第41回日本神経治療学会学術集会において『遺伝性 ATTR アミロイドーシス患者当事者・家族の健康関連 QOL とその関連要因』に関する調査研究の結果が発表される

この記事は約7分で読めます。
Alnylam Japan 株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 岡田 裕、以下「アルナイラム」)ならびに特定非営利活動法⼈ ASrid(所在地:東京都文京区、理事長:西村由希子、呼称「アスリッド」、以下、ASrid)は、11月3日から5日に開催された第41回日本神経治療学会学術集会において、「遺伝性 ATTR アミロイドーシス患者当事者・家族の健康関連 QOLとその関連要因に関する調査研究」の結果が発表されたことをお知らせします。

本調査研究の結果、質問票による定量調査によって、遺伝性 ATTR アミロイドーシス患者当事者における健康関連 QOL の高さには、家族機能の高さ、不安の低さ、日常生活動作(ADL)の高さが関連する可能性があること、さらにインタビューによる定性調査によって、家族機能および不安の具体的な内容についても明らかになりました。

今後は、通常の治療の提供・ADLの維持に加え、家族の疾患理解やサポート状況・関係性を踏まえたケアや情報の提供、また、患者の症状の状況や治療経緯、居住地の特徴などを踏まえた不安を解消するための適切な関わりが、遺伝性 ATTR アミロイドーシス患者当事者の QOL の維持・向上に資することが示唆されています。

本調査研究は、遺伝性 ATTR アミロイドーシスに罹患している患者当事者の健康関連 QOL (身体/精神・役割/社会的側面)とその関連要因を探索的に明らかにすることを目的に行われました。2021年12月から2022年6月までの期間において、複数の患者団体から参加者を募り、質問票による定量調査、インタビューによる定性調査を実施しました。遺伝性 ATTR アミロイドーシスと診断を受けた20歳以上の当事者 25 名と家族 15 名の回答を分析し次のような結果が得られています。

  • 定量調査における健康関連QOLにおいては、身体的側面ならびに役割/社会的側面におけるQOLは 国民平均よりも有意に低く、精神的側面でのQOLは 国民平均と有意な差はなかった。また、精神的側面の得点は有意に家族機能と中程度の正の相関を示した一方、役割/社会的側面の得点は有意に不安と中程度の負の相関となり、さらに移乗動作や着替え、食事といったADLとは有意な中程度の正の相関を示した。

  • インタビューによる定性調査では、遺伝性 ATTR アミロイドーシス患者当事者の認識する家族機能に関するスコアは、家族の疾患への理解や情緒的なサポート、疾患や現状の情報取得と共有、介助/介護などの生活支援がある場合に高かった。

  • 患者当事者の不安は症状の進行と関連し、 治療(肝移植や治療薬)によって症状の進行抑制が効いている場合には低い一方で、既発症の症状で改善困難な症状や眼のアミロイド沈着のように治療に関わらず進行する症状がある場合、また、医療情報・アクセスに地域差を感じている場合には強かった。

  • 患者当事者の中でも肝移植経験者は、新規薬剤の登場で移植患者が取り残される不安を抱えていた。

本調査研究を実施した特定非営利活動法人ASridの理事長である西村由希子、および本研究の筆頭著者である研究員の江本駿は、「希少・難治性疾患である遺伝性ATTRアミロイドーシスは、進行性で死亡率の高い遺伝性の全身性多系統性疾患で、複雑な病態であるため、患者さんの生活のあらゆる面に影響を及ぼします。今回の調査研究により、患者さんの健康関連QOLとその関連要因を明らかにすることができました。今後はこの結果を活かし、ご家族を含む周囲の関係者によって、患者さんの日常生活におけるQOLの向上に効果をもたらす様々な取り組みがさらに行われていくことを期待します」と述べています。

アルナイラムのメディカルアフェアーズ部ペイシェントアドボカシー&エンゲイジメントの三浦愛子は、 「今回の調査研究の結果から、患者さんの症状を治療するだけでなく、身体的、心理的、社会的、精神的な面でも支援できる仕組み作りが必要であることがわかりました。当事者のご家族をはじめ、医療従事者や患者支援者とも協力して、患者さんのケアに対するよりホリスティックなアプローチを促進することに全力を尽くしていきます」と述べています。

なお調査にあたっては、直接参加38名(患者当事者23名、患者家族15名)、患者家族からの間接的な定量データから聴取した患者当事者2名、加えてヒアリング対象者から語られた遺伝性 ATTR アミロイドーシス患者当事者49名(うち7名は確定診断を受けず逝去)を対象とし、本疾患を対象とした社会心理学的な患者実態調査としては国内最大規模での実施となりました。 

本調査研究は、アルナイラムからの受託研究としてASridがアルナイラムからの資金提供を受けて実施されたものです。

また、本調査研究は、ASrid利益相反マネジメント委員会および倫理審査委員会に申請し、承認を受けた上で実施されました。

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP)について

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは、遺伝性 ATTR アミロイドーシス、FAP(Familial Amyloid Polyneuropathy)とも呼ばれています。TTR 遺伝子の変異が原因で生じる進行性の難治性疾患で、死に至ることも多い疾患です。TTR タンパク質は主に肝臓で産生され、ビタミン A の輸送体として働きます。TTR 遺伝子に変異が生じると、異常なアミロイドタンパク質が蓄積して、末梢神経や心臓などの臓器・組織を傷つけ、治療が難しい末梢神経障害、自律神経障害および/または心筋症などを引き起こします。トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの患者数は全世界で約 5 万人おり、障害発生率と死亡率はきわめて高く、大きなアンメットニーズが存在します。トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの診断からの生存期間の中央値は 4.7 年で、心筋症を発症する患者さんでは 3.4 年とさらに短くなっています。

ASrid について

ASrid (https://asrid.org/)は、希少・難治性疾患分野の中間機関として活動しており、当該領域のステークホルダー(患者や研究者を含む関係者)が抱える広義の課題解決や負担軽減を行うための仕組みおよびサービスを「つくる」「つなげる」ための事業や、当該分野に関連する知識の利用と啓発、ならびに研究の促進に関する事業を行い、公共の利益と経済活性化に寄与することを目的として、2014 年に設立されたNPO 法人です。「to patients, for patients, beside patients」をスローガンに、希少・難治性疾患分野に数多く存在する「ない」を、少しでも「ある」に変えていくべく、多様な事業を展開しています。

Alnylam Japan 株式会社について

Alnylam Japan 株式会社(https://www.alnylam.jp/)は、次世代医薬品として注目される核酸医薬の一つである RNAi治療薬を日本の患者さんに届けるため、2018年7月に設立されました。RNAi治療薬は、従来はターゲットにできなかったmRNAに選択的に作用することで、これまで治療が困難であった疾患の新たな治療選択肢となる可能性があります。RNAi技術を応用して開発された世界初のsiRNA製剤オンパットロ点滴静注 2mg/mL(一般名:パチシランナトリウム、適応症:トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー)は、当社が日本国内で 2019 年に販売した最初の製品です。2021年には、2剤目となるsiRNA製剤ギブラーリ皮下注189mg(一般名:ギボシランナトリウム、適応症:急性肝性ポルフィリン症)、2022年11月には3剤目となるsiRNA 製剤アムヴトラ皮下注25mgシリンジ(一般名:ブトリシランナトリウム、適応症:トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー)を販売しています。当社は、医療の未来を切り拓く可能性のある新しい治療薬の開発に取り組み、アンメットニーズの解消に貢献することを目指しています。 

Corp-JPN-00038 | November 2023

タイトルとURLをコピーしました