-
奨学金事業について https://kawanozaidan.or.jp/scholarship/
当財団では、小児医学の永続的な発展のためには人材の育成・輩出が重要であるという考えから、1990年に小児医学を志す医学生への奨学金事業を開始しました。現在は埼玉県内または千葉県内の高校を卒業し、小児科医や小児医学研究者を目指す医学生を対象として、月額7万円を給付しています。2023年度までで当財団の奨学生は114 名となり、卒業生の多くが第一線で医師として活躍をしています。
-
セミナー実施内容
当財団奨学生OB 末吉亮先生による「医学生向けキャリアセミナー」
●講師プロフィール
末吉 亮 先生 / 東京女子医科大学小児外科 講師
・専門分野: 鏡視下手術・腸管基礎研究
・資 格: 博士(医学)/日本外科学会専門医/日本小児外科学会専門医
・略 歴:
2005年3月 順天堂大学 医学部 卒業
2005年4月 さいたま赤十字病院 臨床研修医
2007年4月 順天堂大学医学部小児外科学講座 大学院入学及び入局
その後、複数の病院にて勤務しながら順天堂大学にて医学博士を取得。
ミシガン大学への留学も経験。
2016年4月 東京ベイ浦安市川医療センター 小児外科部長
2019年4月より東京女子医科大学小児外科 講師としてご活躍中
※2007年度 当財団奨学生
●講演内容(抜粋)
■ 自分一人で全てを行うことで得た大きな学び-小児外科「一人部長」-
医師12年目の2016年に、医局の関連病院の小児外科部長として着任しました。小児外科の担当は私一人でしたので、患者さんの入院手続きから退院の対応まで、全て一人で行わなければならない状況でした。自分一人ですから、色々なことに言い訳ができない、何か起これば全て自分の責任になります。大変な経験でしたが、これによって自信がつきました。
また、その病院ではホームページの刷新に非常に力を入れていたため、外部企業の方とチームとなって、どうすれば検索エンジンでヒットさせられるかなど試行錯誤し、ブログを用いた発信なども始めました。その当時の話ではありますが、小児外科の一疾患名でキーワード検索をすると、私の書いた記事が大手検索エンジンで二番目か三番目に出てくるところまでいきました。それまで、メディア戦略については無知でしたが、こういった経験を通じて、他分野の色々な人たちと繋がることができたのは今でも財産になっています。
■ 医師という仕事は良好なコミュニケーションがあってこそ-相手の目を見て話す大切さ-
どんな仕事においてもそうだと思いますが、医師の仕事においても、物事を円滑に進めていくためにコミュニケーション能力は必須です。特に「相手の目を見て話すこと」、私はこれに尽きると思います。当たり前のことと思いきや、意外とこれができていない医師は多いものです。
実際、相手の目を見て話さなかったことで、苦い経験をしたことがあります。手術の術前説明で書類作成に集中してしまって、最終的に親御さんから「先生には手術に入ってほしくない」と言われてしまったことがあります。相手の目を見て、その表情から考えていることを読み取ることは本当に大切です。それによって、物事が良い方向に進んだり、最悪の状況を回避できることも大いにあると思います。
■ 人との出会い。そして覚悟の大切さ-人生の決断における心構えについてアドバイス-
私が人生の決断における心構えで大切にしていることは3つあります。一つ目は「人生の決断は常に人と人との繋がりから成り立つ」ということです。キャリアを考える上でも、人と人とのつながりをきっかけとして、次のステップに入っていくことは多いと思います。逆に人とのつながりがない場合には、ご縁を作ってから進むことも重要と感じます。二つ目は、「自分の将来像を思い描けるようなメンターと出会う」ことです。将来像を思い描けるような人と出会うのはなかなか難しいかもしれませんが、これからさまざまな先輩医師に会うと思います。そんな時に、その先生のこれまでのあゆみやその背景を聞いてみるもの良いと思います。三つ目は、「それぞれの決断において、険しい道を選ぶ覚悟を持てるかどうか」です。新たな道に踏み出す時に、それが今より険しい道なのか、そして選択する覚悟があるのかを考えてみてほしいです。もし覚悟が持てなければ、現在の位置にとどまることも選択肢の一つと思います。
●現役奨学生との一問一答(一部)
「小児外科医になってよかったことと苦労したことを知りたいです。」
■ 患者さんの成長と避けられない死
