森林環境学習「やまのこ」の感想文を用いてプログラム効果を簡易に測定する方法を開発しました

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 森林政策課(現琵琶湖博物館 特別研究員)の山本綾美氏、同博物館の大槻達郎主任学芸員らの研究グループは、森林環境学習「やまのこ」事業のプログラムに対して※ロジックモデルを作成し、児童の感想文の文章を分類して数値化することで、現場の指導者が自ら実践できるプログラム効果の測定法を開発しました。
 

・課題:体験型森林環境学習を評価する方法の欠如
 これまでも、指導者が体験学習プラグラムについて内部評価し、事業改善に生かす方法の開発は必要と言われてきました。しかし、そうした研究報告はほとんどありませんでした。
 そのため「やまのこ」の指導者は、児童の直接的な反応や感想文から感覚的に成果を把握しており、定量的な分析は行われてきませんでした。

・プログラム効果の把握
 児童の感想文を用いて、体験学習後の心の変化を数値化し、プログラムの効果を測定する方法を開発しました。
 例えば、ある1日の「やまのこ」で森林散策と間伐見学と丸太切り体験の3つのプログラム活動を行った時、最も感動を生み出すことができたのはどのプログラムだったのかを把握したり、そのプログラムだけが生み出すことのできた感情の変化などを把握することができました。

・指導者の反応
 「きっとそうだろうなと思っていたことがちゃんと数字になって出てくる」、「具体的に改善すべき点が分かってよかった」などの意見が得られ、指導者にとってプログラム活動の改善やモチベーションの向上に役立つことがわかりました。また、今後この測定結果のデータを蓄積することで、指導者の育成・技能向上に繋がることが期待されます。
 なお、本研究の成果は、「森林応用研究31巻1号」(森林応用学会)に掲載されました。

本研究成果は、2022年度第5回 研究セミナーで発表します。
2022年8月19日(金) 14:35~15:15 琵琶湖博物館 セミナー室 にて

「児童の感想文を用いたプログラム効果測定方法の開発―森林環境学習「やまのこ」事業を対象として―」
https://www.biwahaku.jp/event/2022/08/_20225.html
 

  • 森林環境学習「やまのこ」事業 

「森づくり体験学習」プログラム 林業のお話と間伐見学を実施中 (写真提供森林公園くつきの森)「森づくり体験学習」プログラム 林業のお話と間伐見学を実施中 (写真提供森林公園くつきの森)

 やまのこは、「次代を担う子どもたちが、森林への理解と関心を深めるとともに、人と豊かにかかわる力をはぐくむため、学校教育の一環として、森林環境学習施設およびその周辺森林で体験型の学習を実施する」ことを目的とし、県内に設置された森林環境学習施設で県内の小学4 年生が全員参加する体験学習です。森林環境学習施設の持つフィールドや人材などに合わせて「森に親しむ学習」、「森づくり体験学習」、「森の恵み利用学習」、「森のレクチャー」の4つのテーマに基づくプログラムが1日または1 泊2日で実施されます。各施設には、常勤のやまのこ専任指導員が2 名配置され、さらに、学校の規模やプログラム活動の内容によって臨時に勤務する地域サポーターと呼ばれる指導者が活動を補助しています。 

※ロジックモデル
事業や組織が最終的に目指す社会的な変化や効果に至る道筋を体系的に図示化したもの。ロジックモデルを作成することで、事業の構成要素、目的を達成するまでの因果関係等、対象事業の論理的な構造を明示することができるようになり、成果が把握しにくい体験学習などの活動に対する評価指標を得ることができる。

問い合わせ先
研究・やまのこに関すること 滋賀県立琵琶湖博物館 特別研究員 山本綾美
Tel 077-568-4811     Mail: hutanorang0930@gmail.com
研究の方法に関すること   滋賀県立琵琶湖博物館 主任学芸員 大槻達郎
Tel 077-568-4811     Mail: ohtsuki-tatsuo@biwahaku.jp
やまのこに関すること      森林政策課(林業普及センター), 滋賀県立琵琶湖博物館 (兼務)
主任技師 美濃部諭子
Tel 077-587-2655    Mail: minobe-satoko@pref.shiga.lg.jp

 
 

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