東日本大震災発生後に原発から20km圏内の福島県南相馬市で開塾、“学習ログ”の活用で教育格差解消に取り組む「京大個別会原町本校」のご紹介

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スタディプラス株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:廣瀬高志、以下スタディプラス)では、教育機関向け学習管理プラットフォーム「Studyplus for School」を全国の学校や学習塾など約1,500校以上に提供しており、学習ログを活用した子どもたちの個別最適な学びの実現に向けた取り組みを進めています。
今回は、福島県南相馬市で自立型指導を行う学習塾「京大個別会原町本校」をご紹介します。
■ 京大個別会原町本校とは?
「南相馬市の子ども達の人生を変える」というビジョンのもと、小学生から高校生までの全教科で定期テスト対策から受験指導まで対応。映像教材やICTツールを駆使した独自のシステムを構築し、子どもたちが小さな成功体験を積み重ね学習習慣を身につけるための仕組みや、県外にいる卒塾生が生徒とオンライン面談を通して学習管理を行うなど、先進的な取り組みを実施。
HP:https://kobetukai-haramachi.com/

1人ひとりが端末を活用し、自立型学習をする様子1人ひとりが端末を活用し、自立型学習をする様子

京大個別会原町本校 塾長 佐藤 晃大 先生
(福島県南相馬市出身)

『私は初めから教育業界にいたわけではなく、もともとは別の業界にいました。大学院1年目の頃に震災があったこともあり、東北に貢献したいと経営コンサルの会社に入社。入社式の面談で東北地方に配属してもらえるという話でしたが、首都圏営業所への辞令が出てたんです。一年経っても異動できなかったので、東北のために何かしたく辞職しました。会社を辞めたのは25歳の頃で、東北のためといいつつ具体的に何をしていいか分からず、バックパッカーで東南アジアを周りました。そこで、相馬港を使ってモンゴルに車を輸出するビジネスを始めようと考えたんです。しかし相馬港は震災で使えない状態だったので、港のある神奈川県に行きました。そこで早稲田アルパスの鈴木さんに出会って、「車を売るより南相馬のためになることはある、それが教育だ」と言われました。』

■ 南相馬の教育の現状
福島県南相馬市は、東日本大震災で、震災、津波、原発事故の被害に遭いました。
原発から20km圏内に位置する「京大個別会原町本校」が開校した2014年当時は、子どもたちはほとんど戻っていませんでした。2016年になってほぼ全域が開放され、人が住める状況になっています。
南相馬市の人口は震災前は7万1,000人でしたが、現在は5万7,000人です。避難者の帰還率は80%で、これ以上は戻ってこないと言われています。問題は、帰還者に子どもたちが少ないことです。
小学生は1,700人、中学生と高校生は1,000人しかおらず、若者は避難先に定住する傾向にあります。

南相馬市には大学がないため、大学に通うためには市外で一人暮らしをする必要があります。
結果として、南相馬市には大学生がいません。そのため、学習塾では個別指導ができる講師を探すのが非常に難しいです。インフラ整備が追い付いていないこともあり、人、物資、サービスだけでなく教育も遅れています

南相馬市の高校は、学区制となっています。「京大個別会原町本校」が位置する地域は学力が低く、普通制の高等学校は1校で、進学校と言われていますが偏差値は50以下。大学受験を目指す学生はその高校に進学することになり、中学の時は優秀だったとしても、大学受験で苦しむ傾向にあります。
 

■ ICT教材を活用、指導方針は「勉強の内容は教えない」
京大個別会原町本校には、2つのミッションがあります。一つ目は、一生懸命勉強して結果を残したいという生徒が夢を叶えられる塾にしたいという思いから「子どもたちの人生を変える」。二つ目は、都会に比べてどうしても情報が少ない南相馬市で最先端の情報やサービスを提供することで、「教育の情報格差をなくす」。

そのための指導方針は「勉強の内容は教えない」です。生徒はアプリなどのICT教材を使って勉強し、先生は勉強の方法や質問の仕方、目標設定のやり方を教える自立型指導を行っています。
初めは、佐藤先生が1人で集団指導・個別指導を行っていましたが、相手にできる生徒は10人が限界でした。口コミで生徒が増えたことをきっかけに2016年3月に自立型指導に切り替え、今では120人の生徒が通う教室となっています。

※自立型指導とは?
映像授業や自習形式など、生徒主導で勉強を進めていく形式の指導方法を指します。
昨今、少子化に伴う生徒募集難や求人倍率向上による先生採用難などの影響で集団指導・個別指導の持続が困難になり、自立型指導を提供する学習塾は増加しています。
スタディプラスが2022年7月7日(木)~7月8日(金)にかけて、学習管理アプリ「Studyplus」上で中学生・高校生のユーザーを対象に実施した「塾・予備校に関するアンケート調査」では、通塾中の中高生の23.2%、高校生の29.5%が「自立型指導」の塾・予備校に通っていると回答しました。

