このたび、JTBグループで様々なコミュニケーションサービスを提供する株式会社JTBコミュニケーションデザイン(以下JCD)は、ワーク・モチベーション研究所にて、「社内イベントのコミュニケーション効果に関する調査~ハイブリッド型(リアル×オンライン)に着目して~」の報告書をまとめました。
今後の企業経営における社内イベントの意義と方向性、具体的な方法などを決める資料として提示し、企業内のコミュニケーションデザインを考える上での一助となることを目的としています。
- 【調査結果のポイント】
1. コロナ禍以降、「良かった社内イベント(会社主催:会議、表彰式、パーティー、運動会、周年記念イベントなど)」は、
・約60%がリアルとオンラインを組み合わせたハイブリッド型イベント
・「すべてオンライン」「すべてリアル」での開催はそれぞれ約20%。
・「経営陣から話を聞くよい機会」55%、コロナ禍以前より15%アップ。
・効果は、「職場コミュニケーション」「部門間連携」「モチベーション」の向上。
2. 社内イベントの効果は、リアルの比率が「半々」か「多め」が最大に。
「すべてオンライン」で開催の場合、効果は減少。多様な参加スタイルが求められる。
3. 社内イベントの成功要因、1位「参加しやすさ」、次いで「社員全員が同時に同じ体験」「上司や同僚とコミュニケーション」。利便性と一体感が成功のカギ。
4. 社内イベントの失敗要因、1位「聞くだけで退屈」、オンライン比率が高いほど退屈の可能性高まる。「社長の話が長すぎる」は、「オンライン多めのハイブリッド」で高い数値。
*ハイブリッド型の社内イベント:リアル(対面)とオンラインを組み合わせて開催する社内イベント
- 【まとめと提言】
■リアルの楽しさを確保し、多様な参加方法で選択の自由を示す
■経営陣からのメッセージの重要性が増している
■組織として、社員全員が同時に体験する意義のある社内イベントの開催が求められている
- <主な調査結果>
【事前調査】
コロナ禍以降、社内イベントに参加した人は全体の21%。コロナ禍以前の55%から大きく減少
事前調査として、全国の会社員約27,600人に、勤め先の会社が主催する社内イベントへのコロナ禍以降での参加経験を聞いたところ、21%が参加経験があると回答しました。2016年の調査では55%(約9,200人のうち)が参加経験があると回答しており、コロナ禍以降社内イベントに参加する機会が大きく減ったことがわかります。
本調査では、参加経験がある人に対してさらに詳しいアンケートを依頼し、回答が得られた1,030人のデータを分析しました。
【本調査】
1-1.良かったイベントの約60%がオンラインとリアルのハイブリッド式
コロナ禍以降に社内イベントに参加した1,030人に、参加して良かったイベントについて、どのような方式で実施されたかを聞くと、オンラインとリアルを組み合わせたハイブリッド型(「オンライン多めハイブリッド」「オンラインとリアル半々のハイブリッド」「リアル多めハイブリッド」)が約60%を占め、「すべてオンライン」、「すべてリアル」はそれぞれ約20%となりました。
また、「オンライン多めハイブリッド」(31%)などオンライン優位のものが半数強を占め、全体にオンライン中心であったことが示されました。(図1‐1)
(1) ほぼすべてオンラインで行われ、参加者は一人一人別の場所からオンラインで参加した
(2) 主にオンラインで行われたが、一部の参加者はイベントの会場(ホールや会議室など)に実際に集合して参加した
(3) オンラインで参加する人と、イベントの会場(ホールや会議室など)に実際に集合して参加する人とが、半々くらいの割合だった
(4) イベントの会場(ホールや会議室など)に多くの参加者が実際に集合したが、一部がオンラインの形(一部の参加者がオンラインで参加したり、会場と会場をオンラインでつなぐなど)が取り入れられた
(5) イベントの会場(ホールや会議室など)にほぼすべての参加者が実際に集合する形で行われた
1-2.社内イベントは、「人と直接会って話ができる良い機会」59%、20代では70%。
「社長など経営陣から直接話を聞く良い機会」がコロナ禍以前より増加。
社内イベントについてどう感じるかを聞いたところ、全体では、「社内イベントは、人と会って直接話ができる良い機会だと思う」が59%に上りました。20代の70%が「良い機会」と回答し、社内イベントでの交流について、若い世代で特に評価されていることがわかりました。
また、「社内イベントは、社長など経営陣から直接話を聞く良い機会だと思う」との意見も55%に上り、コロナ禍以前の調査より14ポイントの伸長となっています。「以前よりも社内のイベントに参加してみたいと思う」も6%増加し、全体に社内イベントに対する肯定的な見方が強くなっていることがわかります。また「会社で社内イベントが開催されることが増えてきた」が45%に上り、コロナ禍で抑制されていた社内イベントの開催も、徐々に増加している様子も明らかになりました。(図1‐2)
1-3.社内イベントの効果は、1位「職場の中でコミュニケーションが増えた」、2位「他の部門と仕事がしやすくなった」、
3位「仕事に対するモチベーションが上がった」。コロナ禍以前と同様の効果。