良かったことは、自分が手術した患者さんの成長を見届けることができることです。手術した子どもたちは、術後1カ月とか2カ月に1回程度、その後の様子を確認するために病院に診察を受けに来ます。そういった機会を通じて、子どもたちがすくすく育って、彼らの可能性がどんどん広がっていくところを見られるのは何よりも嬉しいです。逆に、苦労というか、これまで一番辛かったことは、私が手術をした患者さんが術後数日で亡くなってしまったことです。その時も結局原因は分かりませんでしたが、今でも忘れられない経験です。
「小児外科の将来性についてどう思いますか。」
■ 子どもの手術の専門家の必要性
残念ながら、小児外科医はなり手がどんどん減っています。日本小児外科学会の正会員数をみると、2000年に約3,000人だったのが、2022年には2,000人を切っています。例えば、一県に小児外科医が1人、2人しかいないところもありますし、小児外科を専門としない医師が子どもを手術するところもあります。少子化と言われていますが、子どもの健康を守るためには、やはり子どもの体をよく知る小児外科医の存在は重要と考えています。小児外科医の増加には、行政の力も必要ですが、皆さんのような医学生に小児外科に興味を持ってもらえるようにしたいと思います。
-
財団より
●セミナー開催の背景
当財団は、奨学生がこれからの医学界を担う原石であると確信しています。そのような彼らが激変する社会の中で、医師として、そして人としてどのような人生を歩んでいくのかを自ら考えることは非常に重要であると感じています。キャリアを考えるうえで様々な先輩医師から声を聞くことは大変有意義ですが、卒業に向け日々学業や研修に集中する彼らにとって、そのような機会が限られることも事実です。そこで、当財団が奨学金事業を通じて得た先輩医師とのつながりを奨学生に還元したいと思い、奨学金事業の一環として本セミナーを行うことを決めました。
●医師にとってのコミュニケーション力の重要性について
当財団は今年5月に、「医学生の志望理由・学生生活・進路に関する意識調査」を発表しました。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000104845.html
その調査の「医師に必要だと思うことは何ですか」という質問で、「コミュニケーション能力」が2位になりました。今回の末吉先生のお話は、現役医師の立場からその結果を裏付ける内容となりました。
-
イベント終了後アンケート結果(抜粋)※出席者9人中7人が回答
キャリアセミナー終了後出席した奨学生にアンケート調査を実施しました。その結果をご紹介します。
Q1. 本日のセミナーの満足度を教えてください。
満足 6名(86%)/やや満足 1名(14%)/普通 0名/やや不満 0名/不満 0名 計7名(100%)
Q2. Q1のように回答した理由を教えてください。
・卒後の具体的なプランが具体的に年表で提示され、想像しやすかったから。
・なかなか聞くことのできない実際の医師に求められている素質のお話など、聞くことが出来て本当に
参加してよかったなと感じました。
Q3. 最も興味を持った内容を教えてください。
・医師としての良好なコミュニケーションのためには、相手の目を見て話すことが重要であるということ。
・小児外科医は県内で2、3人しかいない場合もある稀な職種であること。小児外科の先生がいないところでは
一般外科の先生が治療しているということ。
Q4. 小児外科という分野への理解は深まりましたか。
とても深まった 3名(43%)/深まった 4名(57%)/変わらない 0名(0%)
Q5. ご自身の今後のキャリアの参考になったことがあれば教えてください。
・小児外科を専攻するタイミングとして、一般病院での勤務後か、初期臨床研修終了後すぐなのかなど、
小児外科の目指し方も色々あるということを学べた。
<財団概要>
財団名: 公益財団法人川野小児医学奨学財団
所在地: 〒350-1124 埼玉県川越市新宿町1-10-1
理事長: 川野 幸夫(株式会社ヤオコー 代表取締役会長)
事務局長: 川野 紘子
設立: 1989年12月25日
行政庁: 内閣府
URL: https://kawanozaidan.or.jp/
TEL: 049-247-1717
Mail: info@kawanozaidan.or.jp
事業内容: 研究助成/奨学金給付/小児医学川野賞/医学会助成
小児医療施設支援/ドクターによる出前セミナー