報告書『Out of Libya』(英文)はこちらから
https://www.msf.or.jp/publication/pressreport/pdf/Rapport_Out_Of_Libya-FINAL-web.pdf
- 安全な国は移民の保護を
MSFオペレーション・マネジャーのクラウディア・ロデサニは、「リビア国内の大半の移民は、理不尽な拘束・拷問と、性暴力を含む暴力の被害に遭っています。身体的・法的な保護を受けられる可能性はごくわずかで、欧州を目指して地中海を渡るという決死のルートが唯一の脱出方法となることが多いのです。欧州連合(EU)諸国のような安全な国は、何年にもわたりリビア沿岸警備隊に資金を提供し、移民の強制送還を後押ししていますが、暴力被害者の安全な退避を促し、自国の領土で保護する義務があるのではないでしょうか」と指摘する。
MSFの報告書『Out of Libya』では、リビアを脱出できない人びとを保護するための既存の仕組みの欠点を指摘している。現在、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と国際移住機関(IOM)が定めた、安全な国への数少ない合法的な経路は、時間がかかる上、制約が多い。また、この枠組みの対象は9カ国の国籍保持者に限られ、その登録もトリポリ市内でしかできず、市内でも収容センターでは不可能だ。各受入国への再移住の定員も非常に限られている。UNHCRの再移住プログラムに登録した約4万人のうち、昨年リビア出国を果たしたのは1662人。IOMの自発的帰国プログラムでも3000人ほどにとどまった。リビアで暮らす移民の数は最低60万人とされ、実際は200万人とも推測されている。
今回の報告書では、援助団体が各国政府とともに推進するさまざまな代替策も紹介している。イタリアでは既に人道回廊が開かれ、MSFがリビアで治療をした患者など、非常に弱い立場にあり、保護の必要な一定数の人のリビアからの退避を可能にした。一方、フランスでも、拷問・暴力被害の経験者や、深刻な健康問題を抱える人を退避させ、フランス入国後にMSFが援助できるよう、当局との協議が進んでいる。MSFは、このような仕組みが他の安全な国でもつくられるよう求めている。
- 移民をリビア国外へ
MSFアドボカシー・マネジャーのジェローム・テュビアナはこう訴える。「理不尽に無期限の拘束下に置かれた人や、構造的な暴力にさらされている人への医療では、多くの場面で行き詰まりが生じます。現実的に、私たちがリビア国内でできる援助は限られています。特に弱い立場にいる人を本当の意味で保護するには、何よりもまず、この拘束の仕組みとリビアという国の外に急いで退避させなければいけません」
MSFはリビアで活動する数少ない国際NGOの1つで、収容センターに拘束されている移民や、仮設住宅で暮らす移民に、保健医療全般と心理・社会的支援を提供している。また、特に重篤な人の病院への搬送を手配するとともに、UNHCRとIOMのプログラムへの登録を望む人に協力し、リビア出国を手助けしている。