よく「中国四千年の歴史」と言われるが、1911年の辛亥革命(清朝の滅亡)以前と以後は別の世界と見なさなければならない。辛亥革命以前の中国は様々な王朝(異民族含む)が大陸を支配しては次の王朝に滅ぼされを繰り返していた。皇帝は天命を受けて大陸及び周辺の国々を支配しあるいは臣従させており、それが世界のすべてだった。辛亥革命によって歴史上初めて「国家(中華民国)」となった中国は、欧米列強による外圧、文化侵略にさらされ、やがて内部から「中国共産党」という怪物を生み出してしまうこととなった。
中国共産党の成立は1921年とされている。世界初の社会主義国家ソビエト連邦の初代指導者ウラジミール・レーニンが創設したコミンテルン(共産主義インターナショナル)の指導下にあったためその影響は少なからずあったはずだが、1917年のロシア革命以前から中国国内における共産主義の萌芽はあり、完全に支配下にあったわけではない。
結果的に中国共産党は、第二次大戦後に大戦で疲弊した中華民国を台湾に追いやり1949年に大陸に中華人民共和国を成立させたわけだが、問題は中華民国の歴史はもちろん、清朝以前の歴史も「中華人民共和国の歴史」として同一視していることである。
現在、経済及び軍事において極端なまでの拡大政策を行い、日本をはじめとする隣国はもちろん、世界中に脅威を与えている中華人民共和国。その拡大政策の根本は「歴史上の最大版図を取り戻す」というのが大きなモチベーションであると思われる。それを念頭に置けば、軍事侵略ののちに民族弾圧および浄化の被害を受けている東トルキスタン(ウイグル)、チベット、南モンゴル、香港の現状は彼らにとっては当然のことであるし、南沙諸島の侵略にしても「失った領土を取り戻している」に過ぎない。
日本史上、国土が他国の領土になったことは一度もないが、彼らの理屈に従えば「尖閣諸島は日本が不法に占拠している」となるし、沖縄や北海道も「先住民を日本人が征服して日本の領土とした。それを先住民の手に取り返す」となるわけである。
現在日本を抜いてGDP世界第二位まで上り詰めた中国。その経済力と世界一を誇る人口を利用し、あの手この手で日本国内に手を入れかき回そうとしている事実に日本人は一刻も早く気付かねばならない。
本書は、そんな中国に対し日本は今後どう対峙すべきかを、毛沢東から習近平までの百年強を俯瞰した「中国共産党通史」から導き出そうという試みである。
「彼を知り己を知れば百戦殆からず」は古代中国・孫子の兵法であるが現代社会にも当然通じるもので、ぜひ「世界の脅威」である中国共産党を理解し、現実の日本が極めて危機的状況にあることを実感してほしい。
【著者】小滝 透(こたき とおる)
ノンフィクション作家。金沢大学中退後サウジアラビア・リヤード大学に留学、アラビア語とイスラム教を学ぶ。主として、宗教・歴史・政治を対象に著作活動を行う。
著書に『ムハンマド』(春秋社)、『アメリカの正義病、イスラムの原理病』(春秋社)、『神の世界史三部作・イスラム教、キリスト教、ユダヤ教』(河出書房新社)等多数。近著に『中国から独立せよ』(集広舎)がある。
第二回・第九回毎日二十一世紀賞受賞。
【書籍情報】
書名:中国共産党──毛沢東から習近平まで 異形の党の正体に迫る
著者:小滝透
仕様:46判並製・328ページ
ISBN:978-4802401531
発売:2022.04.06
本体:1800円(税別)
発行:ハート出版
書籍URL:https://www.amazon.co.jp/dp/4802401531/