パキスタン洪水、約半年経過:1千万人以上、未だ安全な水が利用できず【プレスリリース】

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水道から安全な水を飲む6歳のナフィサさん。(パキスタン、2023年3月3日撮影) © UNICEF_UN0804230_水道から安全な水を飲む6歳のナフィサさん。(パキスタン、2023年3月3日撮影) © UNICEF_UN0804230_

【2023年3月21日 イスラマバード(パキスタン)発】

パキスタンを襲った壊滅的な洪水から6カ月が経過しましたが、被災地で暮らす子どもを含む1,000万人以上の人々は依然として安全な飲み水が手に入らず、病気になる恐れのある水を飲み、使用するしかほかに手だてがありません。

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洪水以前から、同国の飲料水供給システムは人口の92%が利用できていましたが、安全とされる水はわずか36%しかなかったと考えられています。洪水により被災地のほとんどの水道システムが被害を受け、250万人の子どもを含む540万人以上が、池や井戸の汚染された水に頼らざるを得なくなりました。

ユニセフ(国連児童基金)パキスタン事務所のアブドゥラ・ファディル代表は「安全な飲み水は特権ではなく、基本的人権です。しかし、パキスタンでは毎日、何百万人もの女の子や男の子が、予防可能な水系感染症やそれに伴う栄養不良と勝ち目のない闘いを繰り広げています。私たちは、安全な水やトイレ、重要な衛生サービスを、最も必要としている子どもたちや家族に提供するために、ドナーの継続的なご支援を必要としています」と述べています。
 

上腕計測メジャーを使った栄養検査で「赤色」となり、「重度の栄養不良」と診断された子ども。(2023年2月27日撮影) © UNICEF_UN0804284_上腕計測メジャーを使った栄養検査で「赤色」となり、「重度の栄養不良」と診断された子ども。(2023年2月27日撮影) © UNICEF_UN0804284_

安全な飲み水やトイレの欠如が長期化していることに加え、脆弱な家族が引き続きよどんだ水の近くで生活していることが、コレラ、下痢、デング熱、マラリアといった水系感染症のまん延を招いています。同時に、洪水被災地では屋外排泄が14%以上増加しています。さらに悪いことに、適切なトイレがないことは、屋外で排泄する際に恥ずかしさを強く感じたり、暴力を受けたりするリスクがあることから、とりわけ子どもや10代の女の子、女性に影響を及ぼしています。

栄養不良の根本的な原因は、安全でない水と不衛生な環境です。また、下痢症などの関連する感染症により、子どもたちは必要な栄養素を摂取することができません。さらに、栄養不良の子どもたちは、すでに免疫力が低下しているため、水系感染症にかかりやすく、栄養不良と感染症の悪循環が繰り返されるだけです。悲惨なことに、世界では子どもの死因の3分の1が栄養不良であり、低栄養の半数は、安全な水や適切な衛生設備、衛生的な環境などが利用できないことによる感染症に起因しています。パキスタンでは、栄養不良が子どもの死因の半分に関係しています。洪水被災地では、150万人以上の子どもがすでに重度栄養不良に陥っており、安全な水と適切な衛生設備がなければ、その数は増える一方です。
 

ユニセフが設置した給水タンクで、石けんを使って手を洗う女の子。(パキスタン、2023年3月11日撮影) © UNICEF_UN0804225_ユニセフが設置した給水タンクで、石けんを使って手を洗う女の子。(パキスタン、2023年3月11日撮影) © UNICEF_UN0804225_

ユニセフは、気候変動によるこの緊急事態が発生した初日から、パートナーと共に被災地で活動しています。洪水直後、ユニセフは数多くの手押しポンプと貯水装置を設置しました。この6カ月間で、ユニセフとパートナーは、約120万人の子どもたちとその家族に安全な飲み水を提供し、130万人以上の人々に石けんなどが含まれる衛生キットを配布しました。また、ユニセフは、45万人以上の人々に水を供給する設備の復旧や再建を支援しました。

3月22日の「世界水の日(World Water Day)」を前に、ユニセフは政府、ドナー、パートナーたちに対し、緊急に以下のことを呼びかけています。

  • 安全な飲み水とトイレを再び利用できるようにするため、リソースを割り当てる。
  • 気候変動に強い安全な飲み水の供給設備、およびソーラーポンプシステムのような再生可能エネルギーの技術の利用に投資する。

「パキスタンの子どもたちの声とニーズを何としても優先させ、洪水後の復興・レジリエンス(回復力)向上計画の中心に子どもたちを据えることが不可欠です」とファディル代表は述べています。

壊滅的な洪水から6カ月が経過した今も、960万人以上の子どもたちが、必要な社会サービスを利用することができていません。ユニセフは、洪水の被害を受けた女性と子どもたちに命を守る支援を提供するため、現在1億7,350万米ドルの資金を要請していますが、寄せられた資金はまだ50%に達していません。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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