■ ICT教材を効果的に活用するためには、学習ログが不可欠
京大個別会原町本校は、もともとは中学生を中心に開塾していましたが、年々増えていく高校生への対応が課題となり、生徒のコースごとに様々なICT教材を活用するようになりました。
生徒に対しては、毎月一回・30分程度の面談で、年間計画をもとにカリキュラムの修正などを行っていましたが、うまくサポートしきれず孤立する感覚になった生徒の退塾が増えました
原因は、「生徒との接触回数が少ないこと」、それにより「モチベーションの維持が難しくなること」、そして「勉強の進捗状況が不透明でブラックボックス化されていたこと」です。

これを解消するために生徒の学習記録を可視化できる「Studyplus for School」を導入しました。
生徒がさまざまなICT教材を使って学習した記録が自動連携されるほか、生徒が家庭で勉強した記録を学習管理アプリ「Studyplus」に付けることによって、先生はあらゆる学習の記録を確認することができるため、生徒一人ひとりの状況に合わせた指導が可能になりました。
生徒と日々接触をすることを大切に考えるようになり、面談のほかに「Studyplus for School」のメッセージ機能を通じて、オンラインで毎日生徒とコミュニケーションをとっています。

■ 地元を離れた卒業生たちが、ICTを活用して遠隔で後輩たちをサポート
京大個別会原町本校では、卒塾生の大学生が東京や千葉などの遠隔地からアルバイト講師として働いています。卒塾生は、地域的に高校生にとって出会えない世代であるため、生徒たちの刺激になっています。卒塾生のアルバイト講師は、生徒と週に1回のオンライン面談を行っており、「Studyplus for School」を通じて勉強状況を確認しながら、それぞれの生徒に合わせた指導を行っています。

■ 教材ごとの学習ログと成績に着目、偏差値30から10カ月でGMARCHに合格
2021年度に、高校3年生の4月時点で、進研模試で国語の偏差値が30台、英語が40台、社会が30台だった男子生徒が、その後に10カ月で学習院大学、中央大学、専修大学に合格しました。男子生徒は高校3年生で部活を引退したことをきっかけに、特に勉強時間にこだわりながら、勉強に本腰を入れました。男子生徒は「Studyplus」を通じて勉強記録をこまめに付けることを心掛け、基礎固めが必要だった夏休み、8月には最大328時間勉強しました。

 ↑ 生徒の「Studyplus for School」の実際のデータ、8月に勉強時間が最大に。 ↑ 生徒の「Studyplus for School」の実際のデータ、8月に勉強時間が最大に。

10月以降は、勉強記録をつけながら赤本対策に取り組みます。正答率55%程度の赤本から着手し、正答率が75%を常に超えられるようになったら、次のレベルに着手するという流れで、1月には赤本に200時間ほど取り組みました。

 ↑ 生徒の「Studyplus for School」の実際のデータ、赤い部分が赤本を使用した勉強時間。 ↑ 生徒の「Studyplus for School」の実際のデータ、赤い部分が赤本を使用した勉強時間。

男子生徒は最終的には志望大学の中央大学の赤本を解いて、国語が60%、英語が70%、日本史が80%取れるようになり、見事合格しました。
教材ごとの学習ログを活用することによって、成績のみの指標ではない、個人の習熟度に合ったより効率的・効果的な学習指導が可能となりました。

京大個別会原町本校では、「教育だけは平等でなくてはならない」という思いから、ICT技術を活用して、南相馬の子どもたちの人生を変える場所としての役割を担っていきたいと考えています。

■教育機関向け学習管理プラットフォーム「Studyplus for School」 概要
スタディプラスが提供する「Studyplus for School」は、生徒と先生を学習記録アプリ「Studyplus」でつなぎ、生徒の日々の学習ログを先生が見守り助ける、教育機関向け学習管理プラットフォームです。紙の教科書や参考書からデジタルの映像教材や演習教材まで、あらゆる学習ログを一元化・可視化することで、先生の業務負荷を軽減しながら、生徒一人ひとりの学びの個別最適化をご支援します。文部科学省CBTシステム「MEXCBT」と接続する学習eポータル。
2023年4月より大幅リニューアルし、生徒の入室、出席、予定、成績などの管理や、保護者・生徒との連絡など、多岐にわたる業務をデジタル化できる「教室管理システム」と、AIドリルを生徒に配信できる「教材配信システム」が使える無料プランの提供を開始。
現在、全国の学校や学習塾など約1,500校以上に導入されています。
https://for-school.studyplus.co.jp/

■スタディプラス株式会社 概要

  • 所在地:東京都千代田区神田駿河台2丁目5−12 NMF駿河台ビル4階
  • 代表取締役:廣瀬高志
  • 事業内容:学習管理アプリ「Studyplus」、教育機関向け学習管理プラットフォーム「Studyplus for School」、電子参考書プラットフォーム「Studyplusブック」の運営
  • 設立:2010年5月20日
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