主要映画館 5割が今年「値上げ」 映画代は「2000円」主流に 電気代、アルバイト人件費の増加が重荷

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帝国データバンクは、全国の映画館事業者のうち、「5スクリーン以上」または「総収容人数500人以上」の設備を有する50社を対象に、「映画チケット」の価格動向について調査分析を行った。

<調査結果(要旨)>

  1. 主要映画館50社の半数が今年チケット「値上げ」 6月以降は「2000円」が4割超

  2. 値上げの波は「モノ」から「サービス」へ 利用者の値上げ受け入れ姿勢が焦点

※全国の映画館事業者のうち、「5スクリーン以上」または「総収容人数500人以上」の設備を有する50社
※対象期間:6月21日時点
※調査機関:株式会社帝国データバンク

主要映画館50社の半数が今年チケット「値上げ」 6月以降は「2000円」が4割超

人手不足や電気代の上昇による「サービス価格」値上げの動きが、映画館にも広まっている。全国展開する大手シネマコンプレックス(シネコン)や、地域の大規模映画館など計50社の大手映画館のうち、全体の64%にあたる32社が昨年以降に「映画チケット」を値上げした。このうち、全体の半数にあたる27社では23年以降の値上げだった。チケット料金は据え置いたものの、ポップコーンやドリンクなど館内飲食、3Dメガネ等の料金を改定した企業は1社だった。

価格改定前後のチケット料金をみると、一般(通常)料金の改定前(2021年以前)金額は「1900円」(29社)のほか、1800円が中心だった。しかし、23年以降は1900円から価格を引き上げる動きが目立ち、50社のうち4割超の21社が、23年6月以降の鑑賞分から通常料金を2000円へ値上げし、価格帯として最も多かった。また、いずれも1館あたり10スクリーン前後を有するシネコンでの価格設定が目立つ。シニア料金では22年以降、4割超の映画館が1300円の設定としたほか、レイトショーでは「1400円未満」に設定した映画館が価格改定前後で11社減少し、「1500円」とした企業が18社に上った。値上げした各チケット料金は、いずれも100円の値上げ幅にとどまり、標準的な映画鑑賞料金は「2000円」へのシフトがみられる。

 映画館で相次ぐ値上げの背景には、円安などによる各種材料の価格高騰のほか、特に水道光熱費や人件費の上昇といった運営コストの増加が多く目立つ。価格改定の理由が判明した24社のうち、最も多かった要因は電気料金などを中心とした「水道光熱費の増加」で18社に上り、値上げ理由の約7割を占めた。アルバイトなどの「人件費の増加」を理由とした値上げは16社あったほか、「原材料価格の上昇」を理由とした値上げも15社、それぞれ判明した。一方、プロジェクターなどの館内設備や、キャッシュレス決済端末など最新機器導入といった「最新設備への投資」など、前向きな値上げも16社判明した。2000年代初頭にオープンした映画館では機材修理やメンテナンスなど設備リニューアル時期に差し掛かるものも多く、最新設備の導入などで体験価値を向上させ、値上げへの理解を求めるケースも見られた。

値上げの波は「モノ」から「サービス」へ 利用者の値上げ受け入れ姿勢が焦点

足元では値上げの波が食品などの「モノ」から、テーマパークなど「サービス」価格に及んでいる。昨今の原材料高や電気代などのエネルギー価格上昇に加え、人手不足を背景にアルバイト人件費の上昇といった負担が重く、鑑賞サービス料金への価格転嫁を後押しする要因となっている。

ニュースメディアのVOIX(東京・港区)が2022年10月、映画館料金について全国500名を対象に行った調査では、映画料金について「高い」「やや高い」と回答した割合が計9割に上るなど、主流だった1800~1900円前後の価格でも割高感を感じる利用者が多かった。一方で、今年6月以降は大手シネコンを中心にチケット代「2000円化」の動きもあり、利用者と映画館でチケット価格改定の受け止め方は異なっている。テーマパークなどサービス価格を引き上げるケースも目立つなか、映画館の料金値上げが利用者に受け入れられるかが今後の注目点となる。

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