- 運送業界におけるダイナミックプライシングエンジン構築の背景
日本社会の生活インフラとして欠かせない運送事業ですが、全日本トラック協会の調査によると、約6割の運送事業者は、営業利益ベースで赤字経営をしているという報告があります(※1)。国土交通省は、原価を元に運送会社が適正な利潤を得られるよう、令和2年に「標準運賃(目安としての適正賃金)」の告示を行いましたが、現行の「標準的な運賃表」は地域ブロックごとに、走行距離と車種を元に運賃が規定されているシンプルな対応表(図1、右)であるため、荷物の内容や季節性等も加味し、より実態に即した標準運賃を打ち出すことができるプライシングモデルの必要性が求められていました。
また、『物流の2024年問題』(働き方改革関連法により、2024年からトラックドライバーに対する時間外労働時間の上限規制の猶予期間が終了し、他業種同様の規制が適用されることで運送・物流業界に生じる諸問題)が差し迫るなか、ドライバーの稼働可能時間の減少に伴い、運送事業者は売上の低下が避けられない事態が予期されており、赤字経営に苦しむ運送業界をいかに構造転換させるかは国の政策の焦点の一つとなっています。
※1 全日本トラック協会 「経営分析報告書 令和2年度決算版」
- ダイナミックプライシング(変動料金制)とは
ダイナミックプライシングとは、需要と供給のバランスに応じてサービスの価格を変動させるもので、ホテルや航空業界などで導入が進んでいましたが、近年は小売業界や美容院などでも社会実装がされ始めています。
- 実証実験内容
今回の実証実験では、実在する数種類の求貨求車システム(荷物案件とトラックを結びつけるマッチングプラットフォーム)のデータを元に、荷物の発送・到着の地域、荷物の種類など、より運送サービス毎の価格設定を、幅を持たせる形でAIが算出するエンジンを開発いたします。下限値はコストベースで算出し、上限値はバリューベースで設定することで、運送業の実態に即したプライシングを幅を持った形で提示し、「適正な価格」について、判断材料のひとつになり得る仕掛けを作ることを目指します。
(図1)
- 実証実験の期間・今後の展望
・期間:〜2022年12月まで
・展望:ダイナミックプライシングエンジンを開発することで、より適切な価格設定で取引のなされるフェアな経済社会の実現に向けて、さらなる取り組みを行ってまいります。
- 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)とは
SIP(読み方 “エス・アイ・ピー”)とは、内閣府に設置された総合科学技術・イノベーション会議が司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより、科学技術イノベーション実現のために創設された国家プロジェクトです。国民にとって真に必要な社会的課題や、日本経済再生に寄与できるような世界を先導する課題に取り組むものを採択し、産学官連携のもと、基礎研究から実用化・事業化までを見据えた研究開発が推進されています(※2)。
SIP第2期「スマート物流サービス」の研究開発においては、以下のテーマが採択されています。
※2 内閣府策定、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)スマート物流サービス研究開発計画」
- 採用情報
アセンドでは、一緒に運送業界を盛り上げてくれる仲間を募集中です。
▼採用情報は以下をご覧ください。
https://www.wantedly.com/companies/ascend
- 会社概要
本社所在地:東京都新宿区市谷田町2-38-3シティ市ヶ谷5階
代表者 :代表取締役 日下瑞貴
設立 :2020年3月
従業員数 :31名(非常勤の業務委託メンバーを含む)
資本金 :2億2900万円(資本準備金を含む)
事業内容 :運送管理SaaS LogiX(ロジックス)開発提供、物流コンサルティングサービス
会社HP : https://www.ascendlogi.co.jp/