防災科研では、「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」の改正(2020年6月)により、防災科研発ベンチャーへの出資が可能となりました。
これを踏まえ、2021年11月に設立されたのが、防災科研の研究開発成果や知見、ビッグデータの社会実装の推進を目的とするI−レジリエンスです。
JX通信社は、TwitterをはじめとするSNS情報や、自社が運営する市民参加型ニュースアプリ「NewsDigest(ニュースダイジェスト) 」のユーザーから寄せられる目撃情報を元に、AIを駆使して全国のリスク情報を抽出・即時配信するリスク情報SaaS「FASTALERT(ファストアラート) 」を提供しています。「FASTALERT」は自然災害から事件・事故・テロ事案まで、幅広いリスク情報を報道機関、公共団体、民間企業に24時間配信し、我が国の防災DXの推進に貢献しています。
「FASTALERT」では、さらに高度かつ具体的なリスク情報の検出と、防災・減災行動の迅速化を目的に、自動車テレマティクスデータ、ハザードマップ、ライブカメラ情報など、官民の保有する防災に役立つビッグデータの搭載を進めています。今般、出水期を前に、さらに線状降水帯などの対策を迅速化するために、防災科研が研究開発した「大雨の稀さ」データをI−レジリエンスを通じて導入することを決定したものです。
<「大雨の稀さ」とは>
防災科研では、線状降水帯等による豪雨災害の多発を受け、より具体的な避難行動を促すため、「降水量の稀さ」データの研究開発を進めてきました。降水量の稀さ(再現期間)とは、観測された降水量が平均して何年に一度くらいの確率で起こるかを表すものです。再現期間が長いということは、その地域にとって滅多にない稀な規模の大雨であることを意味します。
この稀さは、対象となる期間における降水量の年最大値に基づき推定されます。通常、インフラの設計には、これまでを大きく上回る稀な大雨は想定されていないケースが多く、その施設の対応能力を超えてしまう可能性があります。今まであまり大雨が降っていない地域は、頻繁に大雨が降るような地域と比較すると、大雨に対する自然・社会環境の脆弱性があると考えられます。したがって、災害が起こる恐れ(危険度)の度合いは、雨量そのものよりもその地域にとってどれくらい稀な大雨であるかの方がより重要な情報になると考えられます。
「FASTALERT」では気象庁から発表される警報・注意報や、局地的な災害の様子をSNSから捉えた映像等と組み合わせて本情報を閲覧できるようになり、より具体的な防災・減災行動の判断に役立てることができると考えています。
<今後の展開>
今後、「FASTALERT」ではI−レジリエンスが展開するIRINの様々な気象解析データを順次活用し、レジリエントな社会に貢献する新機能を展開してまいります。
【参考】
<株式会社JX通信社について>
JX通信社は、データインテリジェンス領域に取り組むテックベンチャーです。国内の大半の報道機関のほか官公庁、インフラ企業等にSNS発のリスク情報を配信する「FASTALERT」、一般消費者向けの速報ニュースアプリ「NewsDigest」、自動電話情勢調査などのサービスを提供しています。新型コロナウイルス感染症をめぐっては、国内でいち早く2020年2月16日より国内感染状況の統計をまとめた「新型コロナウイルス感染状況マップ」を公開し、各報道機関・メディア・研究機関にも情報を提供しています。
URL:https://jxpress.net
<FASTALERT(ファストアラート)について>
「FASTALERT」は、AI(人工知能)がSNSから災害、事故、事件などのリスク情報を収集し配信するWebサービスです。2016年9月のリリース後7ヶ月で、全ての⺠放キー局とNHKで採用。各局ニュース番組における「視聴者提供」動画定着の原動力になりました。2018年の日本新聞協会 技術開発奨励賞を受賞。 現在はSNS緊急情報サービスでシェアNo.1の業界標準として全国の大半のテレビ局や新聞社に採用されているほか、警察、消防、自治体、一般企業でも幅広く導入実績があります。
URL:https://fastalert.jp
<I−レジリエンス株式会社について>
I-レジリエンスは、新たな防災・減災サービスを提供する会社として防災科研と民間企業4社の合同出資により2021年11月に設立されました。DX・教育・ライフの3つを主な事業とし、防災科研が持つ研究開発成果や知見、ビッグデータを活用し、事業者や生活者のニーズに応じた様々なソリューションを提供していきます。上記3つの事業の柱の具現化のひとつとして、防災情報サービスプラットフォームである「I-Resilience Information Network:IRIN」を活用した事業展開を推進しています。
URL:https://www.i-resilience.co.jp/