WWFジャパン初の高緯度サンゴ保全活動を、四国南太平洋沿岸で展開 黒潮生物研究所との協働決定、協定書を締結

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公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下WWFジャパン)は、本日1月11日、公益財団法人黒潮生物研究所(高知県幡多郡、理事長:深田純子、以下黒潮生物研究所)とサンゴ保全の活動の協働に向けた協定書を締結しました。WWFジャパンは長年、沖縄県石垣島等でサンゴの保全活動を行なってきましたが、国内のサンゴを守る新たな取り組みの一つとして、高緯度サンゴ群集域のサンゴを対象とした活動を決定し、黒潮生物研究所と共に四国南太平洋沿岸(高知県、愛媛県、徳島県)での活動を展開していきます。

写真:協定締結式の様子(WWFジャパン)

【背景】
サンゴは世界の海洋面積のわずか0.2%未満ながら、海洋生物種の約25%の生息地として(注1)、海の生物多様性を下支えする重要な存在です。しかし、気候変動等の影響により、過去30年で消滅した世界のサンゴの割合は約50%、気温上昇を1.5℃に抑えられた場合でもサンゴ礁が減少する割合は約70~90%と推計されるなど(注2)、危機的な状況にあります。WWFジャパンは気候変動への適応の観点から、世界のサンゴ礁の分布限界よりも北に位置し、熱帯性・温帯性のサンゴの生息環境として貴重な存在である「高緯度サンゴ群集域」に着目し、保全価値の高いエリアでの活動を行なっていきます。高緯度サンゴ保全において地理的に特に重要で、黒潮生物研究所らの活動基盤のある四国南太平洋沿岸地域を選定し、今後の活動を協働して行なっていきます。

【本協定について】
両団体は高緯度サンゴ群集生態系の保全と持続可能な利活用に向けて協働することに合意しました。四国南太平洋沿岸(高知県、愛媛県、徳島県)を主たる活動地域とし、互いに協力しながら、発信、関係者との連携、教育・普及啓発活動、その他必要な活動を行ないます。本協定書は2023年1月11日より2026年6月末まで有効です。
 

写真:高知県土佐清水市のサンゴ(黒潮生物研究所提供)

WWFジャパン 事務局長 東梅貞義のコメント 

気候変動の影響や人間の活動によりサンゴの生息可能環境が急速に変化するなか、九州本土以北の高緯度サンゴ群集域、とりわけ四国南太平洋沿岸のサンゴは将来にわたって重要なサンゴの生息域となることが予測されています。今後、黒潮生物研究所をはじめ地域の自治体や事業者、住民の方々と協力し、高緯度サンゴ群集の保全に貢献できるよう、活動を検討・推進してまいります。皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

黒潮生物研究所 事務長 目﨑拓真氏のコメント 

四国の太平洋沿岸は、高緯度サンゴ群集域の中心で、気候変動による生態系の変化を知る上で重要な海域です。在来のサンゴ群集に加え、近年の気候変動によってサンゴの分布域が拡大しています。さらに、南方系のサンゴが加わるなど生態系の変化は大きく、オニヒトデによる食害や異常水温によるサンゴの死滅などそれらの頻度は増加しています。保全体制は整っていないため、WWFジャパンとここで協働することは、サンゴ礁保全の先駆的なノウハウを学ぶ良い機会であり、サンゴ保全体制の歴史がまだ浅い本海域の課題解決に資すると期待しています。

注1)https://www.wwf.or.jp/activities/lib/pdf_marine/coral-reef/cesardegradationreport100203.pdf
注2)https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2018/10/SR15_SPM_version_stand_alone_LR.pdf

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