【ブダペスト世界選手権】日本代表選手団 結団式を実施!

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日本陸連は8月8日午後、8月19日から開幕するブダペスト世界選手権に出場する日本代表選手団の結団式を開催しました。この大会に向けては、8月7日に日本代表選手が発表されていましたが、8日午前にワールドアスレティックス(WA)による出場資格者の追加通知を受け、さらに男子5名、女子9名が新たに代表入り。海外で実施される世界大会としてはオリンピック、世界選手権を通じて史上最多となる合計76名(男子48 名、女子28名)の大選手団で臨むこととなっています。

【結団式レポート】

昨年のオレゴン世界選手権、一昨年の東京オリンピックと同様に、今回の結団式もオンラインで開催。国内外で準備を進めている各競技者、そして選手団のコーチ、スタッフが画面越しで顔を揃えるとともに、その模様は、限定公開の形で関係者に向けてライブで配信されました。
結団式は、現役時代に女子100mハードルでオリンピック(2012年ロンドン、2020東京)、世界選手権(2017ロンドン、2019ドーハ)ともに複数回にわたって日本代表として活躍した木村文子さん(日本陸連理事/エディオン)による司会進行で16時からスタート。まず、木村さんから、代表に選出された76名の選手と帯同する役員・スタッフが紹介されました。

続いて、日本選手団の監督を務める山崎一彦強化委員長が挨拶に立ちました。開口一番、「私たちは、このブダペスト、パリ(2024オリンピック)、そして(2025年に行われる)東京の世界選手権に向けて、線で結んでいくような活躍をしていきたい」と切りだした山崎委員長は、強化委員会が今年の目標として掲げている「世界トップの確固たる実力を、複数年にわたって発揮していく」ことについて、すでに実績を残している競歩やダイヤモンドリーグでの活躍を例に、「私たちは世界でも一目置かれている存在になってきた」とコメント。今回、「史上最高の選手たちが集まり、史上最大の選手団となった」ことに対して、「皆さんの今までの努力が実を結び、最高の準備段階ができた」と誇りました。そして選手たちに向けて、「私たちは、すでに期待をされている。まずは、その期待を楽しんでほしい」「そして、純粋に“陸上競技の究極”を追求して、世界の舞台で堂々と戦ってほしい」という2つの姿勢を求めました。
そのうえで、男女主将として、男子400m、4×400mリレーに出場する佐藤拳太郎選手(富士通)と女子やり投に出場する北口榛花選手(JAL、ダイヤモンドアスリート修了生)の2人を発表。「大選手団となるが、選手、コーチ・スタッフも一丸となって、明るく、みんながいい雰囲気で行ければと思っている。(チームジャパンは」先日のアジア選手権でも良い成績を残したように、すでに素晴らしい雰囲気を持つことができている。今度は世界の舞台が、皆さんの大暴れする場所。みんなで一丸となって、ブダペストで最高の成績を出そう」と選手たちを鼓舞しました。

次に、選手を代表して、主将に任命された佐藤選手と北口選手が挨拶。佐藤選手は、「まずは日本記録の更新を軸に置き、個人種目での決勝進出、そしてマイルリレー(4×400mリレー)でのメダル獲得を目標として臨んでいく」と自身の意気込みを述べたうえで、「世界選手権開催日までの残りの時間を無駄にすることなく、各個人が最高のパフォーマンスを発揮できるよう準備をしていきましょう」と呼びかけました。また、トレーニング拠点としているチェコからの参加となった北口選手は、「私個人としての目標は、メダル獲得と日本記録を更新すること。この先、パリオリンピック、東京世界陸上に向けて、日本チーム全体がいい波をつくっていけたらいいなと思っている」と挨拶しました。

その後、激励の言葉として、日本選手団のオフィシャルスポンサーを務めるアシックスジャパン株式会社の阿部雅代表取締役社長とセイコーグループ株式会社の服部真二代表取締役会長兼グループCEO兼グループCCOが、ビデオメッセージで登場。「ブダペストの地で皆さまが最高のパフォーマンスを発揮されることを願っている」(阿部社長)、「皆さんが持てる力を最大限出しきれることを願い、感動の瞬間を心待ちにしている」(服部会長)と、それぞれに力強くエールを贈りました。

最後に、日本選手団の団長を務める尾縣貢日本陸連会長が挨拶。まず、出場権を獲得した各選手を祝福し、「皆さんのこれまでの努力、そして支えていただいたコーチをはじめ、関係者の皆さまのご尽力に心から敬意を表する」と述べた尾縣会長は、「最近、皆さんの活躍を見ていて思うこと」として、「積極的に世界の競技会に参加して、力を存分に発揮していること」「これまで太刀打ちできなかった種目でも素晴らしい成果を残していること」の2つを挙げ、代表選手に向けて「皆さんは無限の可能性を持っていると思う」と呼びかけました。そして、「このブタペストは、可能性を成果に繋げる場と考えてほしい。世界の強豪と戦うことで、皆さんは今まで以上の力を出せる。また、今までと違った集中力が皆さんの力を引き出すと思う。もし、期待するような成果が出なかったとしても、それはこれからのチャレンジの糧に必ずなる。秋にはアジア大会、来年にはパリオリンピック、その翌年には東京世界陸上がある。このステップを1段1段上っていただきたい」と温かく励ましました。

