「科学が照らすものは、この世界に降りそそぐ美しい奇跡なのだ」
空想よりも現実の世界のほうがずっと不思議だ、と感じるような、理論物理学者とっておきの20話。
「読書とは自らの心の凍土をうち砕いて、奥底に眠る異世界を探究し魂に自由を取り戻す旅に他ならない」(著者まえがきより)
1つずつ独立した小さなお話なので、1話わずか10~20分ほどで読むことができます。
はるか遠くに広がる別の宇宙、ふしぎな量子力学、社会や歴史を語りだす数式、ヒマラヤを越えるアネハヅルたちと人が起こす小さな奇跡など――
科学が見せてくれる、さまざまな別世界へ、短い旅に出てみませんか?
本書の刊行を記念して、3月22日(水)19:00~ 高野秀行さんと全卓樹教授の対談トークイベントを行います。
お相手となる高野秀行さんは、コロナ禍のなか、『銀河の片隅で科学夜話』を繰り返し読み、全卓樹教授の理系と文系を統合するような見方や考え方から刺激を受けた、といいます。 好奇心に満ちたお二人と、現実世界という「未知なる世界」を旅する、そんな一夜になります。 ▼イベント申し込みはこちら |
- 著者の全卓樹教授からみなさんへ
大学で研究室の学生たちに接して気づいたことの一つが、彼らの多くが「科学の魅惑」に無感応に見えることでした。
科学の成果を日々使っている工学部生にしてこれ、他は推して知るべしと疑っていたところ、経済学部生も含めた初年度学生に物理学入門を教える機会が巡ってきました。
わかったのは、多くの学生たちにとって、扱われている題材が疎遠にして無縁に感じられている残念な事実です。
誰しもが子供の頃持っていた筈の、世界や社会に対する素朴で鮮烈な好奇心の直接の延長こそがサイエンスに他ならない。
この事実を理屈ではなく感性で納得してもらえないものか、それを探求して15年ほど、ある程度型になった講義への学生たちの評判もまずまずになった頃、朝日出版社編集部の大槻美和さんからコンタクトを受けました。
通常の科学啓蒙書とは一味違った科学の本を書かないかという趣旨でした。
そんな事情から出来上がった、科学の現場の興奮と愉しみを幅広い読者に伝ようと綴った掌編集です。
皆様の徒然の折のお楽しみになりましたら幸いです。
- 目次
天体
第一夜 アステカの陰陽神
第二夜 フォンターナと金星の月
第三夜 土星の環から霧雨が降る
第四夜 ブラックホールの旅
第五夜 革命家のマルチバース
極致
第六夜 シミュレーション仮説と無限連鎖世界
第七夜 デーモンコアと科学の原罪
第八夜 天然原子炉とクロダ博士の秘密
第九夜 ローラン展開の世界史
第十夜 同一者の識別と噴出
街
第十一夜 帝国興亡方程式
第十二夜 オマル・ハイヤームの墓
第十三夜 多数決と冷笑家
第十四夜 インターネット世論の社会物理学
第十五夜 位階と不整と文化系統
生命
第十六夜 石に刻まれた銀杏
第十七夜 赤い砂漠の妖精の輪
第十八夜 バックランド司祭と聖蹟
第十九夜 メンデルと剽窃とフィッシャー統計学
第二十夜 インドの鶴の神秘
- 著者について
全卓樹(ぜん・たくじゅ)
京都生まれの東京育ち、米国ワシントンが第三の故郷。東京大学理学部物理学科卒、東京大学理学系大学院物理学専攻博士課程修了、博士論文は原子核反応の微視的理論についての研究。専攻は量子力学、数理物理学、社会物理学。量子グラフ理論本舗/新奇量子ホロノミ理論本家。ミシガン州立大、ジョージア大、メリランド大、法政大等を経て、現在高知工科大学理論物理学教授、高知工科大学図書館長。著書に『エキゾティックな量子――不可思議だけど意外に近しい量子のお話』(東京大学出版会)などがある。
- 書誌情報
『渡り鳥たちが語る科学夜話
不在の月とブラックホール、魔物の心臓から最初の詩までの物語』
◎ISBN:978-4-25501324-4
◎Cコード:0095
◎判型:四六判変型 /並製
◎ページ数:192
◎定価:本体1,600円+税
◎URL:https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255013244/
◎刊行:2023年2月14日発売
- 【科学夜話】シリーズ 好評既刊
『銀河の片隅で科学夜話
物理学者が語る、すばらしく不思議で美しいこの世界の小さな驚異』
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255011677/