すららネット、子どもの発達に悩みがある保護者208名にセミナー開催!親が知っておきたいことを専門家が解説。ポイントは「子どもの特性の理解」と「褒め方」

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アダプティブな対話式 ICT 教材の開発と提供を行う株式会社すららネット(本社:東京都千代田区、代表取締役:湯野川孝彦)は、2022年12月3日から12月9日まで障害者週間イベントを実施しました。イベントの一環として、2022年12月9日(金)に臨床心理士が解説する「発達が気になる子どもの学習と親の関わり方講座」を開催しました。
セミナーには、子どもの発達に悩みを持つ保護者208名が参加。すららネット「子どもの発達支援室」の臨床心理士の道地真喜から、セミナーに参加した保護者を対象に取得した事前アンケート調査をもとに、お困りごとへの対策法を紹介ました。
当講座はアーカイブ配信を行っております。ご希望の方はお申込みフォーム(https://forms.gle/janutFj1SDZ13u5A7)からお申込みください。
臨床心理士が解説、発達の特性がある子どものお困りごと対策法を紹介
事前アンケートでは「文字(漢字など)を覚えることが難しい」「字が汚い」など読み書きについての悩みが一番多く寄せられました。そのほか「文の内容を理解することが難しい」「記憶力が弱い」「ネット・ゲームがやめられない」という悩みも多くありました。セミナーでは、認知特性※の視点から見た得意・不得意のばらつきによる学習の遅れの解説や子どもの特性に合わせた計画の立て方、学習支援方法、子どもの自発的な行動を促す具体的なほめ方をお伝えしました。
道地は、発達の特性がある子どもの困りごと対策のポイントは2つあるといいます。1つ目は、子どもの特性を理解することです。子どもの特性に合わせて学習方法等を工夫することで、子どもにとってより勉強がしやすくなります。また勉強が嫌いな子はもともと勉強自体が嫌いではなく、勉強ができなくて怒られたり、自信をなくすことで勉強そのものが嫌いになってしまいます。まずは勉強を楽しいものだと感じてもらうことが大切です。2つ目に、子どもが自発的に行動できるよう促す『褒め方』です。ただ褒め言葉をかければいいのではなく、行動分析学や認知行動療法のエビデンスに基づいた褒め方は効果が期待できます。それを知っておくことで少なからず親の不安やイライラの軽減につながり、良好な親子関係への一歩となるだろうと道地は話します。
「発達の特性がある子どもも含め、順序立てて教わるのが得意で耳から得た情報で理解が深められる傾向がある『継次処理』と、全体を踏まえて考えることが得意で目から見た情報で理解が深められる傾向がある『同時処理』があり、それぞれに向いている勉強方法があります」と道地は前置きし、それぞれのお困りごとについて下記学習方法を提案しました。

※五感から得たさまざまな情報を記憶し頭の中で整理・理解する能力のこと

<お困り事①>文字(漢字など)を覚えることが難しい ➾ 声を出しながら書く/クイズ形式で覚える
●継次処理の学習方法:声を出しながら書く
「継次処理」は順序立てて教わるのが得意で、耳から得た情報で理解が深められる傾向があるため、漢字を覚える際は書き順に従い漢字の要素を声に出して唱えながら書く勉強方法を取り入れると覚えやすくなります。

●同時処理の学習方法:クイズ形式で覚える
「同時処理」は全体を踏まえて考えることが得意で、目から見た情報で理解が深められる傾向があるため、漢字の正解が書かれたカードを見せた後、間違えがある漢字を見せて、どこが間違っているかクイズ形式で出題する方法で勉強をすると覚えやすくなります。

子どものつまずきを理解し、つまずきにあった支援を行いましょう
漢字の書きのつまずきには様々な原因があります。上記の方法以外にも『イラストと関連付けさせる』『漢字足し算・穴埋め』『ジオボード』『しり文字』など様々な方法があるので試してみてください。

<お困り事②>文の内容を理解することが難しい ➾ 段落を細かく区切り分からない単語を確認する/あらかじめ物語のあらすじを説明
●継次処理の学習方法:段落を細かく区切り、分からない単語を確認しながら読む
「継次処理」は文章を順序・段階的に読むことが得意なので、段落を細かく区切り分からない単語を確認しながら読み進めていくことがおすすめです。また読んだ内容を録音して聞くことで情報の整理がしやすくなります。

 ●同時処理の学習方法:あらかじめ物語のあらすじを説明
「同時処理」は全体的な把握が得意なので、あらかじめ物語のあらすじを説明し、登場人物などを相関図で書くとよいでしょう。

学習障がいが中度以上、高学年の子どもには合理的配慮も検討してください
学習障がいの可能性がある子どもは、KABC-IIやWISC-Ⅴなどの知能検査を受け、診断結果を基に子どもの支援方法を検討するのも1つです。また苦手を克服するのではなく、障がいのある子どもの特性に応じて対応する「合理的配慮」を優先させることも視野に入れてください。例えば、聴覚過敏の子どもへは机・いすの脚に緩衝材をつけて雑音を軽減、学習障がいの子どもには入学試験で別室受験・時間延長等を許可する等が挙げられます。

