子どものゲーム依存や勉強法に悩む保護者321名がセミナーに参加【臨床心理士が解説】春休み前に知っておきたい、ゲーム依存の予防と対策とは

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アダプティブな対話式 ICT 教材の開発と提供を行う株式会社すららネット(本社:東京都千代田区、代表取締役:湯野川孝彦)では、2023年3月11日(土)10時より、『【臨床心理士が解説】<春休み直前企画>心理学から紐解く ゲーム依存予防・対策/自発的に勉強する子の育て方講座』をオンラインで開催しました。
セミナーには、すららを利用中のお子さまがいる保護者の方321名が参加。すららネット「子どもの発達支援室」の臨床心理士の道地真喜から、ゲーム依存や家庭学習に関するお困りごとへの対策法を紹介しました。
WHOが「ゲーム障害」として警鐘を鳴らすゲーム依存とは
ゲーム依存について、世界保健機構(WHO)が2019年に、ゲームのやりすぎで日常生活が困難になる「ゲーム障害」として正式に国際疾病に認定しています。セミナーでは、最初に健康への被害も心配されるゲーム依存の初期症状やなりやすい子どもの特性の解説、保護者の子育てスタイルについて解説しました。

ゲーム中毒の初期症状

  • 嫌なことを忘れるためにゲームをする
  • ゲームをするために睡眠や食事、またはお風呂に入る時間を削る
  • ゲームを取られるとイライラしたり暴言を吐く など

ネット依存やゲーム障害になりやすい子どもの特性
子どもが持つ性格や環境の変化等は、ネット依存やゲーム障害に大きくかかわってくる可能性が高いと言われています。

・性格と精神面

  • 実年齢より幼い
  • 気分の浮き沈みが激しい
  • アイデンティティの拡散(自分が分からない)
  • 自己評価が低い
  • 優柔不断
  • 自制心がない
  • 欲求不満
  • 耐久性が低い
  • 好奇心が旺盛
  • 社交性が欠如している
  • 極度の人見知り

・環境面

  • 家族間での争いが多い
  • 親子間で話す機会が少ない
  • 愛情表現されてない
  • 学校での成績が低迷している
  • モチベーションが低い

・生物学的な面

  • 神経伝達物質が欠如している(ADHD、ASDなど)

保護者の子育てスタイル
保護者の子どもに対する対応が子どものゲーム依存には影響すると道地は話しました。そこで道地の臨床経験から保護者の子育てスタイルを4つに分類。その中で、理想は子どもの気持ちを考慮して話し合いの場を持つ「民主的スタイル」で、避けて欲しいのがしつけを避け欲しいものは何でも与える「消極的スタイル」であると解説しました。

ゲーム依存の予防には「ルールの徹底と守らなかった時の決まり事」
上記を踏まえて、ゲーム依存の予防法として、親子関係が良好であることを前提としたルールの徹底と守らなかった時の決まり事を説明しました。「子どもはルール、役割分担が明確に決まっているとよりスムーズに行動することができます」と道地はアドバイスしました。

【ルール/守らなかった時の決まり事の例】
・ゲームをやめた時に暴言を吐かない
・朝・昼・晩ごはんの時はゲームを終了し、ダイニングテーブルで食べる
・毎日決まった時間にお風呂・歯磨きをする
・友達とオンラインゲームをする時は、事前に誰と何時までするかを報告する
・寝るときはゲームをリビングに置く
・ゲームをする前に運動を〇〇分する(家の中でもよい)
・ゲームをする前に、宿題やお手伝いなどのやるべきことを終わらせる

無制限にゲームをやろうとするのをやめさせたい!保護者のお悩みに臨床心理士がズバリ回答
子どものゲームとの付き合い方に関する保護者の方からのお悩みに対して、子どもの様子をよく観察し、年齢や特性に合わせた対応が重要とであるとし、具体的な対策法をアドバイスしました。

【お悩み】放置していたら無制限にゲームがしたい様子です。ご褒美としてゲームをやらせてあげたとしても、もっとゲームがしたいとなりますが、できればやらせたくありません

【回答】ゲームをやらせないことではなく、自己コントロールを学ばせる
「ゲームはもともと内発的動機付けができやすいように作られているものなので、制限をしなければやりたくなるのは当然のこと」と説明し、「ゲームをやらせないことではなく、自己コントロールを学ばせることが大切」と回答しました。
その際に役立つ考え方として「行動のABC」について紹介しました。行動のABCとは、A先行条件(~の時に)、B行動(~したら)、C結果(~だった)の枠組みで考える行動の分析方法です。Bの行動によって起きたCの結果によって、Bの行動が強まったりなくなったりすることがわかっています。

