再生医療用細胞製造プロトコルをAI×ロボットを用いて自動最適化に成功した成果を論文発表

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 エピストラ株式会社(所在地:東京都港区、代表者:代表取締役CEO 小澤陽介、以下エピストラ)は、国立研究開発法人理化学研究所様(所在地:埼玉県和光市、代表者:理事長、五神真、以下理研)とのロボティック・バイオロジー・インスティテュート株式会社様(所在地:東京都江東区、代表者:代表取締役社長、松熊 研司、以下RBI)の三者での共同研究グループで細胞培養の条件検討を自律的に試行錯誤するロボット・AI システムを開発し、実際に再生医療で用いられる細胞培養プロトコルを改善することに成功しました。
 本研究の成果は、科学雑誌『eLife』(6月28日付(日本時間6月28日午後4時)に掲載されます。

■共同研究の概要と成果
 分化誘導や細胞移植を伴う再生医療においては臨床グレードの細胞を安定して大量に製造する必要がありますが、培養者の手技の差や暗黙知に起因して効率的な技術移転が難しいことが知られており、研究開発における重要な課題の一つになっています。
 共同研究グループでは、滲出型加齢黄斑変性を含む網膜色素上皮(RPE)不全症の再生医療において重要な工程である、iPS 細胞から網膜色素上皮細胞(RPE 細胞)への分化誘導を対象として、高精度な生命科学実験動作が可能なRBIの実験ロボット「まほろ」と当社の人工知能(AI)ソフトウェア「Epistra Accelerate」を組み合わせてプロトコル自動最適化の実証実験を行いました。
 理研の保有する細胞培養プロトコルを最適化対象として、Epistra Acclerateを用いて探索するパラメータを7種選択し、1ラウンド(40日間)で実施する実験パラメータ48条件を計画しました。ラウンド毎の完了後に各条件のRPE細胞の収率をEpistra Acclerateを用いて評価解析して次回以降のラウンドの計画の計画を行いました。合計で3ラウンド(144条件)の実験を半年間掛けて行うことで、これまでで最も高い評価値(91%: RPE細胞の収率、人間の実験者による実験での実績を含む最も高い値)を得る事に成功しました。
 以上のことから、実験ロボットと当社の実験自動最適化AI「Epistra Accelerate」を組み合わせたシステムにより、iPS 細胞からRPE 細胞への分化誘導効率を高める培養条件を人間の介在なしに自律的に発見し、細胞培養分野における自律実験が可能であることを示しました。
 本研究の成果は「専門家の手技に依存することなく、ロボットとAI のみで専門家と同等の高品質な結果を得る条件の探索に成功した」と捉えることができます。技術移転が叶わずに共有されてこなかった「匠の技」を広く世界に開放するための一つの方法論になりえると期待できます。

※:本研究は、理化学研究所運営費交付金(生命機能科学研究)で実施し、科学技術振興機構(JST)「未来社会創造事業」の「探索加速型・共通基盤領域(運営統括:長我部信行)」における研究課題「ロボティックバイオロジーによる生命科学の加速(研究代表者:髙橋恒一)」、日本医療研究開発機構(AMED)再生医療実現拠点ネットワークプログラム「疾患・組織別実用化研究拠点(拠点A)」の「視機能再生のための複合組織形成技術開発および臨床応用推進拠点(拠点長:髙橋政代)」による支援および新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務により行われました。

■実験自動最適化システムEpistra Accelerate
 ライフサイエンスの研究開発では、手作業での実験と試行錯誤の繰り返しを要因とした様々な課題が存在します。 AIによる自動実験最適化システム Epistra Accelerateにより、これまでよりも少ない試行回数で目的とする最適条件を発見できます。
 当社独自開発の自動実験計画AIは、ベイズ最適化技術をベースとした当社独自のアルゴリズムを実装した、ライフサイエンスの問題を解くために強化したAIです。ライフサイエンスの問題には標準のベイズ最適化技術を適用する上で3つの問題(高次元・高ノイズ・高コスト)があり、独自アルゴリズムによりこれらを解決します。
 Epistra AccelerateはRBI、理研との共同研究で熟練した匠の技を超える分化効率を達成するプロトコルを自動的に探索することに成功しました。実験ロボットがある環境だけでなく、人の実験者が行う実験プロトコルの最適化にも対応しており、バイオ素材、食品、製薬などの大手企業への導入が進んでいます。

<ウェブサイト>
https://www.epistra.jp/solution

■論文の情報
<タイトル>
Robotic search for optimal cell culture in regenerative medicine

<著者・所属機関>
Genki N Kanda1,2,3*†, Taku Tsuzuki4†, Motoki Terada1,5, Noriko Sakai1,5,
Naohiro Motozawa1, Tomohiro Masuda1,5, Mitsuhiro Nishida1,5,
Chihaya T Watanabe4, Tatsuki Higashi4, Shuhei A Horiguchi4, Taku Kudo3,
Motohisa Kamei3, Genshiro A Sunagawa1,6, Kenji Matsukuma3, Takeshi Sakurada4,
Yosuke Ozawa4*, Masayo Takahashi1,5,7, Koichi Takahashi2,8,9*, Tohru Natsume3,10*
(*共同筆頭著者、#責任著者)

  1. Laboratory for Retinal Regeneration, RIKEN Center for Biosystems Dynamics Research, Kobe, Japan
  2. Laboratory for Biologically Inspired Computing, RIKEN Center for Biosystems Dynamics Research, Osaka, Japan
  3. Robotic Biology Institute Inc., Tokyo, Japan
  4. Epistra Inc., Tokyo, Japan
  5. VCCT Inc., Kobe, Japan
  6. Laboratory for Molecular Biology of Aging, RIKEN Center for Biosystems Dynamics Research, Kobe, Japan
  7. Vision Care Inc., Kobe, Japan
  8. Graduate School of Media and Governance, Keio University, Fujisawa, Japan
  9. Graduate School of Frontier Biosciences, Osaka University, Suita, Japan
  10. Department of Life Science and Biotechnology, Cellular and Molecular Biotechnology Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Tokyo, Japan

<雑誌>
eLife

<DOI>
10.7554/eLife.77007

■会社概要
会社名: エピストラ株式会社
英語名: Epistra Inc.
代表者: 小澤陽介、櫻田剛史
設立: 2018年3月
所在地: 東京都港区浜松町二丁目2番15号
Web: https://epistra.jp

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