気候危機が刻一刻と悪化し、対応する時間も残りわずかになる中、議長国である日本は、大量の温室効果ガスを排出する石炭やガスなどの化石燃料開発を今でも積極的に推進しています。50%の確率で温暖化を1.5℃までに抑えるためには、新規の石炭、石油、ガス生産インフラやLNGインフラへの投資を今すぐやめなくてはなりません。特に排出量が大きい石炭に関しては、先進国においては2030年までの廃止が求められている一方、4月のG7環境大臣会合では具体的な石炭フェーズアウトの目標年を明示できていません。日本は議長国として、気候科学と国際社会の意見に真摯に耳を傾け、2030年までの石炭火力廃止を約束するべきです。
また、日本は昨年のG7首脳会合で合意された、「2022年末までに排出削減対策の講じられていない化石燃料エネルギーセクターへの政府による新規の国際的な直接支援を終了する」という約束を踏み躙り、ウズベキスタンにおける新規のガス事業など、現在も積極的に海外の化石燃料事業に融資しており、2020年から2022年までの化石燃料の公的資金支援額は日本はG7の中でカナダについて2番目に大きいものとなっています。
さらに日本は、「脱炭素化」の手段として、火力発電所におけるアンモニア、水素、バイオマス混焼や炭素回収・貯留技術(CCS)といった誤った気候変動対策を推進し、アジア各国の「現実的な」脱炭素の手段という名目で資金支援や技術支援を進めています。しかしこれらの技術は求められている規模で排出削減ができるわけでもなく、コストも高く、技術的な障壁もあり、エネルギーセクターで大規模に利用することは極めて困難です。このような不確実な技術を言い訳に、日本はアジア各国で化石燃料温存を働きかけていることになります。
アジア全体での脱炭素化を遅らせる日本の政策に対して全世界で挙げられている反対の声は、広島でのアクションを含め20カ国で実施された約50ものアクションが如実に示しています。「聞く力」を売りにする岸田総理は世界同時アクションで示された世界中からの反対に耳を傾け、脱化石燃料に真剣に取り組むべきです。これらの声には、新規のガス事業への融資停止だけではなく、2030年までの石炭火力廃止、水素やアンモニア混焼などの化石燃料に依存した技術、LNGやCCSへの反対の声も含まれます。
Asian Peoples Movement on Debt and Development (APMDD) の共同コーディネーターでAsian Energy Network (AEN) の呼びかけ人であるLidy Nacpilは「日本や他のG7諸国が、迅速で公平かつ公正なエネルギー転換を目指す私たちの戦いを邪魔し、私たちを化石燃料に縛りつけることを許すわけにはいきません。新たな化石燃料ガスへの投資は、アジアの私たちのコミュニティにとって大きな損失を意味します。」とコメント。
フィリピンの環境団体Center of Energy, Ecology and Developmentの事務局長であるGerry Arancesも「ガスを推進するのはアジアのエネルギー安全保障と経済発展のためだと、日本が主張したければすればいいでしょう。しかし、その真の目的は化石燃料に執着し、他国も道連れにさせることであるのは明白です。公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)を含む日本の金融機関は、パリ協定以降、東南アジアにおいてガスに最大の融資を行ってきました。フィリピンにおいて、日本は私たちフィリピン国民を迅速なエネルギー移行から遠ざけ、生物多様性の中心地であるヴェルデ島海峡ー私たちの『海のアマゾン』ー近辺でガスやLNG事業を支援することで生態系破壊に関与しています。過去10年間、日本がフィリピンや東南アジアで石炭を推進したことだけでも言語道断ですが、私たちフィリピン国民の再生可能エネルギー100%の未来をまた日本がガス推進によって奪い取るなどというこは、私たちが許しません。」とコメントしています。
