残渣型バイオスティミュラントで環境保全を推進する「脱炭素地域づくり協議会」設立

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本日、農業協同組合、製造企業、金融機関などの多数のステークホルダーの参画を得て、株式会社AGRI SMILEが代表を務める「バイオスティミュラント活用による脱炭素地域づくり協議会(Expert COuncil for Low carbon Agriculture in Biostimulant technology、以下、Eco-LAB)」を設立しました。

Eco-LABは、農業産地のニーズに対応したバイオスティミュラントの適切な活用を支援するとともに、カーボンクレジット取引の促進を目指してまいります。

【設立趣旨】

昨今、温暖化や異常気象に対し、農作物の被害が甚大であり、気象変動に負けない栽培技術の確立と、環境と調和のとれた農法が求められています。食料生産を支える化学肥料・化学農薬は、農作物の適した環境に短期間で整備できるため、栽培に欠かせません。一方で、温室効果ガスを排出する要因でもあるため、使用量の低減・適正化の取り組みが必要不可欠です。

また、世界情勢の影響を受けて肥料価格が高騰しているため、輸入の化学肥料に多くを頼る日本の農業産地では、化学肥料の使用量を低減しながら生産力を維持するイノベーションが喫緊の課題となっています。

このような状況を踏まえて、政府は、農業の持続的発展と地球環境の両立に向けて、2021年5月に「みどりの食料システム戦略」を策定しました。本戦略は、具体的な取り組みの一つとしてバイオスティミュラントの活用を挙げています。

バイオスティミュラント(注1)は、政府の地球温暖化対策『GX戦略・みどりの食料システム戦略』にも掲げられている農業生産資材であり、植物本来の機能を引き出すことで環境ストレスを緩和させる特長を持ち、収量や品質の向上効果で注目されている新しい農業資材です。収量や品質の効果が見込めるため、化学肥料の使用量低減を実現する手段として期待されています。

このうち、食品残渣を原料として開発されたバイオスティミュラント(以下「残渣型バイオスティミュラント」、注2)は、フードサプライチェーンの食品廃棄問題を解決しながら、農業生産量の拡大や化学肥料の使用量低減に寄与できるため、脱炭素社会の実現と、環境保全型農業の実現が両立できる画期的な生産技術です。

EUでは、2022年7月に「欧州肥料規則」でバイオスティミュラントを定義化し、EC圏販売するには、バイオスティミュラント商品にEU加盟国基準証明である「CEマーク」の取得を義務付けています。

こうした中、Eco-LABでは、日本の農業産地がバイオスティミュラントを活用しやすい環境づくりを行い、食品残渣を活用したバイオスティミュラントの社会実装を図ることを目的に、設立をしました。

【Eco-LABの活動】


Eco-LABは、3つのコンソーシアムから構成されており、各コンソーシアムの活動を通じて、地域を巻き込んだ脱炭素の取り組みを推進してまいります。

(1)食品残渣BS開発コンソーシアム

食品残渣型バイオスティミュラントの開発と普及によって、食品ロス削減と再資源化を促進します。農業生産・収穫段階に発生する残渣(収穫時の非可食部廃棄物や出荷基準を満たさない規格外廃棄物等)や、食品製造・加工段階に発生する残渣(製造過程の副産物や非可食部廃棄物等)など、大量に廃棄されている未利用資源について、再資源化の有効利用手段としてバイオスティミュラント資材開発を検討し、開発を進める上での課題解決を図ります。

また、農業産地が持つニーズと照らし合わせて、生産現場で利用し得る商品基準を協議します。

(2)BS栽培検証コンソーシアム

各地域・各品目におけるバイオスティミュラントの栽培技術を確立し、「みどりの食料システム戦略」にもとづく環境保全型農業を目指します。農業産地におけるバイオスティミュラント資材に関わる要望調査を行い、収量・品質の向上/化学肥料の使用量低減/土壌炭素貯留量などの影響について、客観的なデータを元にバイオスティミュラント資材を評価するとともに、生産現場に潜在するバイオスティミュラントの利用課題や問題意識に対する提言をまとめ、農業産地の発展に貢献します。

