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実施背景
2023年3月期決算より、有価証券報告書を発行する約4,000社の上場企業において、人的資本の開示が義務化されました。本調査では、昨年に引き続き、人的資本の開示に対する国内機関投資家の現状認識と期待を明らかにして、企業における開示のあり方を示します。
▶前回の調査結果はこちら
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調査結果概要
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過半数の機関投資家が、有価証券報告書での人的資本の開示義務化をポジティブに捉えている。
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より開示が必要だと考える非財務資本は、「人的資本」「社会関係資本」が最多であった。
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人的資本は企業成長に影響を与えていると考える機関投資家は86%で、投資判断への影響度合いも高まっている。
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人的資本の開示については、「特に参考にしているフレームはない」という意見が多くを占めた。
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機関投資家が企業に求める人的資本開示項目は、「ダイバーシティ」が最多で、次いで「生産性」、「スキルと能力」となった。
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機関投資家が企業の人的資本情報を収集する媒体は、「IR説明会資料」が最多で、「統合報告書」、「有価証券報告書」の順番となった。
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人的資本の可視化に向けた企業の動きとして、機関投資家の約半数が重要視しているのはトップのコミットメントであった。
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調査結果
●人的資本開示の動向に対する機関投資家の反応
2023年3月期決算より有価証券報告書での人的資本の開示が義務化されたが、これをポジティブに捉えている機関投資家は、過半数に達した。また、開示状況に対する満足度において、「満足」以上と答えた割合は昨年より10ポイント向上しており、各社の非財務資本の開示状況も進展していることがうかがえる。
より開示が必要だと考える非財務資本については、人的資本が59%で昨年に引き続き最多となった。
「人的資本は企業成長に影響を与えている」と考える機関投資家は86%となり、投資判断への影響度合いにおいて、「まあ影響する」以上と答えた割合は、昨年より7ポイント向上した。人的資本経営が実践され始めた中、機関投資家の関心度合いも高まっていることがうかがえる。
企業が人的資本開示に際して参考にしているフレームワークについて、機関投資家側は、「特に参考にしているフレームはない」という意見が多くを占めた。
●人的資本の開示内容に対する機関投資家の期待
機関投資家が企業に求める人的資本開示項目は、ダイバーシティが50%で昨年に引き続き最多となった。次いで生産性(43%)、スキルと能力(41%)だった。
また、機関投資家が企業の人的資本情報を収集する媒体は、IR説明会資料(55%)、統合報告書(45%)、有価証券報告書(44%)だった。
人的資本の可視化に向けた企業の動きとして、機関投資家が重要視しているのは、トップのコミットメント(52%)が最多で、特に「経営者からのメッセージ」に基づいて評価をしている。
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調査結果からの提言
昨年の調査に引き続き、「人的資本」が非財務資本の中でも注目を浴びていることが分かる。また、昨年は開示が期待される項目として、「コスト」が「ダイバーシティ」に次いで期待されていたものの、今年は「コスト」に対する期待度が相対的に低下した。一方で、「生産性」に対する開示への期待は上昇していることから、「企業の投資結果」に対する機関投資家の注目度が高まっている様子がうかがえる。
また、人的資本の開示状況を判断する上で「特に参考にしているフレームはない」という意見が多くを占めることから、「ルールやガイドラインに則った開示」を特別期待しているわけではないことが推察される。
今回の義務化に伴い、人的資本の開示を進める企業が増えているが、表面的な開示にとどまっているケースも多い。加えて、自社の人的資本が、未来の企業価値向上にどのように結びつくかという道筋を示せている企業は少ない。
今回の調査を通じて、機関投資家は、人的資本への投資による「未来」と、ルールやガイドラインだけに縛られていない「ストーリー」が求められていることが分かった。人的資本は、未来における企業価値を予測する重要な要素の一つだからこそ、企業が開示を進める際には「未来の企業価値にいかにインパクトするか」をストーリーにして、機関投資家と対話をすることが重要だと言えるだろう。
※本調査の結果を引用される際は、出典を明記してご利用ください。
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調査概要
・調査の方法:インターネットによるアンケート
・調査の対象:調査会社パネルの「機関投資家」を対象
・有効回答数:100
・調査実施日:2023年4月19日~4月21日
・調査主体:株式会社リンクアンドモチベーション
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リンクアンドモチベーショングループの概要
・代表取締役会長:小笹 芳央
・資本金:13億8,061万円
・証券コード:2170(東証プライム)
・本社:東京都中央区銀座4-12-15 歌舞伎座タワー15階
・創業:2000年4月
・事業内容
組織開発Division(コンサル・クラウド事業、IR支援事業)
個人開発Division(キャリアスクール事業、学習塾事業)
マッチングDivision(人材紹介事業、ALT配置事業)
ベンチャー・インキュベーション