インドネシア環境フォーラム(WALHI/ FoEインドネシア) 空間計画及びインフラ問題に関するキャンペーンマネージャーDwi Sawungは「『公正なエネルギー移行パートナーシップ』(JETP)など、エネルギー移行を支援する国際的な枠組みに資金を提供するG7諸国は、ガス、CCUS、石油・ガス精製、混焼(アンモニア、水素、バイオマス)など、パリ協定の1.5℃目標に整合しない誤った気候変動対策に資金が流れないよう手を尽くす必要があります。資金は大企業の救済ではなく、気候変動から人びとと地球を救うためにあるべきものです。G7はまた、気候変動及び/またはJETP等エネルギー移行枠組みでの支援事業によって影響を受ける人々が損害を被らないようにしなければなりません。すべてのJETP事業は、汚職や誤った方向への投資を防ぐため、透明性、説明責任、包括性が確保されなければなりません。」とコメント。
Oil Change Internationalのアジアプログラムマネージャー、Susanne Wongは「日本の化石燃料まみれのエネルギー戦略を止め、いかに日本が議長国のG7が化石燃料まみれかを暴露するため、世界規模のアクション週間として、20もの国々でアクションが行われています。岸田首相は、市民と地球環境の健康と安全よりも、日本企業の利益追求のために日本のG7議長としてのポジションを利用しています。日本は、化石燃料ガスやその他化石燃料関連技術を推し進めることで、世界のエネルギー移行を邪魔しないでください。岸田首相と他のG7首脳は、すべての化石燃料に対する公的資金を終了し、再生可能エネルギーに投資をシフトするという公約を守り、さらに踏み込んだ公約をするべきです。それこそが平和と安全保障に繋がる最も確かな道です。」とコメントしています。
国際環境NGO FoE Japan 開発金融と環境キャンペーナーの長田大輝は「アジアには再生可能エネルギーポテンシャルがほとんどないため、化石燃料の拡大が脱炭素化の「現実的」な方法であると主張しています。しかし日本を含むアジア諸国には膨大な再生可能エネルギーのポテンシャルが存在する以上、この主張は完全な誤りです。このような利己的かつ企業主導のアジア脱炭素戦略は、エネルギー安全保障、経済的なコスト、財務リスク、排出削減の面で非合理的であるだけでなく、日本自身を孤立させ、今日の世界同時アクションでこれ以上ないほど明確になったように、日本を世界中の批判に晒しています。」とコメント。
国際環境NGO 350.org Japan ジャパンチームリーダー代行の伊与田昌慶は「G7広島サミットは、気候と平和をまもるため、岸田首相が化石燃料との訣別を宣言するまたとない機会です。日本の化石燃料中毒は、グリーン雇用の創出、大気汚染の改善、エネルギーコストの低減といった機会を失わせるばかりか、アジア・アフリカにおける脱炭素の阻害、ロシアの戦争への加担をも意味します。G7広島では、国内外の市民が求めるように、化石燃料フェーズアウトと持続可能な再生可能エネルギー100%への平和で公正な移行を打ち出さなければなりません。そして、サミット終了後にはエネルギー基本計画の見直しに着手し、より野心的な排出削減目標と政策措置の検討を緊急に進める必要があります」とコメントしています。」とコメントしています。
Mighty Earthの日本代表ロジャー・スミスは「日本は”汚いエネルギー”を好み、日本の企業の利益のために、他のG7諸国にもそういったエネルギーを推そうとしていることは明白です。日本は、気候変動分野におけるリーダーを偽り、”グリーントランスフォーメーション”を推進していますが、化石燃料インフラを延命させるだけの汚い技術を”グリーン”だと主張しているだけです。日本は発電のために木質バイオマスを求めていますが、それが北アメリカの原生林を破壊し、野生生物の生息をリスクに晒しています。それよりも悪い日本の政策が、他のアジア諸国を誤った気候変動対策に”ロックイン”-依存させてしまいます。日本が”汚いエネルギー”との蜜月関係を終わらせる時は今です。」とコメントしています。
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