コーポレートガバナンス・コードへの対応 ~ プライム上場企業でも「サステナビリティ対応」「多様性確保」の面で道半ば

この記事は約5分で読めます。
株式会社日本能率協会総合研究所(代表取締役社長:譲原正昭)は、日本企業における「取締役会及び取締役会事務局の実態」を具体的に把握する目的で、東証プライム上場企業を対象に調査を実施し、151社から回答を得ました。このたび、その結果がまとまりましたので、以下のとおりお知らせします。

【ポイント】
1.東証プライム上場企業であっても、コーポレートガバナンス・コード(以下、「CGコード」と表記)への
  対応では、「サステナビリティ」や「多様性確保」などの項目において、その対応は道半ばの状態にある
2.取締役会の監督機能として重視されているポイントは、「社外取締役の十分な活躍」及び「取締役会での
  活発な議論」の2点。
3.社外取締役は有益な助言を得られる存在であるが、探すのに苦労している。
4.実効性評価は取締役会の改善に役立つと認識する一方で、マンネリ化も感じている。
5.取締役会事務局のスタッフ育成について、その必要性は感じているものの、スキルの整理や育成の仕組み
  構築は進んでいない。

■ポイント1■
 
東証プライム上場企業であっても、CGコードの対応では、「サステナビリティ」や「多様性確保」などの
 項目において、その対応は道半ばの状態にある。

  CGコードの中から、図表1の14項目について、コンプライの状況及びコンプライしている場合の出来栄え
  (現状どの程度できているか)を確認したところ、以下のような結果となった。
  (1) コンプライ率が9割を下回るのは5項目。図表1・ピンク枠
  (2) コンプライしている企業における各項目の出来栄えについては、以下の5項目で「遅れている」「だいぶ
    遅れている」の合計が2割を超えている。図表1・赤枠
     ①サステナビリティを巡る課題への対応
     ②女性の活躍促進を含む社内の多様性確保
     ③CEO等の後継者計画及びその監督
     ④CEO解任の透明性ある手続き
     ⑤筆頭独立社外取締役の設置
   ※「サステナビリティを巡る課題への対応」や「女性の活躍促進を含む社内の多様性確保」は、
    2021年のCGコード改訂で導入されたもので、いわゆる非財務面での対応強化が求められるとともに、
    取締役会による監督の質も問われる部分となってくる。

 

■ポイント2■
 取締役会の監督機能として重視されているポイントは、「社外取締役十分な活躍及び「取締役会での

 活発な議論」の2点。
 (1)「2~3年前と比べて、取締役会の監督機能が高まった」とする企業は約8割。【図表2】
 (2) 取締役会の監督機能が発揮されていると思われる点について、「社外取締役が十分に活躍していること」
   及び「取締役会での議論が活発に行われていること」が上位2項目で、いずれも7割を超えており、
   監督機能として重視されている状況がうかがえる。【図表3】

 

■ポイント3■
 社外取締役
は有益な助言を得られる存在であるが、探すのに苦労している。
 (1) 「社外取締役から、取締役会の機能強化に資する助言を得られている」と認識している企業は、
   前回に引き続き9割を超え、社外取締役の存在は圧倒的に支持されている。【図表4】
 (2) その一方で、社外取締役を探すのに苦労している企業は半数を超え、前回と比較すると大きく
   増えている。【図表5】
 ※2021年のCGコード改訂により、独立社外取締役比率を3分の1以上とするように規定したことから、
  それにあわせて人数を増やした企業において、「苦労している」という意識が高まった可能性が考えられる。

■ポイント4■
 
実効性評価は取締役会の改善に役立つと認識する一方で、マンネリ化も感じている。
 (1) 「実効性評価は取締役会の改善に役立つ」とする企業が前回に引き続き8割を超え、特に「大いにそう
   思う」という積極的な回答が増えており、実効性評価を有効に活用しようとする姿勢がうかがえる。
  【図表6】
 (2) その一方で、実効性評価に関して何らかの課題をもっている企業は約8割(課題がない企業が約2割)
   であり、中でも「マンネリ化」は前回に引き続き5割を超えており、実効性評価の実施方法等において、
   まだ改善の余地があると推察される。【図表7】

■ポイント5■
 取締役会事務局のスタッフ育成について、その必要性は感じているものの、スキルの整理や育成の仕組み
 
構築は進んでいない
 (1) 取締役会事務局スタッフ育成の必要性を感じている企業は7割を超えており、増加傾向にある。
   スタッフ育成は、各社の共通課題となりつつある。 【図表8】
 (2) その一方で、育成に必要となる「スキルの整理」や「育成の仕組み構築」については、
    できている企業が1割前後となっており、必要性と現実との間にギャップが見られる。 【図表9・10】

 

【参考:調査データ】

 

 

【調査概要】
 ■調査時期 2023年1月
 ■調査対象 東証プライム上場企業
 ■調査方法 郵送配布、WEB回答
 ■回答数  回収数:151社、配布数:1,833社 (回収率 8.2%)
 〔参考〕前回調査 回収数:300社、配布数:2,610社 (回収率 11.5%)
          *2020年9月実施 ※東証1部・2部上場企業を対象

タイトルとURLをコピーしました