当法人は、4月1日を夢を発信する日にしようとするApril Dreamに賛同しています。このプレスリリースは一般社団法人アニマル・リテラシー総研の夢です。
動物虐待は、動物愛護の観点から決して許されない行為ですが、その他の犯罪や反社会的行動、そして家庭内暴力などが動物虐待と連動して発生するリスクが高いことが様々な調査研究において示されており、欧米では「動物問題」の枠を超え、人間の生活の安心・安全にもかかわる重要な社会的課題として注目されています。海外では動物虐待と対人暴力が連動しているという知識を社会福祉などのヒューマンサービス関係者や動物保護関係者が活かし、対人暴力と動物虐待双方を予防・早期発見し、人間と動物両方に支援の手を差し伸べることができるような取り組みを展開させています。日本においても、暴力の被害にあっている人と動物双方に包括的な支援を届ける取り組みに貢献できるよう、より実践に即した「LINK」の情報提供サービスに力を入れてまいります。
- 動物虐待と対人暴力の連動性「LINK」とは?
「動物虐待は凶悪犯罪の予兆」という主張は誰しもが耳にしたことがあるのではないでしょうか。実際、動物虐待はその他の様々な犯罪や反社会的行動、そして子ども虐待やドメスティック・バイオレンスなどの家庭内暴力と連動して発生するリスクが高いということが近年多くの調査研究により示されています。英語では、この動物虐待と対人暴力の連動性は「つながり」という単語を用いて、「LINK」と呼ばれています。
「LINK」については様々な調査研究が実施されており、科学的根拠が示されています。これまでの「LINK」の調査研究において、動物虐待は殺人などの凶悪犯罪はもちろん、薬物乱用や器物損壊などの反社会的行動(※)1、そして子ども虐待、ドメスティック・バイオレンス(DV)(※)2や高齢者虐待(※)3などの家庭内暴力などと関係していることが指摘されています。さらには、いじめ(※)4や体罰(※)5などと動物虐待の関係性について示唆する研究も発表されています。
「LINK」は現在海外で注目されている概念ですが、周囲を見渡すと、日本においても凶悪犯が過去に動物虐待を繰り返していたという事件は複数報道されています。(※)6この動物虐待と対人暴力がつながっているという知見は、海外では人と動物両方を守る実践的な取り組みに活かされているのです。
- 「LINK」の知識が人と動物両方にやさしい実践においてどのように活かされているか
それでは、LINKは具体的にどのような取り組みに応用されているのでしょうか。海外では、動物保護団体などの関係者が、LINKについて一般社会を啓発するようなキャンペーンが数多く展開されています。一般市民に動物虐待とその他の犯罪や様々な家庭内暴力が連動していることを知ってもらうことにより、一方の課題に関心のある人々にもう一方の課題についても関心を持ってもらえるようになります。また、社会全体に動物虐待と対人暴力のつながりについて知ってもらうことにより、両方の暴力の形態に対して目を配る人間が増えることも予想されます。社会の関心や見守りの目を増やすことにより、両方の暴力の形態の予防や早期発見を目指すことができるのです。
また、海外では、動物虐待と様々な家庭内暴力が同じ家庭で発生しているリスクが高いという知見に基づき、動物保護当局と社会福祉当局が協働体制を敷いたり、情報共有ができるような取り決めをするケースも増えてきています。例えば、北米では、動物保護当局が動物虐待の疑いがある家庭を訪問した際に、不自然な怪我をした子どもを発見した場合、子ども虐待を管轄する社会福祉当局にケースの情報共有ができ、逆に社会福祉当局が子ども虐待の疑いがある家庭を訪問した時にペットの虐待を疑った際に、同様に動物保護当局にケースを通報できるような情報共有・相互通報体制を敷いている地域も出てきています。このような体制を築くことにより、それぞれの暴力を従来管轄する当局に発見されにくいようなケースの早期発見が可能となり、また人間も動物もいち早く適切な専門性をもった支援につなげやすくなります。
さらに、特にDVなどの家庭内暴力においては、ペットにも危害が加わることを恐れ、自分一人で暴力的な家庭から避難することをためらう被害者が多く、ペットと共に暮らしている被害者においていわゆる「逃げ遅れ」が発生しやすいという課題も様々な調査により浮き彫りにされています。(※)2このような実態を受けて、海外では暴力の被害者がペット同伴で避難できるような仕組みづくりや、被害者とそのペット両方を守ることができる法令の制定が進められています。