社内イベント実施後の職場の変化について聞いたところ、全体では、「職場の中でコミュニケーションが増えた」(45%)が最も高く、以下、「他の部門と仕事がしやすくなった」(42%)、「仕事に対するモチベーションが上がった」(42%)が上位に挙がっています。コロナ禍以前の2016年調査と比較すると、「職場の中でコミュニケーションが増えた」が減少し、「仕事に対するモチベーションが上がった」が増加するという変化がありましたが、順位に変化はなく、社内イベントが職場にもたらす効果はコロナ禍以前と概ね同様であることがわかりました。(図1‐3)
1-4.社内イベントの効果は、リアルの比率が「半々」か「多め」で最大に。
「すべてオンライン」での開催の場合、効果は相対的に低め。 リアルの比率を確保しつつ、多様な参加方法を提示することが重要。
社内イベント実施後の職場の変化について、開催方法別にみたところ、「職場の中でコミュニケーションが増えた」、「他の部門と仕事がしやすくなった」、「仕事に対するモチベーションが上がった」などはいずれも、オンラインとリアル半々、リアル多めハイブリッドで高い効果が得られたことがわかりました。 また、「同僚との距離が縮まった」では、リアルの比率が高いほど効果的であることもわかりました。一方で、「すべてオンライン」の開催方法は相対的に評価が低いことから、リアルでの参加の必要性も重要であることがわかります。(図1‐4)
これらの結果から、オンラインでもリアルでも参加できるという多様な選択肢を用意すべきであることが示唆されました。
(1) ほぼすべてオンラインで行われ、参加者は一人一人別の場所からオンラインで参加した (n=218)
(2) 主にオンラインで行われたが、一部の参加者はイベントの会場(ホールや会議室など)に実際に集合して参加した (n=321)
(3) オンラインで参加する人と、イベントの会場(ホールや会議室など)に実際に集合して参加する人とが、半々くらいの割合だった (n=163)
(4) イベントの会場(ホールや会議室など)に多くの参加者が実際に集合したが、一部がオンラインの形(一部の参加者がオンラインで参加をしたり、会場と会場をオンラインでつなぐなど)が取り入れられた (n=127)
(5) イベントの会場(ホールや会議室など)にほぼすべての参加者が実際に集合する形で行われた (n=201)
2-1.社内イベントの成功要因は、1位「オンラインで参加しやすい」、2位「社員全員が同時に体験」、
3位「同僚・上司とのコミュニケーション」。
社内イベントの良かった点について聞いたところ、「オンライン開催で、参加しやすかったこと」(41%)、次いで「社員全員が同時に同じ体験ができたこと」(40%)、「同僚や上司とコミュニケーションの機会が持てたこと」(26%)が上位に挙がりました。
「社員全員が同時に同じ体験ができたこと」は、コロナ禍以前の調査「社員全員が同じ場所に集まったこと」と比較すると9ポイント減少しましたが、2位にランキングされており、3位もコミュニケーションに関する内容でした。1位の参加しやすさという利便性とともに、一体感や交流という情緒面の要因も重要であることがわかります。(図2-1)
また、自由記述には、「感染リスクを考えることなく安心して参加できた」「社員それぞれが、それぞれの場所からリモートで参加」などの参加しやすさを評価するコメントのほか、「多くの人が一堂に会することができたので、会社の勢いなども感じられ、良かった」、「社員全員で同じものを見、体験し、功績を認めてもらう機会があったのがよかった」などの全員が同じ体験をすることを評価するコメントや、「普段あまり話さない同僚や上司と和気藹々と過ごすことができた」といった、コミュニケーションを評価するコメントが並びました
2-2.オンライン比率が高いほど「参加しやすさ」は高評価
「社員全員が同時に同じ体験」はオンライン比率に関わらず高評価
社内イベントの良かった点の上位7項目を、社内イベントの開催方法別にまとめたところ、オンラインが利便性に効果があり、リアルがコミュニケーションに効果があることが示された一方で、開催方法に関わらず社内イベントは一体感を生むことも示されました。(図2-2)
詳細は以下の通りです。
・オンラインの比率が高いほど、「オンライン開催で、参加しやすかったこと」が高い評価を得ました。
・「社員全員が同時に同じ体験ができたこと」は、オンラインの比率に関わらず一定の評価を得ました。
・「同僚や上司とコミュニケーションの機会が持てたこと」は、リアルの比率が高いほうが高い評価を得ました。
・8位以下は「演出や企画」「開催時期」「チャットや投票などのIT技術で意見を言えた」「食べ物や飲み物」「開催場所」「会場の設備」となりました。
3-1. 社内イベントの失敗要因、1位「聞くだけで退屈」、
2位「マンネリ」、3位「一部の社員のみ」。
社内イベントの良くなかった点について聞いたところ、「一方的に聞くだけで退屈した」(30%)が最も高く、「毎回同じ内容で、マンネリ感があった」(20%)、「一部の社員のみだったこと」(18%)、が挙げられました。コロナ禍以前の調査と比較すると、「一方的に聞くだけで退屈した」が突出する結果となりました。
