アフリカにおける日本の脱炭素技術活用に向けた、大きな一歩。マラウイから政府関係者や専門家が来日します。

この記事は約8分で読めます。
特定非営利活動法人Colorbath(本部:山口県周南市 代表理事:吉川雄介)は、10月2日(月)から10月5日(木)、福岡・山口・兵庫を拠点に、マラウイの政府関係者・保健医療専門家による本邦研修を実施します。研修を通して、アフリカの衛生環境向上、栄養状態改善に向けたヒントを得るだけでなく、二酸化炭素排出削減につながる装置「ソーラーボイラー」の普及開発に向けたロードマップを策定し、日本の技術を世界の課題解決に活かしていく事例を創出します。

■マラウイの課題:深刻な「栄養失調」や「病院の衛生環境」の改善は、一時的な支援では不十分

マラウイは、アフリカ南東部に位置する内陸国です。

国土の真ん中には大きな湖(マラウイ湖)があり、気候は雨季乾季にわかれています。独立以降、外国との戦争や内戦を経験していないことから、「The Warm Heart of Africa(アフリカの温かい心)」と呼ばれることもあり、フレンドリーな国民性が特徴です。

そんなマラウイですが、深刻な課題も抱えています。

一つは、病院における衛生環境の確保

マラウイでは、医療施設の半数以上に手洗い設備がないほか、電気やガス、水道などのインフラ設備が整っていないことから、病院内で衛生的な環境を確保することが難しい状況にあります。

また、安定した電気供給がなく、時間が限られている手術の際は、殺菌消毒せずに器具を利用することも少なくありません。

結果として、コレラ・赤痢をはじめとした感染症が流行。

新型コロナウイルスパンデミック下でも、多くの人が命を落としました。

また、医療スタッフへの知識教育も十分ではなく、一時的な支援では、持続的に安全な医療環境を地域の住民に提供することはできません。

もう一つは、栄養失調。エネルギー源の90%を占める薪による熱源では、食材に十分に火を通すことが難しく、5歳未満児の47.1%が低体重での慢性的な栄養失調に陥っています。また、栄養に関する知識が学校や地域においてあまり共有されていないことも、原因の1つです。

■Colorbathの活動:「衛生」と「栄養」に関する2つのプロジェクトを、現地パートナーとともに実施

そこで私たちは、2019年よりマラウイでの活動を開始。主に以下2つの活動に取り組んできました。

2020年からは、JICA草の根協力支援型事業に採択され、ますます活動が加速しています。

一時的な支援にとどまらない活動を行うため、病院やコミュニティ、現地企業などのパートナーの主体性を引き出すアプローチを中心として活動しています。

①医療器具の煮沸消毒を中心とした、衛生環境の向上プロジェクト

世界最大級の望遠鏡の設計にもかかわった技術者によって開発された、アルミ製の装置「ソーラーボイラー」。太陽光の力だけでお湯を沸かすことができるこの装置を活用して、医療器具の煮沸消毒をおこなっています。

また、あわせて、現地保健省と連携して医療スタッフへの衛生環境維持に関する研修を実施。

現在、北部ムジンバ県内の3つの地域のヘルスセンターのスタッフを対象にした実施が完了しており、今後対象者の範囲を拡大していく予定です。

②妊産婦を中心としたアプローチによる、栄養状態の改善プロジェクト

先述の「ソーラーボイラー」は、食材の加熱処理にも活用することができます。そこで、現地のコミュニティメンバーと連携し、妊産婦や乳幼児が安心して食べることができる食事のレシピづくりに取り組んでいます。

また、家族単位で栄養の知識を身につけてもらうため、妊産婦検診・乳幼児検診などの継続実施や、わかりやすいイラストや調理実習を活用した、栄養の大切さを伝える教育活動も実施しています。

③薪の使用量を削減による、二酸化炭素排出の抑制&森林伐採の防止プロジェクト

「ソーラーボイラー」の使用によって熱源がまかなわれることで、二酸化炭素の排出を抑制できるほか、森林伐採を防止することが可能です。

「衛生環境プロジェクト」「栄養プロジェクト」の草の根での実施の中で培った、現地カウンターパートや住民とのネットワークや、「政府」「学校」「病院」「コミュニティ」など、それぞれのニーズに応えることができる活動を通して、最終的にはアフリカ全土でのソーラーボイラーの現地生産・販売体制の確立を目指します。

■学校・病院・企業など、多岐にわたる訪問先

上記のようなプロジェクトに取り組みながら私たちが感じたのが、「医療」「衛生」「栄養」に関するプロフェッショナルを育成する大切さと、その分野における日本の先進性でした。