(3)炭素クレジットコンソーシアム

バイオスティミュラントを活用した農業産地や生産者が、炭素クレジットを受け取れる仕組みを整備します。食品残渣を活用したバイオスティミュラント農法による温室効果ガス削減効果を算出し、Jクレジット制度を利用したカーボンクレジットなど、環境保全型農業の活動を可視化して資金循環をつくることで、農業従事者の新たな収益源・所得向上の実現を目指します。

<今後の計画>

2023年9月7日    設立総会

2023年9〜12月    各コンソーシアムの活動

               – 食品残渣型バイオスティミュラント開発の課題の提示

               – 農業産地のバイオスティミュラントに関する問題意識の提示

               – 炭素クレジットの方法論の考え方の提示

2023年1月       代表者会議

               – 各コンソーシアムのとりまとめと提言の議決

2023年2月       代表者会議

           - 各コンソーシアムの提言の最終案の合意

2024年3月       第二回総会

           - 活動状況と2024年度の活動計画案の提示など


【代表者コメント】

<食品残渣BS開発コンソーシアム代表者:きたみらい農業協同組合 代表理事組合長 大坪 広則>

このコンソーシアムは、バイオスティミュラントが持つ可能性の一つを研究するにすぎませんが、廃棄物をバイオスティミュラントという活用資源に変えるという画期的な取組であり、その成果は農業界、食品製造業界の救世主になり得ると確信するところです。一方で環境保全、脱炭素をキーワードにGX戦略やみどりの食料システム戦略として示されている政府の農業施策の実現にも貢献することにもなりますので、そのことを通じて社会貢献を果たしてまいりたいと考えています。


<BS栽培検証コンソーシアム代表者:はが野農業協同組合 代表理事組合長 国府田 厚志>

JAはが野では、以前からバイオスティミュラントを使用しており、収量や品質への効果を確認しています。バイオスティミュラントは、高温障害や病気の軽減などの適応を期待できますが、商品によって効果が異なるので、特長や作用メカニズムを理解して、目的にあった資材を選択することが重要です。現在、バイオスティミュラントと併用しながら、化学肥料の使用量を低減させる栽培計画を立てており、コンソーシアムの活動を通して、バイオスティミュラントの利用に関わる課題を解決していきます。

<炭素クレジットコンソーシアム代表者:とぴあ浜松農業協同組合 常務理事 齊藤 直司>

農業を取り巻く環境は、生産資材価格が高騰・高止まりするなか、農畜産物価格への反映が追い付いておらず、農業経営は一層厳しさを増しています。

地域農業を将来にわたって持続可能なものとするため、環境保全型農業を実践し、炭素クレジット実現に向けた新たな農業の取り組みを進めることで農家組合員の所得向上を目指します。

<協議会代表者:株式会社AGRI SMILE 代表取締役 中道 貴也>

近年、温暖化や異常気象などの気候変動に適応した栽培技術として、バイオスティミュラントが期待されています。現在は海外での拡大が先行していますが、当社はバイオスティミュラントのリーディングカンパニーとして我が国の普及をサポートしていきたいと考えています。当社の特許技術を用い、食品残渣由来のバイオスティミュラント開発や、作用メカニズムが解明された安全で信頼できる資材の利用推進、栽培活動が生産者の所得向上に繋がる仕組みづくりを行い、農業界に貢献していきます。

【Eco-LABの概要】

名称

バイオスティミュラント活用による脱炭素地域づくり協議会

Expert COuncil for Low carbon Agriculture in Biostimulant technology

所在地

東京都千代田区神田小川町3丁目28番地5

HP

Eco-LAB | バイオスティミュラント 活用による 脱炭素地域づくり協議会
脱炭素地域づくり協議会(通称Eco-LAB)は、産地が持つバイオスティミュラントの利用課題や、生産現場の問題意識に対する政策提言をまとめ、産地の発展に貢献すること、バイオスティミュラントを活用した生産現場・生産者が炭素クレジットを受け取れる仕組みをつくること、バイオスティミュラントの開発・普及することを通じて、地域を巻...