オンラインを取り入れた開催方法が多い現代の社内イベントは、「退屈」してしまう可能性があることが示唆されました。
4位には「社長や役員の話が長すぎた」が挙げられ、前述の「社長など経営陣から直接話を聞く良い機会」という声がある一方で、長すぎる話には否定的な意見もあることがわかりました。(図3-1)
3-2 「聞くだけで退屈」、オンライン比率が高いほど高い数値
「社長の話が長すぎる」、「オンライン多めのハイブリッド」で高い数値
社内イベントの良くなかった点の上位7項目を、開催方法別にまとめたところ、オンライン比率が高い場合は、退屈、話が長すぎるなどの不満を生む可能性があることが示されました。(図3-2)
詳細は以下の通りです。
・ 「一方的に聞くだけで退屈した」は、オンライン比率が高まるほど高く、「すべてオンライン」の形式では半数を上りました。
・ 「社長や役員の話が長すぎた」は、「オンライン多めハイブリッド」の形式で高くなっています。
8位以下は「上司や同僚について知ることができなかった」「演出や企画」「開催方法」「開催場所」「会場の設備」「食べ物や飲み物」となりました。
4-1.参加したい社内イベント、1位「学ぶ・学びを活かせる」、2位「感動」、3位「話せる」。
参加したいと思う社内イベントについて聞いたところ、「何かを学んだり、学びを仕事に活かしたりできる社内イベント」(72%)が最も多く、次に「感動する社内イベント」(69%)、「社内のいろいろな人と話ができるイベント」(68%)、「豪華な施設や食事などが設定された社内イベント」(66%)、が、ほぼ同じ割合で選ばれました。(図4-1)
コロナ以前と比べて、「学ぶ・学びを活かせる」が増加、「感動」「話せる」は横ばい、「豪華」は減少し「学ぶ・学びを活かせる」と逆転しました。オンライン導入など変化が加速する現代では、個々人の進化や成長につながる学びが求められていることが示唆されています。
- <まとめと提言>
多様な参加方法を示し、社員全員が同時に体験する意義のある社内イベントを
本調査では、コロナ禍以降の社内イベントにおいて、リアルとオンラインの比率により効果に差があり、参加者も社内イベントに求めるものが変化していることが示されました。
これからの社内イベントが組織に及ぼす効果を最大化するためにどうすべきかを考えます。
1.リアルの楽しさを確保し、多様な参加方法で選択の自由を示す
社内イベントの効果として挙げられた「職場のコミュニケーション増加」、「他部門連携のしやすさ」、「モチベーション向上」は、いずれもリアルの比率が「半々」か「多め」で最大となり、「すべてオンライン」では評価が低いことがわかりました。コロナ禍で対面でのコミュニケーション機会が減少した現代において、リアルに集う楽しさや実感は貴重です。社内イベントでこうした楽しさや実感を確保しつつ、オンラインで参加することも可能であるという多様性や選択の自由度があることを示すことが、高い効果につながると考えられます。
2.経営陣からのメッセージの重要性が増している
社内イベントは「経営陣から話を聞くよい機会」という回答が、コロナ禍以前より15%増加し55%となりました。また、「社内イベントは、人と会って直接話ができる良い機会だと思う」と、20代の70%が回答しました。通常業務の中では、経営陣のみならず上司や同僚とのやりとりも、メールやオンラインを通じてすることが多い昨今、直接話を聞いたり人と会う機会を求める声が大きくなっていると思われます。特に社歴が浅く社内人脈も形成されていない若年層は、人と会って話をすることへのニーズが高いのでしょう。
また、「社内イベントは、社長など経営陣から直接話を聞く良い機会だと思う」との意見が55%に上る結果からも、社内イベントでは、参加者に経営陣からのメッセージを明確に届けることが重要です。
しかしながら、「聞くだけで退屈」「社長や役員の話が長すぎる」ことも失敗要因として挙がっており、特にオンライン比率が高いほどその傾向は顕著です。従って、イベント内での効果的な演出によって、経営陣からのメッセージは明確で印象に残る飽きさせない工夫をする必要があります。
3.組織として、社員全員が同時に体験する意義のある社内イベントを
社内イベントの成功要因に、「参加しやすさ」と「社員全員が同時に同じ体験ができたこと」が挙げられました。利便性を求める一方で組織の一体感やつながりも感じたいという、働く人の心情が現れた結果と言えます。
社内イベントを開催することそのものが、そうした社員の心情に応えることにつながるでしょう。全社員が参加しやすい同時体験の場を作り、そこでしかできない交流体験を生み出すことが、これからの社内イベントの成功のカギとなるでしょう。
◆株式会社JTB コミュニケーションデザイン (JCD) 会社概要
所在地:東京都港区芝3-23-1 セレスティン芝三井ビルディング12階
代表者:代表取締役 社長執行役員 古野 浩樹
設 立:1988年4月8日
URL:https://www.jtbcom.co.jp/
◆ワーク・モチベーション研究所
URL:https://hr.jtbcom.co.jp/work_motivation/