脱炭素社会に適合する新たな防災ソリューション/新製品「停電時マンホールポンプ起動支援システム」を4月1日より発売

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荏原実業株式会社(東京都中央区/代表取締役社長執行役員兼COO:吉田 俊範)は、災害停電により電源を喪失したマンホールポンプを、電動車両(EV/PHEV)・蓄電池で応急的に起動する新製品「停電時マンホールポンプ起動支援システム」の販売を、2023年4月1日より開始します。
(特許第7047160号、第7138258号 取得済)

◆ 災害停電が原因で発生する溢水被害
 家庭や事業所から排出された、または降水等により発生した「下水」は、地下に張り巡らされた下水管を通じて処理場や河川へと運ばれます。水は管の中を、高い場所から低い場所へと自然に流れていくように造られていますが、長大な下水管網の末端(処理場など)まで下水を送り届けるには、その随所で人為的に水位を押し揚げ、水を送り出す必要があります。その役割を担うのがマンホールの中に設置されている「マンホールポンプ」です。
 マンホールポンプは通常、送電網から電気の供給を受けて動作していますが、停電によって電源を喪失すると、そのポンプは送水を行うことができなくなります。災害などの要因で停電が長時間にわたる場合、マンホールから下水が溢れる現象(溢水)が発生することがあり、周辺地域の浸水など、大きな被害を与える原因となります。特に各所から下水が集まる流量の多いマンホールは、停電時に溢水が発生する可能性が高くなります。

 下水道の維持・管理を担う全国の自治体の多くは、災害発生時の対応について「BCP(事業継続計画)」を定めています。国土交通省「下水道BCP策定マニュアル2019年版」では、停電時に溢水の可能性のあるマンホールへの対策として、可搬型「発電機」によるマンホールポンプの起動や、「バキューム車」による汲み取り・搬出を実行し、電源復旧までの時間を稼ぐ対応が示唆されています。しかし、発電機を使用した給電には専門資格を持った技術者の立ち合いが必要となる場合があることに加え、特に広範囲な地域で災害が発生している状況においては、レンタルなどによる調達が可能な発電機の台数に限りがあることなど複数の課題が存在しており、「防災」の観点で最適化された復旧手段が求められていました。

◆ 「停電時マンホールポンプ起動支援システム」とは
 今回、当社が発売する「停電時マンホールポンプ起動支援システム」は、発電機ではなく、電動車両(EV/PHEV)や可搬型蓄電池から給電することでポンプを応急起動しマンホールの溢水を防ぐ、都市の防災機能を強化する新製品です。蓄電池から給電する方式は、調達可能な発電機の数に縛られることがなく、また、専門資格を持つ技術者の立ち合いが不要になる上、十分な数の電動車両や蓄電池を確保することにより、異なる地点にある複数のポンプを並行して起動することができます。発電機のように停電中の連続運転の必要がなく騒音や温室効果ガスの排出がほとんどない点、ガソリンや軽油等の燃料確保の必要がなく災害発生時に迅速な対応が可能となる点も新製品の特長です。また、動力源である電動車両や可搬型蓄電池は、平時には通常業務での活用が可能です。
 本システムの開発は、従来方式の課題解決を目指して実施した、公益財団法人日本下水道新技術機構、三菱自動車工業株式会社、株式会社三水コンサルタント、および荏原実業株式会社の4者による共同研究の成果によるものです。
 当社は、本システムの市場での展開を2023年4月1日より開始します。

 本システムは、迅速で省力的な防災対応により、自治体の”災害に強い街づくり”を可能とすると同時に、化石燃料の消費量を削減することで、全世界的な課題である「カーボンニュートラル」の実現にも寄与することができる、サステナブルな社会の形成に資するソリューションです。
 荏原実業株式会社は今後も、水処理の分野で培った技術を基に、レジリエントな社会インフラの構築に貢献していきます。
 

「停電時マンホールポンプ起動支援システム」の構成・メリット

【システムの構成要素】
✓ 電源 : 電動車両(EV/PHEV)および、200V給電が可能な可搬型蓄電池
✓ 制御盤

【本システム導入によるメリット】
① 迅速、かつ省力的な災害対応を実現
 可搬型蓄電池、および電動車両そのものを電源とすることで、発電機や燃料の調達に時間をかけることなく、停電発生時の初動対応を迅速に開始することができます。また、調達可能な発電機の数や専門資格を持つ技術者の人数に縛られることなく、少数のチームで複数のポンプを同時に起動することが可能になります。

② 現場での作業の課題(狭隘地、騒音)を解決
 発電機を荷台に乗せて運搬する車両は大型で、マンホールポンプが設置されることが多い狭隘地では、駐車して長時間の作業を行うことが難しいという課題があります。また、発電機やバキューム車が発する騒音も、周辺住民への配慮という観点では無視できない作業上の課題です。
 一般乗用車サイズの電動車両や可搬型の蓄電池であれば、狭隘地への進入や設置が容易で、電源由来の騒音もありません。

③ 「脱炭素」への貢献
 2050年のカーボンニュートラル実現へ向けて、「脱炭素」が喫緊の課題となっています。社会が化石燃料から「電気」へシフトする中で、電動車両や蓄電池の導入は、あらゆる事業者にとって有力な選択肢です。
 本システムを構成する電源は、電動車両はもとより、可搬型蓄電池もまた汎用性が高く活用の機会が多くあります。AC100V、200Vいずれも出力可能なため、例えば、平時の点検作業や災害時の予備電源として活用が見込まれます。

◆ 荏原実業株式会社の概要

本社:東京都中央区銀座七丁目14番1号

代表者:吉田 俊範
TEL:03-5565-2881
URL:https://www.ejk.co.jp
事業内容:環境関連機器の製造販売および上下水道施設等のエンジニアリングサービス

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