『ふるさと納税分析レポート』令和3年度ふるさと納税寄付額のうち「クラウドファンディング型のふるさと納税実績額」を分析しました。約300自治体にて約160億円の実績がありました。(参考値)

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ふるさと納税の特徴の一つは寄付の使い道を選択できることです。ふるさと納税におけるクラウドファンディング型とは、寄付の具体的な使い道に共感し応援したい気持ちから、寄付を募るものです。クラウドファンディング型が本来のふるさと納税のあるべき姿に近いものではありますが、令和3年度ふるさと納税寄付額に占めるクラウドファンディング型の実績は約2%程度であり、しかも令和2年度実績よりその割合は減少傾向にあります。今回は意義は大きいものの認知は浅いクラウドファンディング型ふるさと納税に着目しました。自治体の2割弱の約300自治体が実施しており、約160億円の実績となっています。クラウドファンディング型の募集について明確に定義されていないため、自治体ごとに集計方法が異なる可能性があります。よって、総務省の現況調査の数値もあくまで参考値として捉える方がよいかもしれません。
分析の背景
ふるさと納税では通常、ポータルサイトにて返礼品を選択してから寄付の使い道を選択します。寄付の使い道はふるさと納税の本来の姿のために非常に大切なのですが、寄付額の最大化を図るためにUIUXを重視して、使い道の説明のためのスペースがとても小さくなっています。一方で、大手ポータルサイトやクラウドファンディングサイトを中心に、寄付の使い道をメインテーマとし寄付を募っている事例も増加しています。
そこで、クラウドファンディング型ふるさと納税における各自治体の取組みや寄付額等を分析することで、クラウドファンディング型ふるさと納税を浸透させ、その寄付額を増加していくための、課題を抽出していきます。

令和3年度ふるさと納税寄付額のうち「クラウドファンディング型のふるさと納税実績額」を分析の主な結果
*前述の通り、総務省発表の現況調査が正確でない可能性がありますので、今回のレポートでは順位付けをしておりません。
■1ページ目
大阪府泉佐野市はふるさと納税3.0と名付けた、返礼品提供事業者の新規取組を寄付の使い道に充当するという斬新なアイディアを実施しています。東京都墨田区はかなり早い時期から、具体的な事業を寄付の使い道として選択ができていました。その中でも子ども食堂の支援は大変有名な事例です。広島市神石高原町は、犬の殺処分をなくすことが寄付の使い道の目的であり、非常に多くの寄付者の共感を得ています。この活動は全国の自治体に広がっており、ふるさと納税の素晴らしい成功事例と言えます。広島県呉市は戦艦大和の主砲製造した大型旋盤を消失から守るをテーマに、大和ファンの圧倒的支持を得ていたように思います。開始1日で1億円の寄付が集まりました。(新潟県燕市は2ヵ年の寄付額を実績として記載している可能性がありますので、こちらではコメントを致しません)

 

■2ページ目
茨城県鹿島市は鹿島アントラーズで有名なスポーツタウンです。未来のアントラーズを支えるため、アカデミー生のグラウンドを新設することが寄付の目的になります。寄付をされる方への魅力的な返礼品も用意されており、熱狂的なファンの方により、多くの寄付が集まりました。北海道大樹町は宇宙産業に力を入れており、その夢のある志に寄付額が増加しました。大阪府高槻市では、関西将棋会館の建設を目的とした寄附を募り、その話題は大手メディアでも広がりました。高槻市は日本将棋連盟と共に将棋振興に取組んでいます。
 

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静岡県磐田市は茨城県鹿島市と同様にサッカーチームへの支援であり、熱いファンに支えられています。岡山県吉備中央町は引退した競走馬のセカンドキャリア支援というユニークなものです。

今回の分析を通じて
クラウドファンディング型ふるさと納税の良い事例は数多くありましたが、通常のふるさと納税の寄付額に比べると寄付額はまだ少なく、また成長も鈍化しています。クラウドファンディングは寄付額のテーマ設定や順位には時間と手間がかかりますが、その割には寄付が通常のふるさと納税と比べて集まりにくく、集まらなかった時のリスクもあります。そのため、自治体としては前向きになれない気持ちも良くわかります。しかし、クラウドファンディング型ふるさと納税の寄付者はその自治体とのより強いつながりを求めています。クラウドファンディング型ふるさと納税には寄付額や返礼品以上の意義があります。将来的には、全ての自治体がこれに取り組むことが求められるようになるかもしれません。クラウドファンディング型ふるさと納税を浸透させるための課題は①クラウドファンディング型ふるさと納税の定義を明確化すること、②クラウドファンディング型ふるさと納税の取組みや実績がより評価されること、③クラウドファンディングのテーマやストーリーを自治体目線ではなく寄付者目線で検討されること、④通常のふるさと納税においても、寄付申込みは返礼品より寄付の使い道(具体的事業)が優先され表示されること、⑤民間企業にも実効性があるルールを作ること、と考えます。ふるさと納税制度を持続可能なものとしていくために、一過性の返礼品競争に陥ることなく、それ以外の価値や意義にも目を向けていきたいものです。

社名:株式会社ふるさと納税総合研究所
本社所在地:大阪府大阪市
代表取締役:西田 匡志(中小企業診断士、総合旅行業務取扱管理者)
事業内容: ふるさと納税市場における調査、研究、コンサルティング、ソリューション提供等
HP:https://fstx-ri.co.jp/

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