3月11日。大地震のあの日、医ケア児者ファミリーのご家庭は?

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去る3月2日、SWCあいの実『仙台あばいんプロジェクト』主催の交流イベントにて、医療的ケア児者ファミリーへのインタビューが実現しました。テーマは『東日本大震災のあの日、医療的ケア児者のいる我が家はどんな状況だったのか』。
震災当時、宮城県仙台市や栗原市にお住まいだったファミリーが、貴重な体験談を語ってくれました。
ー来たる3月11日。
東日本大震災から12年を迎えようとしています。

東北・仙台市のSWCあいの実では、新施設の開所を前に
『災害に強い福祉施設』
『緊急時の医ケア児者ファミリーの砦』
でありたい、との思いを強めています。

(写真:開所間近の、SWCあいの実・医療型ショートステイ『ストロベリー』を含む複合施設)

医ケア児者ファミリーでは、毎日が緊急事態と隣り合わせです。
災害時にはさらに逼迫した状況に陥りがちです。
SWCあいの実『仙台あばいんプロジェクト』事務局では、去る3月2日、医ケア児者ママたちとの交流イベントにて、
『大地震のあの日、医ケア児のいるご家庭の状況はどうだったのか?』
に対するファミリーの声を集めました。抜粋をご紹介します。

■医療的ケア児者ママ(仙台市)Nさん
『あの日は、ショッピングセンターのフードコートにいました。建物は大きく揺れ、周囲の壁からは、粉塵が舞っていました。子供のバギーを押して、外へ出ようとすると近くにいたお婆さんが抱きついてきました。火事場のなんとやらで、右手にお婆さん、左手で子供のバギーを押し、なんとか外へ。駐車場の車は、それぞれに大きく揺れ、バギーが倒れないよう支えました。

・・・子供の体調管理の他に、食料・水・電気・ガソリン、、、どのように調達するかに神経を使いました。・・・義母に子供を見てもらい、毎日どこかしらに並んでいました。寒い中、何が買えるかもわからないまま何時間も並び、やっと店内に入れても一人3点までという制限付き。「なんとかなる」「もっと頑張っている方々がいる」「私なんか、弱音を吐ける立場じゃない」

・・・平時からの防災への備えは、食糧や物品は勿論の事、子供の状態の周知が本当に大切です。「助けが必要です。お願いします。」と言えるご近所付き合いを日頃から心がけています。「助けられ上手」になる事は、ハンデを抱える家庭にとって、最大の防災になると考えています』
 

■医療的ケア児者ママ(仙台市)Kさん
『停電4日間、断水11日間でした。もともと宮城県沖地震がくると言われていたのでそれなりに備えてはいました。・・・医療物品もコツコツとためていました。シリンジでの吸引のやり方も知識としては知っていました。吸引も電動手動を使い分けて何とか乗り切りました。

・・・おむつ、ペットシーツ、体拭きシートやペットボトルシャワーなど、普段のケアで使ってるものが私たちも役に立ちました。・・・普段から買い物も自由に行けなくて個配まとめ買いしていたのも助かりました。何かあっても列に並べないだろうからと水や食品は意識して準備していました。

・・・5月に疲れが出たのかICU入院しましたが、直後に病院にこなくてよく乗り切った!と先生にほめてもらいました。振り返ると、(医療的ケアの必要な息子さんのお名前)との生活のおかげで乗り切れた!と思います』

被災時、宮城県栗原市にお住まいだった美恵子さんからも、詳しいお話を聞かせて頂きました。

(写真:医療的ケア児者ママである美恵子さんと息子さん。美恵子さんは自宅で、3Ⅾデザインとハンドメイドによる雑貨やアクセサリーの制作、販売をしておられます。イベントの参加やワークショップの開催企画を希望しているものの、自由な時間が少ないのがお悩みです)

■医療的ケア児者ママ(被災当時宮城県栗原市に在住)美恵子さん
 『気管軟化症などで医療的ケアの必要な息子・・・の食事は胃ろうからの経管栄養です。いつものように吊るして滴下させるのは危ないし、いざという時逃げられないと思ったので、大きめの注射器にラコールを入れてゆっくり手で押して注入しました。1時間程かけて注入が終わった頃には外もすっかり暗くなって・・・。

ニコニコしている(医療的ケアの必要な息子さんのお名前)に、地震が起きていて電気がつかないこと、お風呂には入れないこと、きっとお友達もみんな大丈夫だからということを伝えると「そうなんだー」という顔をして少し考えてから、手を上げて「わかったよ!」と返事をしてくれました。

酸素屋さんは、地震後から電話が繋がらなかったのを心配して、自宅まで来てくれました。

病院に行くにはガソリン不足・・・高速道路が使えず何時間かかるかわからず、たどりつけるか不安でした。

水だけでも、と思いましたが給水車まで長蛇の列で・・・雪も降りそうな寒さの中で息子に何時間も並ばせるわけにはいかず・・・一旦自宅に戻りました。

ガソリンスタンドに並ぶ列を離れ、車で待機する息子が気になって行ったり来たり・・・戻ると皆さんは文句も言わず列に入れてくれて・・・感謝で涙が出ました。

注入で使い終わったイルリガートルの消毒にも困ったのですが、お酢を薄めた液を流すことで消毒代わりにして・・・。

予測不能なことが多く・・・そのひとつが、救急車の要請でした。電話では呼べないので、今後またこういう事態が起きたら、消防署や病院にできる限り自力で行き搬送してもらおうと思っています。

問題なのは電源の確保です。電源が必要なのは吸引器に吸入器、サーチレーションモニターに連絡用の携帯電話でした。発電機はありましたが、長時間の停電も予想されたので・・・。

手助けが必要な方と支援する側をしっかりとつなぐためにも、福祉避難所が必要だと感じました』

 
ー取材中感じるのはファミリーのメンタルの強さです。
常日頃から緊張感の中、懸命にバランスを取りつつ生活されている医療的ケア児者ファミリー。
災害時、ライフラインを絶たれ、どのご家庭より不利になりながらも、状況を受け入れ冷静に行動する強さがあります。
とは言え、必要なのは救急車、ガソリン、連絡ツール、酸素、入院、薬、福祉避難所。
個人レベルで解決できる備えは限られます。

『日々の外出もママのパートも困難な医ケア児者ファミリーが、災害時はどうなるのか』
『地域社会とのつながりは、ほぼ制度がらみだけ。災害時の孤立をどう防ぐか』

医療的ケア児者ファミリーの『生きる』と『生きがい』に寄り添うSWCあいの実が、正面から向き合わなければならない問題です。

医療的ケア児者ファミリーの『生きがいを広げる』仙台あばいんプロジェクトを、READYFORでご支援下さい!
SWCあいの実は、『医ケア児ママのカフェを建てたい!資材・燃料費高騰につき緊急のお願い』でクラウドファンディングにエントリー中です。READYFORでご支援頂けるのは、3月15日23時までとなります。下記をクリックしてプロジェクトの概要をご覧ください。

医ケア児ママのカフェを建てたい!資材・燃料費高騰につき緊急のお願い(SWCあいの実 2023/02/01 公開) – クラウドファンディング READYFOR
 

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