- より実践に即した「LINK」の情報提供に向けた、当法人の取り組み
日本では、LINKの知見を活かした実践の取り組みはほとんど展開されていませんが、上記の海外の取り組み例のように、LINKを実践に応用することにより、人間と動物双方にとって、より安心・安全に暮らせる社会の実現に貢献することができます。
これまでに当法人はLINKに関する科学的根拠を含めた基礎的な情報提供サービスにつとめており、LINKに関する【動物虐待と対人暴力の連動性を探るオンライン講座シリーズ】(※)7の開催や、LINKの学術的知見をまとめた電子資料(PDF)「動物虐待と対人暴力の連動性~動物に対する暴力と人に対する暴力の表裏一体の関係性を探る~」(※)8の販売などに取り組んできました。しかし、実践現場で具体的にどのようにしてLINKの知識を活用するかに特化した情報はこれまでにあまり提供する機会がありませんでした。LINKに関する基礎知識を提供するサービスをある程度展開してきた今、日本においてもLINKの知識を実践現場で活かしたいという関係者に向けて、その具体的な方法に関する情報提供サービスを開始いたします。その第一歩として、今年度、子どもの見守りにおけるLINKの知識の活かし方を提案した電子資料と、動物虐待への対応にLINKを活かす情報をお届けするための電子資料を販売予定です。これらの電子資料を皮切りに、一般社団法人アニマル・リテラシー総研は、今後はLINKの学術的知識と共に、それを実践にどのように活かすかに関する提案にも積極的に取り組んでまいります。
「April Dream」は、4月1日に企業がやがて叶えたい夢を発信する、PR TIMESによるプロジェクトです。私たちはこの夢の実現を本気で目指しています。
- 注釈
(※)1 Arluke, A., Levin, J., Luke, C., & Ascione, F.R. (1999). The relationship of animal abuse to violence and other forms of antisocial behavior. Journal of Interpersonal Violence, 14, 963-975.
(※)2 Monsalve, S., Ferreira, F. & Garcia, R. (2017). The connection between animal abuse and interpersonal violence: A review from the veterinary perspective. Research in Veterinary Science, 114, 18-26.
(※)3 Lockwood, R. (2002). Making the connection between animal cruelty and neglect of vulnerable adults. The Latham Letter, Winter 2002, 10-11.
(※)4 Henry, B.C. & Sanders, C.E. (2007). Bullying and animal abuse: Is there a connection? Society and Animals, 15, 107-126.
(※)5 Flynn, C.P. (1999). Exploring the link between corporal punishment and children’s cruelty to animals. Journal of Marriage and the Family, 6, 971-991.
(※)6 http://healthpress.jp/2016/09/post-2581.html
(※)7 当該オンラインセミナーシリーズに関してはこちらをご覧ください: https://www.alri.jp/?mode=f87#title3
(※)8 当該電子資料に関しては、こちらをご覧ください: https://www.alri.jp/?pid=141175497
- 法人概要
一般社団法人アニマル・リテラシー総研は、動物福祉や人と動物との関係学など、動物とのかかわりにおけるアニマル・リテラシー、すなわち一般教養の向上を目的とした情報提供及びコンサルティングサービスを行う法人です。~動物とのかかわりに教養と専門性を~
法人名: 一般社団法人アニマル・リテラシー総研 (http://www.alri.jp)
代表者: 代表理事 山﨑恵子