蒸し餃子の湯気が漂う厨房(ちゅうぼう)の前で、すし職人がテンポよく大トロを握る。今月、東京都内で始まったグルメイベント「日本における遼寧の味 ― 遼寧料理を日本の中華レストランへ」。試食会2日目は「遼寧の餃子と日本のすしの出会い」がテーマだ。
今回の舞台は新宿区にある中華料理「兆奎餃子」。中国側は、瀋陽にある餃子の名店で働いた経験を持つ王海峰氏が、日本からは「築地青空三代目」本店板長の石渡雄一郎氏が腕を振るった。
■餃子とすしの競演
肉汁をたっぷりと含んだ蒸し餃子やサクサクとした歯ごたえの羽根付き餃子と、新鮮な赤身と白身の握りずしとが店内のテーブルで競演。試食会に参加した約20人のゲストが、日中を代表する美食を堪能した。
メニュー:
涼拌海蜇皮(くらげの冷菜)
熗拌土豆絲(じゃがいもの細切りソテー)
黒酢木耳(黒酢キクラゲ)
黒酢豚
酸菜燉排骨(豚バラ肉と野菜のピクルス)
豚肉水餃子
海老水餃子
キャベツ水餃子
酸菜蒸餃(酸菜入り蒸し餃子)
素三鮮冰花煎餃(羽根付き餃子)
すし(マグロ、カンパチなど)
■思いをこめた餃子
店内や通りからも見ることができる厨房で、純白の調理服に身を包んだ王氏は、厚めに仕上げた餃子の皮でつやのあるあんを次々と包んでいく。厨房の奥では、作りたての餃子を蒸したりゆでたりする蒸気が立ちこめ、具材を中華鍋で炒める音が響いた。
王氏は、本場の味をベースに、油を少なくして野菜を増やすなど、日本人好みに調整していると言う。
「思いを込めて作った餃子を日本と中国の方々に食べてもらえるように力を尽くしている。これからもより多くのみなさんに楽しんでもらえるよう頑張る」と、王氏は意気込みを語った。
■江戸前の技
客席に設けられた特設の板場では、すし職人歴19年の石渡氏が江戸前の技を披露。小さめのしゃりの上に大ぶりの大トロ、カンパチ、ヒラメをのせ、軽やかに握っていく。赤身にはしょうゆをはけで塗り、白身にはすりおろしたユズの皮でアクセントをつける。
石渡氏は餃子とすしを味わうメニューについて、「中華料理の油の部分と日本料理のやさしい感じの味。お魚がマイルドに甘くなる気がする」と話す。
■食は万国共通
中華料理と日本料理について、「違った料理なのでしょうけど、おいしいものを食べてもらいたいという気持ちは一緒」と石渡氏。
「気持ちで勝負したい。お料理の味は人それぞれ違うと思う。一口食べた時の、作った人の感覚や思い。そういう気持ちを大切にしていきたい」と言い、食の楽しみや料理人の誇りは万国共通だと付け加えた。
ゲストとして参加した日本人の遠藤丈太郎さんは、「なかなか異質な組み合わせ。おすしと餃子の組み合わせは面白かったしすごくよかった」と話した。
■双方向で交流を
会場で試食した日中友好協会の永田哲二常務理事は、中国のグルメイベントに日本の料理人が参加する意義について、日中双方向の関わりが大切だと言う。
「料理人を目指す中国の調理師はもちろんのこと、日本の調理師も文化の交流に積極的になる。そういうことが増えれば」と、期待を込めた。