「これは、子どもにゲームをする時のルールを伝えて、子どもがルールを守ったため、C「結果」で子どもを褒めてあげたという行動の流れです。
この場合、子どもは「ルールを守ったら褒めてもらえた、またゲームをさせてもらえる」と感じ、B「行動」のルールを守ることが強化されます
「これにあてはめてみた場合、Aルールを伝えた、Bルールを守ったので、Cルールを守れて偉かったとほめ、次も安心してゲームができると伝えると、Bのルールを守ることが強化されるというのが理想的です。しかし、問題はBのルールを守らなかった時です。この時、Bの問題行動を正したくて、Cで怒ることが多いと思いますが、これは短期的効果しかないことが行動心理学的にわかっています。Bの好ましくない行動を起こした時は、Cでゲームの特権を無くすと、子どもの好きなものを取り除くことです。こうすることによりBの行動を減らすことが期待できます」と具体的にアドバイスしました。併せて、「この方法で効果があるのは、普段いい行動をしている時にほめている関係性ができていることです」と注意を促します。好ましくない行動を正すには、日ごろから子どもの良い行動を親がほめる習慣をつけておくことが重要と解説しました。

自発的な自宅学習を促すなら子どもの特性を知り、子どもに合わせた勉強法を
セミナーの後半では、「自発的に勉強する子の育て方」をテーマにして、子どもの特性にあった勉強方法や褒めることの重要性などを解説しました。
「子どもの特性や成長に合わせたサポート」については、子どもの特性によって勉強方法を変えることをアドバイスしました。

子どもの特性を知るために、子どもの発達支援室では、「KABC-Ⅱ」という知能検査を提供しております。知能検査では唯一、基礎学力を計る学習習得度の評価も取り入れており、学習支援を目的として「認知尺度(認知処理力)」と「学習尺度(基礎学力)」を測定します。検査結果から得意・不得意を発見し、どのような勉強方法がお子さんに合っているのか学習支援の方法や教材のアドバイス、「すらら」利用者にはお子さんに合った学習プログラムにアレンジするなど結果を踏まえた家庭学習支援を提案いたします。

認知特性には「継次処理」と「同時処理」の2つがあります。「継次処理」は順に1つずつ情報を処理する力で、「同時処理」は複数の情報を全体的(空間的)に処理してから、部分的な処理をする力です。
「継次処理」が優位な子どもは、順を追って説明をすると理解がしやすいので、学校の授業のような教え方が向いています。
反対に「同時処理」が優位な場合、全体的な形を捉えて情報を処理するため、図や表で説明をすると理解が早く進みます。例えば、間違い探しフラッシュカードなどで、どこが間違っているか細部まで見る力を鍛えたりすると効果的です。

「すごい!」「賢い!」はNG? 効果的な声がけで自主性とやる気を後押し

「子どものよい行動を促進する効果的な声がけ」については、努力や過程を褒めることが重要と解説しました。能力や結果を褒めてしまうと、失敗した時に「自分に能力が足りないからだ」と思ってしまったり、集中力が続かなかったり勉強を嫌がってしまう可能性があると説明しました。

【お悩み①】少し間違えただけでへそを曲げてしまい勉強できなくなってしまいます

【回答】「すごい」「賢い」はNG。努力や過程を褒めて、失敗することへの恐怖感をなくしていく
失敗することを極度に嫌がる子どもには、「賢い」「すごい」「やればできる」など能力や結果を褒めることは避けるようにと説明したうえで、改めて努力や過程を褒めることの大切さを解説しました。

【お悩み②】子どもへの声がけは具体的に何をしたらいいのでしょうか

【回答】子どもを観察して増やしたい(好ましい)行動は何かを見つける
まずは日常生活で出来ていることに着目し、褒める時は具体的に何を頑張ったかについて補足することが大切であると説明しました。

【お悩み③】計算でパニック、漢字の間違い指摘で癇癪を起してしまいます

【回答】わざと間違えた答えを保護者が提示し、子どもが間違いを指摘できる環境をつくる
指摘されるのは子どもにとって効果的ではないと説明し、わざと間違えた答えや問題を出して子どもが指摘できる環境をつくることがおすすめだとアドバイスしました。
また不安に感じた時にどのような行動をとるかを観察し、対策を考えていくことも大切だと解説しました。

【臨床心理士が解説<春休み直前企画>心理学から紐解く  ゲーム依存予防・対策/自発的に勉強する子の育て方講座 開催概要】

■テーマ:【臨床心理士が解説】<春休み直前企画>心理学から紐解く  ゲーム依存予防・対策/自発的に勉強する子の育て方講座
■日時:2023年3月11日(土)10:00~11:30
■対象:すららを利用中のお子さまがいる保護者
■講座内容:ゲーム依存や自発的な勉強に関するお困りごとへの対策法の紹介
■講師プロフィール:
すららネット 臨床心理士 道地真喜(どうち まき)

カリフォルニア州立大学院(修士)教育学
カリフォルニア州私立大学院(博士)心理学
カリフォルニア州臨床心理士免許
カリフォルニア州での臨床経験約10年
ASDのお子様向けのABAセラピー、3歳から18歳を対象とした心理検査、 認知行動療法、プレイセラピー、大人の鬱、不安症のカウンセリングを主に実施。アメリカでの臨床経験を活かし、(株)すららネットにて心理検査、カウンセリング、保護者向けのペアトレーニングなどに従事。
■司会進行:すららネット 子どもの発達支援室 室長 佐々木 章太

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