ができる取締役の参画により、結果としてコスモ社取締役会の議論の視座や透明性がより開かれたものになると考えます。

取締役全員交代や過半数取得、何らかの施策の強行を企図したものではなく、全ステークホルダーにとってメリットがあり、かつ、デメリットのない提案であると自負しております。

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