結団式終了後には、男子主将として臨む佐藤拳太郎選手、女子1500m・5000mに出場する田中希実選手(New Balance)の2名がオンライン取材に応じました。両選手のコメントは、別記の通りです。

ブダペスト世界選手権は、8月19日に開幕。8月27日まで9日間にわたって、熱戦が繰り広げられます。日本陸連では公式ホームページ内に特設サイトをオープン。チームジャパンの活躍やさまざまな情報を随時ご紹介するとともに、代表選手に向けた応援メッセージなども募集していく予定です。ぜひ、お役立てください。
◎世界選手権特設サイト https://www.jaaf.or.jp/wch/budapest2023/

【取材対応選手コメント(要旨)】

◎佐藤拳太郎(富士通) 男子主将、400m・4×400mリレー代表

このたび、主将を任命していただいた。歴代主将の方々を見ても、結果でチームを引っ張っていらっしゃったと思うので、私も、まずはしっかり日本記録を更新して、「日本の400mは世界でも通用する」というところを見せることができれば、(日本チームの)皆さんを引っ張ることができるのではないかと考えている。

7月のアジア選手権では(45秒00をマークして優勝したが)、私のなかでは最高点ではなく、まだ課題の残るレースだった。今は、その課題を1つ1つ修正している段階である。世界選手権までの残り日数は少ないが、そこまでには、すべての課題を修正し終えて、戦えるようにすべく準備を進めている。

(400mで目標とする結果を残すためには)本番では予選は45秒前半ないしは44秒台でしっかり着順で通過することが必要だし、準決勝では44秒中盤より速いタイムでないと、着順で通ることは難しいと考えている。しっかり準決勝で勝負ができるよう、そのくらいのタイムが出せるようにしていきたいと思っている。また、4×400mリレーについては、私は昨年の(オレゴン世界選手権の)レースには出場していないのだが、あの4人が走って(アジア新記録で)4位という結果を残した。(このときの展開を考えると)しっかり前の順位で(上位争いに)ついていき、そのなかでバトンの受け渡しをしていくことが必要と考えている。まずは4人が出遅れないことに意識を置きたい。今回はリサーブも含めて6人が代表となっているので、6人全員の意識のベクトルを合わせるというか、「こういうレースがしたい」というものをマイルチームでつくっていきたい。まだ走順も、誰が走るか自体もわかっていないが、自分自身は、どの走順になっても最高のパフォーマンスができるように今準備をしているし、それは、私だけでなく、6人全員が同じ気持ちだと思う。昨年以上の結果は出せるのではないかと考えている。

◎田中希実(New Balance) 女子1500m・5000m代表

(今回で出場も)3回目となるので、今までで一番の世界陸上にしたい。具体的には、決勝に残ったうえで、ちゃんと勝負するということ。今までは、決勝に残っても、残ることが精いっぱいという形で来ているが、今回は、できれば選んでいただいた1500mと5000mの両種目で決勝に残って、どちらもしっかりと入賞以上の成績を目指して戦っていくことを目標としている。今はそういうイメージもできるようなトレーニングは積めていて、身体の調子も悪くはない状態。ただ、精神的なところで集中できる日とできない日に差があるので、大会に向けてその精神面の精度を上げていき、そこにトレーニングを積んできた分がハマれば、いい成績が残せるのではないかと思っている。

今は、日本で調整合宿をしていて、このあと事前合宿のためにフランスへ行くことになっているが、海外に移ってしまうとイレギュラーなことや、どういうことになるかわからないというのもあるので、しっかり国内で仕上げてから移りたいと考えている。昨日あたりには、一番山場となるようなトレーニングを無事に終えることができて、このあと国内での最後の調整練習をしてから海外に移る予定である。そこを、しっかり最後までぶれることなく取り組んでいきたい。そのうえで、海外で、そんなに硬くなりすぎずに練習を楽しみながらこなしていけたら、ブダペストに移る頃には、体調面をもっと上げていけるのではないかと思う。

(標高の高い茅野市で行った合宿では)強度的には平地と変わらないような質の高い練習を積むことができ、それを今後、本番でどう生かせるかというところまで来ている。また、 国内にいる間は、トレーニングも山場を迎えて必死だし、世界陸上に向けての注目もますます高まっているなかなので、精神面の負荷は今がピークなのではないかと思っていて、逆に、このあと海外へ移ると、練習面では臨機応変が求められるようになっていくと思うが、精神面ではより集中できるというか、自分だけの時間をつくりやすくなってくるのではないかと考えている。その時間をうまく持てるようにしたら、(精神面の精度も)うまく整っていくのではないかと思っている。

去年の世界陸上は、(800m・1500m・5000mの)3種目に出場するという、誰もやったことがないことをした。結構きついことだったが、それでも逃げずに取り組めたのは、応援してくださる方々がいたおかげ。今回も、調子が整うかどうかは最後までわからない部分はあるが、どんな状態であっても、「自分の全力を尽くす」というスタンスだけは去年とは変えずにやっていき、そういう姿を(ファンの方々に)見ていただけたらなと思っている。

※コメントは、オンライン取材における発言をまとめました。より明確に伝えることを目的として、一部、補足を加えています。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)

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