サツマイモ基腐病から日本のサツマイモを守る

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・サツマイモの主要産地である鹿児島・宮崎では、サツマイモ基腐病を主因として最大25%収穫量減
・焼酎用のサツマイモでは焼酎メーカーの生産量ベースで約3,500万本、売上高ベース換算で約300億円もの市場が失われ、国内大手メーカーでも一部販売休止に
・現状、サツマイモ基腐病に対する有効な手立てが現状見つかっておらず将来焼酎が市場から消えてしまう可能性も

 農園芸のイノベーションカンパニーであるwelzo(本社:福岡県博多区/代表取締役社長 金尾佳文)は、鹿児島・宮崎を中心としたサツマイモ経済圏を支えていくため、産学連携のコンソーシアム「みんなのサツマイモを守るプロジェクト-Save The Sweet Potato-」を設立いたします。
 本プロジェクトは、薩摩酒造株式会社(鹿児島県枕崎市)、小鹿酒造(鹿児島県鹿屋市)九州大学大学院農学研究室/土壌環境微生物学研究室、東京大学発アグリテックベンチャーのCULTA(東京都渋谷区)のほか、鹿児島県の農家の方々にご賛同いただき、活動いたします。
公式サイト:https://www.savethesweetpotato.com/

■サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)とは 

2018年に日本ではじめて発症が確認された「サツマイモ基腐病」(以下、基腐病)。糸状菌(カビの一種)が原因で、感染すると葉や茎が枯れ、サツマイモが腐敗する病気です。サツマイモの産地である鹿児島・宮崎を中心に、基腐病がまん延しており、焼酎メーカーなどサツマイモに関わる産業に大きな打撃を与えています。

■本プロジェクトの目的 

①農家、焼酎メーカー、大学など分野を横断した知見の集約により、基腐病の知恵袋に

基腐病に対する情報を共有し、サツマイモに関わるすべての人がつながることで、本コンソーシアムが基腐病の知恵袋となります。さまざまな角度から情報を集約・発信することで、基腐病からサツマイモを守り、SDGs(Sustainable Development Goals)でもある持続可能な農業の推進により、食料安全保障を実現することを目指します。

②いまだ解明されていない基腐病に対する「防除法」を研究・発信

全国のサツマイモ産地でまん延する基腐病に対して、いまだ効果的な防除法は解明されていません。本コンソーシアムでは、農家、焼酎メーカー、大学などが連携し、防除法を研究・発信してまいります。

③九州大学、スタートアップ含めた連携により、防除法や基腐病に強い品種の開発も視野に

九州大学や東京大学発アグリテックベンチャーのCULTAを含めた連携により、防除法の研究だけでなく、基腐病に強い新たなサツマイモの品種の開発なども視野に入れて、知見の集約や研究を進めます。

■焼酎約3,500万本、売上高約300億円もの市場が失われた日本の焼酎業界

鹿児島県でのサツマイモ収穫量は、日本全体の約35%を占め、国内のトップシェアを誇ります。鹿児島県を代表する特産品の1つである芋焼酎は、サツマイモを原料としており全国的にも有名です。実際、県内で栽培されるサツマイモのおよそ5割は焼酎の原料として使われています。

そうした鹿児島県を中心とした南九州で猛威を奮っているのが、基腐病です。日本では2018年頃からその感染が確認されており、その後全国各地に汚染が広がっています。鹿児島県では最初期からその被害が報告されており、それ以降毎年サツマイモの収穫量が減少している状態です。

特に、焼酎用のサツマイモでは、全体の生産量の約47%が失われ、焼酎メーカーの生産量ベースで約3,500万本、売上高ベース換算で約300億円もの市場が失われたことになります。

出典元:「かんしょをめぐる状況について」令和4年6月 農林水産省農産局地域作物課 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/imo/attach/pdf/siryou-3.pdf

■現状の対策では被害を食い止められないほど、感染力が強い「基腐病」

サツマイモ生産者へ取材すると、その最初期から基腐病の影響を受けており、その被害が深刻なことが明らかになりました。細かな違いがありながら、被害の状況は共通する部分が見られます。

1つ目は殺菌剤が効かないこと。他の病気を発症した場合でも、殺菌剤の使用はもっともポピュラーな対処法ですが、基腐病では有効な特効薬がいまだ開発されておらず、一度発症すると被害が一気に拡大してしまいます。基腐病に感染後、「コガネセンガン」や「べにはるか」といった品種の生産者では、例年の半分以下にまで収穫量が減少しました。

