ふるさと納税制度は、寄付者の収入が高いほど寄附による税金控除上限の額、率ともに高まります。ふるさと納税を積極的に活用する人は、収入の高いいわゆる富裕層が多いのではないかと一般的には推測されていました。今回のレポートでは、自治体人口に占める「ふるさと納税に係る寄附金税額控除」のうち市町村民税控除対象者の割合を分析します。市区町村ごとにふるさと納税の利用率を見ていきましょう。
■1位から10位
上位10自治体は全て東京都23区の自治体で占められています。上位3自治体は昨年と変わっていません。
■11位から20位
17位の千葉県浦安市、20位の兵庫県芦屋市以外は全て東京都の自治体となりました。東京都の特別区では世田谷区のふるさと納税利用者数が最も多くなりました。
■21位から30位
この上位30自治体の中では、川崎市のふるさと納税利用者数が最も多くなっています。人口1万人以下の山梨県忍野村が21位の10.81%となっています。
■日本総人口に占める市町村民税の控除人数割合
令和3年度は令和2年度より増加しています。伸び率は134.38%となりました。
今回の分析を通じて
情報サイトなどによる自治体別の平均所得額と比較すると、平均所得額が多ければふるさと納税の利用率も増加する傾向が分かりますが、全くの同一ではありません。所得以外に考えられる理由として、ITリテラシー、情報収集能力や生活環境がありそうです。ただ、やはり東京都に利用率が高い自治体が集中しています。制度の意図である「今は都会に住んでいても、自分をはぐくんでくれた「ふるさと」に、自分の意思で、いくらかでも寄附できる制度があっても良いのではないか」(出典:総務省「よく分かるふるさと納税>そもそも何のために作られた制度なの?」より)という流れにはなっているようです。
東京都内の自治体は、住民税の外部流出を問題視しています。しかしその思いとは反対に、都民の意識はふるさと納税の積極活用に向いているようです。ふるさと納税を身近に活用する住民を抱える自治体ほど、両者の意識差は難しい問題であるといえます。
日本全体を見てもふるさと納税の利用率は、令和2年の4.45%から令和3年の5.98%へと確実に上昇しています。この利用率は今後も高まることが予測されます。自治体にとっては、「いかに外部から寄附を集めるか」ということ以外にも、「自らの住民といかに向き合っていくか」ということも考えていかねばならない時期が迫りつつあるのかもしれません。
社名:株式会社ふるさと納税総合研究所
本社所在地:大阪府大阪市
代表取締役:西田 匡志(中小企業診断士、総合旅行業務取扱管理者)
事業内容: ふるさと納税市場における調査、研究、アドバイザリー、コンサルティング、ソリューション提供等
HP:https://fstx-ri.co.jp/