参画団体

※50音順

農業協同組合

遠州中央農業協同組合        代表理事 山田 耕司

きたみらい農業協同組合       代表理事組合長 大坪 広則 

とぴあ浜松農業協同組合       常務理事 齊藤 直司

はが野農業協同組合         代表理事組合長  国府田 厚志

三ヶ日町農業協同組合        代表理事組合長 井口 義朗

企業

株式会社AGRI SMILE        代表取締役 中道 貴也

ICS-net株式会社           代表取締役 小池 祥悟

株式会社ウェイストボックス           代表取締役 鈴木 修一郎

キユーピー株式会社                       機能素材研究部 部長 白男川 太一

日本オーガニック株式会社              常務取締役 水谷 和敬

BIPROGY株式会社                          サービスイノベーション事業部 

                                                    ビジネス第二 部長 松尾 光泰

株式会社パナソニック システムネットワークス開発研究所 

                                                    代表取締役社長 前田 崇雅

金融機関

tsumiki証券株式会社         代表取締役CEO 青木 正久

株式会社三菱UFJ銀行                      営業本部営業第五部部長 小杉 裕司

※注1:バイオスティミュラントとは

バイオスティミュラントは、「作物の活力、収量、品質および収穫後の保存性を改善する資材」として期待されており、2030年に約7500億円のマーケットとして注目されている新しい農業用資材です。気候変動によるストレス耐性に寄与し、植物の免疫系を活性化することで、根張り・収量の向上や、乾燥/過湿耐性、耐病性、耐⾼/低温性、耐塩性といった効果をもたらし、栄養吸収の強化に効果のある資材も確認されています。そのため、生育状況を考慮しながら利用することで、過剰な化学肥料の使用を抑えた事例もあります。

原料候補は、微⽣物/多糖類/ペプチド/有機酸/ミネラル/腐植酸など多岐に渡り、加工処理を施し、植物試験や遺伝子発現解析等の検証を進めることで、バイオスティミュラントの性質を発揮する素材を発見することができます。

https://www.affrc.maff.go.jp/docs/innovate/attach/pdf/index-3.pdf

※注2:食品残渣型バイオスティミュラント

AGRI SMILEが開発した食品残渣型バイオスティミュラントは、「食品」から「食品」を作り出していく、資源循環を実現します。地域の食品残渣をバイオスティミュラントに変えることで、再資源化・化学肥料低減・気候変動にも強い作物を生産し、環境にやさしい持続的なフードサプライチェーンの循環を生み出します。

フードサプライチェーンにおける温室効果ガス排出量は、人為起源温室効果ガス総排出量の21~37%で、このうち、農業生産活動では総排出量の10%、フードロス等の食品加工製造活動では総排出量の8~10%に相当するといわれています。

株式会社AGRI SMILEについて

AGRI SMILEは、「テクノロジーによって、産地とともに農業の未来をつくる」を経営理念に据え、豊かな経験を持つ産地と、進化を続けるサイエンステクノロジーを融合することで、環境に優しい魅力あふれる農業の実現に取り組んでいます。

国内最大規模の産地ネットワークを活かし、データサイエンス技術による農業DXソリューション、最先端バイオテクノロジーによる生産技術、産地のブランディング支援などを展開しています。また、技術創出の源泉であるアカデミアの交流を活発化するプラットフォームを提供し、社内外で技術を連携させています。今後も、産地と調和した革新的なサービスを通じて、笑顔(SMILE)のある未来を創造し続けてまいります。

【会社概要】

代表者:代表取締役社長 中道 貴也

事業内容:農産業DXサービス、脱炭素に資するバイオテクノロジーの開発及び提供

設立:2018年8月31日

所在地:〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3丁目28-5 Axle御茶ノ水

会社URL:https://agri-smile.com/

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