ゲンロン叢書012
『中国における技術への問い──宇宙技芸試論』 ユク・ホイ 著
「技術への問いは、生や存在への問いに先立つ」──中島隆博 解説
本書は西洋の視点からのみ捉えられてきた「テクノロジー」という概念を問い、グローバル化し破局に向かう科学技術への対抗策を探る哲学書です。「宇宙技芸」とは、各地域が持つ宇宙論に根差す、多様性に開かれた技術を指します。その再発明のため、諸子百家から京都学派、西洋現代思想までを自在にひもといた本書は、東洋思想を人新世へと開く、まったく新たな技術哲学を打ち出します。
ユク・ホイ(YUK HUI)
香港出身の哲学者。「哲学と技術のリサーチネットワーク」主宰。ロイファナ大学リューネブルク校でハビリタツィオン(教授資格)を取得。現在、中国美術学院および香港城市大学創意媒体学院にて教鞭を執る。著書に『デジタルオブジェクトの存在について』(2016年、未邦訳)、『再帰性と偶然性』(2019年、邦訳は青土社、2022年)、『芸術と宇宙技芸』(2021年、未邦訳)。『ゲンロン』に「芸術と宇宙技芸」を連載。
特設サイト公開中!|https://www.genron-alpha.com/anessayincosmotechnics/
判型:四六判・並製|ページ数:480頁|価格:3,300円(税込)|ISBN:978-4-907188-46-7
目 次
日本語版へのまえがき
まえがき
年表 本書に登場する東西の思想家
序論
1 プロメテウスの生成
2 宇宙・宇宙論・宇宙技芸
3 テクノロジーによる断絶と形而上学的統一
4 近代性・近代化・技術性
5 何のための「存在論的転回」か ?
6 方法にかんする諸注意
第1部 中国における技術の思想を求めて
7 道(ダオ)と宇宙──道徳の原理
8 暴力としてのテクネー
9 調和と天
10 道と器(チィ)──自由と対する徳
11 抵抗としての器道──唐代の古文運動
12 初期の宋明理学における気の唯物的理論
13 明の宋応星(そうおうせい)の百科事典における器道
14 章学誠(しょうがくせい)と道の歴史的対象化
15 アヘン戦争後に起きた器と道の断絶
16 器道の関係の崩壊
17 ニーダムの問い
18 牟宗三(ぼうそうさん)の応答
19 自然弁証法と形而上学(シンアルシャンシュエ)の終わり
第2部 テクノロジーへの意識と近代性
20 幾何学と時間
21 テクノロジーへの意識と近代性
22 近代の記憶
23 ニヒリズムと近代
24 近代の超克
25 ポストモダンの想起(アナムネーシス)
26 故郷回帰のジレンマ
27 人新世における中華未来主義
28 もうひとつの世界史のために
解説 「宇宙技芸」の再発明 中島隆博
訳者あとがき
訳者からのコメント
本書は、急速な技術発展をつづける中国に、ひいては世界に向けて記された、香港の哲学者による提言の書です。
いま、世界は多様化の時代を迎えているとされています。ですが、文化やアイデンティティにかんする認識とは異なり、私たちはテクノロジーが世界中であまりに均一であることにはほとんど注意を払ってこなかったのではないでしょうか?20世紀以来しばしば指摘されてきたように、近代のテクノロジーは、単に西洋に由来するだけでなく、その哲学や世界観につよく規定されているのです。
であれば、私たちは「技術多様性」を追求するべく、哲学的あるいは原理的に異なるテクノロジーの可能性を考える必要があるのではないでしょうか?
そこで本書では、中国のいにしえの技術哲学をつうじて、多様なテクノロジーのあり方が構想されます。ですが、こうした試みが単なる伝統回帰に終始してはなりません。著者のホイは、あくまでグローバル化するテクノロジーとの関係のなかで、伝統的なものを再発明しなければならないと説きます。
くしくも本書では、いまや日本ではあまり顧みられなくなっている戦前の「京都学派」が、批判的に、またきわめてクリエイティブに論じられています。その意味でも本書は、いま日本人が、自分たちの文化や歴史に立脚して現代社会と向き合うための重要な道標になることでしょう。
(伊勢 康平)
刊行記念イベント 2022年9月22日(木)19:00~
「宇宙技芸の世紀にむけて──ユク・ホイ『中国における技術への問い』刊行記念」
石田英敬×原島大輔×伊勢康平
8月30日、香港の哲学者ユク・ホイ氏の主著『中国における技術への問い──宇宙技芸試論』(伊勢康平訳)の邦訳がゲンロンから刊行される。
技術と宇宙論を組み合わせた[伊勢 康平2] 「宇宙技芸」という概念を掲げ、さまざまな地域に存在した宇宙論にもとづく「技術多様性」を提唱する本書は、2016年に原著が刊行されて以来、世界的な注目を集めている。
この度ゲンロンカフェでは、本書の刊行記念として、東京大学名誉教授の石田英敬氏、今年2月に青土社より邦訳が刊行されたホイ氏の『再帰性と偶然性』の訳者である原島大輔氏、そして本書の翻訳を手がけた伊勢康平氏によるトークイベントを開催する。
かねてよりホイ氏と親交を深め、その仕事を日本で紹介してきた石田氏は「いつか世紀はユク的になるだろう──Un jour le siècle sera yukien!」と語る。今回のイベントでは、そんな石田氏にユク・ホイ哲学の可能性と魅力についての講義をいただく予定だ。
ホイ氏の哲学が切り開くあらたな「世紀」は、一体どんな姿をしているのか?宇宙技芸の概念は、技術や哲学、ひいては世界をどのように変えるのだろうか?絶対にお見逃しなく!
■日 時:9月22日(木)19:00~
■会 場:ゲンロンカフェ(品川区西五反田1-11-9司ビル6F)
■会場観覧チケット:2,500円
■インターネット配信:シラス 990円|ニコニコ生放送 1,000円
※本イベントはゲンロンカフェでの会場観覧、またはシラス・ニコニコ生放送のゲンロン完全中継チャンネルからインターネット配信でご覧いただけます。
※詳細は下記ゲンロンカフェ公式サイトをご確認ください
URL:https://genron-cafe.jp/event/20220922/
一般販売について
書店での一般発売は2022年8月30日から開始となります。
そのほか、全国書店・各ECサイトにて好評発売中です。
■直販サイト(ゲンロンショップ)|https://genron.co.jp/shop/products/detail/623
■Amazon|https://www.amazon.co.jp/dp/4907188463
また、本書をお取り扱いいただける書店様で、販促ツール等がご入用の際は、お気軽にお問い合わせくださいませ