日本国政府は2050年カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーを最大限導入する方針を打ち出しています。特に、洋上風力発電は、大量導入やコスト低減が可能であるとともに経済波及効果が期待されることから、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札と考えられています。遠浅海域の少ない日本においては、深い海域でも導入余地が大きい浮体式洋上風力発電への期待が高まっていますが、その普及にあたっては技術開発を通じたコストの大幅低減が必須です。また、製造における国産化率を高めることで、国内での高い経済波及効果が期待できます。
そのような背景を受け、本実証研究では、低コスト化及び国産化率向上が期待できる次世代の風車として、浮遊軸型風車の小型実験機(20kW級)を5社共同で製作します。
浮遊軸型風車(Floating Axis Wind Turbine: FAWT, ファウト)は、「回転する」円筒浮体で垂直軸型風車を支えるコンセプトであり、その主な特徴は以下の通りです。
【低コスト化】
・傾斜しても発電性能が低下しにくい特性から、最大出力時に20度傾く事を許容するため、浮体を小型化でき、設備費用を大幅に低減します。
・風車部分は、カーボン複合材(CFRP)の連続引抜き成形(※6)により低コストで製造可能です。
・発電機などの主要機器が、海面近くに設置される垂直軸型風車の特性を生かして、保守・運転維持費も大幅な低減を見込みます。
【国産化率向上】
・風車ブレードは、同一断面形状で長さ方向に分割製造が可能なため、大規模な製造工場が不要です。また、輸送も容易となるため、日本国内での製造に適したデザインです。
・風車部分に使用するカーボン複合材の原材料である炭素繊維のシェアは、日系企業が8割ほどを占めています。
浮遊軸型風車は、Jパワー、大阪大学大学院工学研究科、アルバトロスが共同で初期検討を進め、今回新たな枠組みで次のステップとなる本実証研究にのりだすものです。本実証研究では、浮遊軸型風車の小型実験機を国内実海域に設置し、解析・設計手法の妥当性を確認のうえ、更なる大型機(MW級)の海上実証プロジェクトに繋げます。
私たち5社は、浮体式洋上風力発電のゲームチェンジャーとして期待されるこの浮遊軸型風車の開発を、それぞれが保有する知見を活かして共同で取組むことにより、洋上風力発電の主電源化を目指し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。
(参画企業のねらい)
Jパワー、東電HD、中部電力 |
浮体式洋上風力発電における有望技術の開発を行い、再生可能エネルギーの導入を拡大し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する。 |
川崎汽船 |
浮体式洋上風車には船舶安全法が適用される為、当社知見を提供することで新型浮体式洋上風車の実用化に協力し、当研究で得た知見を今後の洋上風力支援船事業に活かすことで社会の脱炭素化に貢献する。 |
アルバトロス |
革新的な浮体式洋上風車を実用化し、広く国内外へ普及させる。 |
(協力機関)
大阪大学大学院工学研究科には引き続き、動揺解析技術を、革新複合材料研究開発センターICC(金沢工業大学)にはカーボン複合材の成形技術をご指導頂きます。小型実験機の製作に関しては、風車部は福井ファイバーテック株式会社(愛知県)、浮体部は株式会社みらい造船(宮城県)と連携して参ります。
※1 電源開発株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長 社長執行役員:渡部 肇史)
※2 東京電力ホールディングス株式会社(本社:東京都千代田区、代表執行役社長 小早川 智明)
※3 中部電力株式会社(本店:愛知県名古屋市、代表取締役社長:林 欣吾)
※4 川崎汽船株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:明珍 幸一)
※5 株式会社アルバトロス・テクノロジー(本社:東京都中央区、代表取締役:秋元 博路)
※6 金型を通して樹脂と繊維を引き抜きながら固化させ、一定断面の部材を連続出力する成形方法
【イメージ動画】