そこで今回、マラウイの医療関係者3名を日本に招聘し、視察研修を実施。福岡・山口・兵庫三県の4施設を訪問し、さまざまな学びを得ます。

また、各地で日本食や文化の体験、子どもたちとの交流なども実施。日本とマラウイが友好的な関係を築いていくことにも寄与します。

マラウイに帰国後、3名は各県病院・ヘルスセンターなどで本邦研修の内容を報告。「衛生」「栄養」両面において活動内容のアップデートをおこなう予定です。

訪問先①:社会福祉法人正道会南畑ピノキオ森のこども園(福岡県那珂川市)

給食の栄養管理や食育教育の様子を見学します。また、園児の健康管理のためのスタッフの役割分担についても説明を受けます。

訪問先②:聖マリア病院(福岡県久留米市)

病院内の衛生環境確保のルールや、滅菌処理の技術について現場を視察します。

訪問先③:周南市立菊川小学校(山口県周南市)

フッ素保健衛生活動の見学のほか、給食の栄養管理や提供環境の視察をします。

訪問先④:周南公立大学(山口県周南市)

産学官の連携体制や、学内の国際交流センター、来年度から開設予定の看護学科に関して説明を受けるほか、学生との懇談をおこなう予定です。

訪問先⑤:虹技株式会社(兵庫県姫路市)

国内最大規模の鋳造工場、および送風機を製造する機械工場を見学し、その技術力にふれるほか、ソーラーボイラー開発関係者との懇談をおこないます。

訪問先⑥:姫路市立南部学校給食センター(兵庫県姫路市)

 

市内12校に栄養バランスの整った給食を衛生的に提供することができているシステムについて学ぶほか、日本の食育教育について学びを深めます。

本件に関する取材のお問い合わせについて

今回の本邦研修では、各メディアからの取材を受け付けています。

取材を希望される方は、件名に「本邦研修の取材に関して」という文言を入れていただき、以下までご連絡ください。

NPO法人Colorbath 広報担当:櫻井

info@color-bath.jp

09044148341

<概要>

正式名称

訪問目的

訪問日

社会福祉法人正道会南畑ピノキオ森のこども園

(福岡県那珂川市)

・食育活動(栄養)

・園児の健康管理

 ・スタッフの役割分担

10/2(月)

聖マリア病院(福岡県久留米市)

・病院内の衛生環境確保

 ・滅菌処理の技術について

10/3(火)

周南市立菊川小学校(山口県周南市)

・フッ化物洗口の見学

 ・給食の提供環境の見学
・家庭科教諭による食育活動の見学

   

10/4(水)

  

周南公立大学(山口県周南市)

・産官学連携の国際交流について

 ・学生、教職員との懇談

10/4(水)

虹技株式会社(兵庫県姫路市)

・大型鋳造品、機械製品の工場見学

 ・ソーラーボイラー開発関係者との懇談

10/5(木)

10/6(金)

姫路市立南部学校給食センター(兵庫県姫路市)

・給食の調理、提供環境の視察

10/6(金)

<協力>
JICA(独立行政法人国際協力機構)中国

■マラウイ基礎情報

人口:1,965万人(2021年:世銀)

宗教:人口の約75%がキリスト教(その他イスラム教、伝統宗教)

食事:主食はシマ(トウモロコシの粉をお湯で練ったもの)、おかずの味付けは塩・トマト

NPO法人Colorbathについて 

NPO法人Colorbath 団体概要

住所:山口県周南市川崎3丁目21番15号

設立:2016年4月

事業内容:「想いをカタチに、未来をつむぐ」をミッションに掲げ、ネパールやマラウイなどの途上国での雇用創出に関わるソーシャルビジネス事業を展開。また、日本と海外の学校をつなぐ国際交流に関わる事業も行っている。

HP:http://color-bath.jp/

Facebook:https://www.facebook.com/colorbath

代表理事:吉川雄介

1985年生。早稲田大学国際教養学部、米国Portland State Universityにて文化人類学専攻。新卒でベネッセに入社。学校教育コンサルティングに関わり、教員向け研修や生徒・保護者向け講演に従事。新しい働き方・学び方創りに関わり、社外の活動としてスポーツ、キャリア教育、地方創生、途上国支援など複数のNPO、NGOの立ち上げに関わる。世界経済フォーラム(ダボス会議)Global Shapers Communityメンバー。関西学院大学非常勤講師。

タイトルとURLをコピーしました