2つ目は感染力が強いこと。ある畑で発症すると、次第に周囲の畑も汚染されていき、耕うんで菌を地面深くに追いやったり、機械を都度洗ったりと、さまざまな対策を講じても被害が抑えられないのが現状です。

3つ目は有効な手立てが見つかっていないこと。生産者がそれぞれに、殺菌剤の散布のほか、さまざまな対策に取り組んでいますが、いずれも目立った効果が得られておらず、抜本的な解決には至っていません。

多くの生産者では、収穫量とともに収入が減少しながらも、基腐病への対応に追われており、コストや労力がかかる状態が数年にわたって続いています。負のスパイラルが続く状態で、サツマイモの生産を辞める農家の方々も増加しています。

現時点では、基腐病に対して有効な特効薬が開発されていません。対策も不十分で試行錯誤が続くなか、サツマイモ農家にとっては苦しい事態が続いています。本コンソーシアムにより、さまざまな機関や企業が連携し、一日も早く基腐病に対する抜本的な対策に取り組むことが求められています。そうでなければ近い将来、私たちの食生活を揺るがしかねない事態に陥るかもしれません。

国民食であるサツマイモ及び南九州を中心としたサツマイモ経済圏に対して一人でも多くの皆様からサポートいただければ幸いです。

■プロジェクトリーダーのコメント

後藤 基文 / 株式会社welzo Biz Promotion Division 取締役

「今回のプロジェクトを立ち上げた背景は、サツマイモ経済圏で生きている方々へ貢献していきたいという想いです。昨今、基腐病の問題が深刻化し、サツマイモ農家だけでなく、サツマイモに関わるすべての産業に大きなダメージを与えています。基腐病の被害が最もひどかった鹿児島県では、焼酎用のサツマイモ生産量約15万トン、焼酎メーカーの売上高にして約650億円のうち、約47%が失われました。焼酎メーカーの生産量ベースでは3,500万本、売上高ベース換算で約300億円もの市場が失われました。そして南九州一体は、サツマイモ経済圏があり農家、加工業、アルコールなど多岐に渡ります。その根幹となるサツマイモが取れなくなると全ての市場が喪失してしまうのです。そしてこのプロジェクトは、あえてコンソーシアム型という形を取らせて頂きました。弊社は、あくまでもこのプロジェクトの裏方で良いと思っています。この国民食であるサツマイモを守りたいという皆様に是非参画してもらい、一刻でも早くこの状況を打破できるように出来ることは何でも貢献していきたいと思っています」

【後藤基文プロフィール】

建築・外食などの事業会社を経てデロイトトーマツコンサルティングへ入社。中小企業のターンアラウンド(事業再生)、M&A業務に従事。地方・地域の中小企業・ベンチャー企業のさらなる成長の必要性を強く感じ、官民ファンドである地域経済活性化支援機構に転職。その後、事業再構築の当事者として中小企業経営者を支えるべく株式会社welzo(ウェルゾ)に入社。経営企画、広報ブランディング、新規事業(農業関連)、M&A、株式投資の責任者を務める。リブランディングの一環として2023年1月に社名変更・HPリニューアルを実施、同時に社内DXも推進中。また農業分野における様々な課題に対し、社内リソースを活用しながら社外との連携強化を積極的に模索している。

【株式会社welzo 概要】

食・農業を通して、持続可能な社会と人々の暮しを豊かにする商品やサービスを提供する、農業資材・家庭園芸用品・飼肥料原料を中心に取り扱う専門商社です。2022年で創業 101 年を迎えたニチリウ永瀬は、2023年1月1日をもって、「株式会社welzo」に社名を変更。BtoB を中心としたビジネススタイルを築き、国内に 19 拠点を置いています。社内外のビジネスパートナーと共創し、ITやAIの技術を活用しながら、日本が直面する課題にも積極的に取り組んでいます。

本 社

福岡県福岡市博多区博多駅東1丁目 14-3

代表者

代表取締役社長 金尾佳文

設 立

1952年8月(創業1921年8月)

資本金

470百万円

売 上

41,879百万円(2022年12月期)

事 業

農業資材・家庭園芸用品・飼肥料原料を中心に取り扱う専門商社

H P

https://www.welzo.co.jp/

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