<お困り事③>記憶力が弱い ➾ 子どもの体験を通して覚える(エピソード記憶)
発達障がいの子どもの特長として、ワーキングメモリ※が弱く長期記憶が苦手なことがあります。一方で情報処理能力が優れている特長もあります。情報処理能力も子どもによって異なるため、特性に合わせた支援が必要です。長期記憶に定着させるためには、個人の体験にまつわる記憶「エピソード記憶」を活かした学習が効果的です。実例として、語彙力が弱い小学校4年生の子は「好きな人が肋骨を折った」というエピソードから「肋骨」という単語を覚えました。このように実際に起こったエピソードから記憶が定着します。例えば、学校で習ったことを話してもらうなどしてエピソード記憶として定着させることができます。
その他の対策法としては、「1度に覚える量を制限して繰り返し勉強する」「子ども自身が説明、自分なりのやり方をつくる」等の方法があります。

※ワーキングメモリ:認知心理学で用いられる構成概念で、作業記憶、作動記憶と呼ばれることもある。脳の前頭前野の働きの1つで、作業や動作に必要な情報を一時的に記憶し処理する能力。

<お困り事④>集中できない ➾ 短い時間でも“集中できた”成功体験を積む
「集中できない」というお悩みもよくいただきます。そもそも子どもと大人では時間の感じ方が異なり、2歳児にとっての2分は大人の2時間に相当します。集中できないのは当たり前のことであり、そのなかで子どもの集中力を向上させるためには集中できたことを褒めてあげることが大切です。同時に、できなかった時に責めないことも重要です。可能であればラジオ体操やトランポリン、階段の上り下り等の有酸素運動を30分・週4回以上するのも集中力向上によいでしょう。

<お困り事⑤>ネット・ゲームがやめられない ➾ ルールの徹底とルールを守らなかった時の決まり事で予防
ネット依存・ゲーム障害は深刻な社会問題となっています。「ゲーム障害」は2019年に世界保健機関(WHO)において正式に疾病と認定されました。ネット依存・ゲーム障害の症状となりやすい子どもの特性として、鬱や不安症、ADHDなどの特性・気質を持つ子がなりやすいと言われています。ネット依存・ゲーム障害は神経伝達物質が効率的に伝わらなかったり、脳内のドーパミンなどの物質の不足が要因とされています。
ネット依存・ゲーム中毒になる前に、ルールを設けて制限し予防することをおすすめします。ルールの例は以下の通りです。

<ネット依存・ゲーム中毒に対するルール例>

  • ゲームをやめた時に暴言を吐かない
  • 朝、昼、晩は必ずゲームをやめてダイニングテーブルで食事をする
  • 毎日必ずお風呂・歯磨きをする
  • 友人とオンラインゲームをするときは事前に誰と何時までするかを報告
  • 寝る時はゲームをリビングに置く
  • やるべきこと(宿題・お手伝い)はゲームの前に終わらせる など

行動分析学『ABC分析』の活用も効果的
行動分析学の『ABC分析』に基づき『ルールを守ればゲームができる』ことを強化することで、ゲーム時間を減らす効果が期待できます。ABC分析とは、A先行条件(~の時に)、B行動(~したら)、C結果(~だった)の枠組みで考えるものです。
下図を例にすると、子どもが勉強をしないのでゲームを取り上げた(A:先行条件)、子どもが暴言を吐いたり、教科書を破いたりした(B:行動)、うるさいのでゲームを渡した(C:結果)とします。このとき、子どもは「暴れればゲームをさせてもらえる」という経験をします。暴れればゲームができると期待を持つことから、B「行動」をもっとしよう(強化)とする心理が働きます。このような状況にならないためには、最初からルールを徹底して制限し、それができたら必ず褒めてあげることで、「ルールを守ればゲームをできる」ことが強化されます。

 

 

<お困り事⑥>今までできていたことができなくなってしまう ➾ 感情のラベリングや共感してあげることで不安を解消する
このような子に対しては、何が不安かを言葉に出させることで感情のラベリングを行ってあげるのがよいでしょう。感情のラベリングとは、今の自分自身が感じていることを言語化して表現することを指します。また解決策の提示よりも傾聴することを優先し、『そうだよね、不安になるよね』と共感することが大切です。

<お困り事⑦>間違いを指摘されることを嫌がる ➾ 結果ではなく過程を褒める
失敗やミスを嫌がるのは、特性に関係なく多くの子どもが思うことです。この時「少し出来ていても100でなければ意味がない」という心理が働いており、この認知の歪み(考え方のクセ)を解消してあげることが大切です。
普段の声掛けのなかで過程を具体的に褒めましょう。例えば「この方法はよかったね」と言ってあげたり、子どもが「また間違えちゃった」などネガティブなことを言ってきた時は「ここで間違えたことで次は同じ間違いをしないように対策が練れるね」などポジティブな言葉で返してあげることで、子どもの認知の歪み(考え方のクセ)を変えていくことができます

【「発達が気になる子どもの学習と親の関わり方講座」 開催概要】
■テーマ:「 発達が気になる子どもの学習と親の関わり方講座」
■日時:2022年12月9日(金)10:00~11:30
■対象:「すらら」で学習中または「すらら」学習を検討いただいた、発達が気になるお子さまがいる保護者
■講座内容:発達障がいに関するお困り事をメインとした対策法の紹介
■講師プロフィール:

すららネット 臨床心理士 道地真喜(どうち まき)
カリフォルニア州立大学院(修士)教育学
カリフォルニア州私立大学院(博士)心理学
カリフォルニア州臨床心理士免許
カリフォルニア州での臨床経験約10年
ASDのお子様向けのABAセラピー、3歳から18歳を対象とした心理検査、 認知行動療法、プレイセラピー、大人の鬱、不安症のカウンセリングを主に実施。アメリカでの臨床経験を活かし、(株)すららネットにて心理検査、カウンセリング、保護者向けのペアトレーニングなどに従事。
■司会進行:すららネット 子どもの発達支援室 室長 佐々木 章太

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