【開発の背景・目的】
子宮頸がんは20〜30代の女性において、婦人科悪性腫瘍のなかでは最も多く、日本国内だけでも毎年約1万人以上が罹患し、約3千人が命を落としています。さらに、子宮頸がんに至る前の前がん状態である子宮頸部上皮内腫瘍も急増していることが社会課題となっています。一方、子宮頸がん検診(一次検診)の日本国内における受診率は、欧米諸国と比較して低い水準にあります。また、一次検診で異常が指摘された場合に必要となる精密検査(二次検診)が可能な施設は婦人科医師の不足に伴い減少しており、専門的な知識を有する腫瘍専門医による診断は限られた高次医療機関のみで可能であるのが現状です。
本プロジェクトは専門医の常駐しない医療機関や高次医療機関でなくても、コルポスコピー検査の実施を可能にする支援ツールを開発することにより、子宮頸がんや子宮頸部上皮内腫瘍の精診率を上げ、子宮頸がんの早期発見や死亡率の低減に貢献することを目的としたものです。
製品の開発にあたり、2020年4月より国立大学法人京都大学大学院医学研究科 婦人科学・産科学 教室と共同研究を行い、学術的な側面からも利活用の有用性について検証を進めてきました。
【製品の特徴】
「HACARUS MD for Colposcopy」は、医師がコルポスコープを用いて子宮頸部を観察・撮影した画像に対して、AI技術を用いて酢酸加工の反応度を検出・表示し、医師の観察および生検部位の判断をサポートします。また、コルポスコピー所見を作成する補助機能として、撮影された画像に文字や線、図などを挿入することができるので、医師が電子カルテを作成する際の負担を軽減し、診療時間の短縮を実現します。
検出機能は、コルポスコープに装着したデジタルカメラからタブレット端末へリアルタイムに動画像を伝送しながら使用します。伝送された動画像から医師が取得したキャプチャ画像に対して、AIによる酢酸加工の反応度の検出を行い、その結果をタブレットに表示します。
所見作成補助機能は、コルポスコープによる子宮頸部の観察が終了した後に実行します。検出を行った画像と検出結果を参考に、タブレット上でコルポスコピー所見を作成するための補助機能として、画像の編集・加工、所見のエクスポート、過去の検査一覧を表示することが可能です。
※本品は医薬品医療機器等法に基づく医療機器プログラムではありません。
【本ソフトウェアの想定動作環境】
パソコン種別 | タブレット |
OS | Windows |
スクリーンサイズ | 11〜13インチ |
キーボード | タブレットに搭載されているスクリーンキーボード |
カメラ | ・タブレットにフロントカメラと背面カメラが付いていること ・コルポスコープに装着したデジタルカメラにHDMIパススルー機能が搭載されていること |
【京都大学大学院医学研究科 婦人科学産科学教室について】
1899年に京都帝国大学医科大学が開設され、婦人科学・産科学教室(当教室)が創設されました。現在の第10代教授である万代昌紀教授にいたるまで、当教室は婦人科がんと深くかかわってきた歴史があります。特に子宮頸癌は第2代高山尚平教授が発表した高山術式は子宮頸癌に対する広汎子宮全摘術の基礎となり、第3代岡林秀一教授が改良した岡林術式は現在の子宮頸癌手術の標準術式となっています。第4代の三林隆吉教授は超広汎子宮全摘術を考案しました。第8代の藤井信吾教授は子宮頸癌に対して出血量の少ない膀胱神経温存術式を考案し、現教授の万代昌紀教授は本邦で先駆けて鏡視下広汎子宮全摘術を行っています。また、子宮頸癌以外にも免疫療法の基礎研究から卵巣癌に対する抗PD1抗体の医師主導治験、がんゲノム解析、婦人科がんの発生や抗がん剤耐性の解明など、時代のニーズとともに将来の展望を心掛けた研究をしています。
【株式会社HACARUSについて】
HACARUSは、『次世代の「はかる」をあらゆる産業に』をミッションとし、少ないデータで、抜本的な問題解決につなげる「AIソリューション」を提供しています。2014年の設立から数多くの企業の問題解決に貢献してきた経験と独自の技術力で、人の知見を資産化し、オペレーションの効率化・省人化を成功させます。データの取得から既存システムとの連携までを一貫して支援し、人間とAIが共存する未来の実現に取り組んでいます。
■会社概要■
本社:京都府京都市中京区高宮町206 御池ビル 8階
設立:2014年1月14日
代表取締役CEO:藤原 健真
資本金:1億円
URL:https://hacarus.com/ja/