【新型コロナ】「がん」「糖尿病」患者の受療行動が変化

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重症患者に対応する「急性期病院」の経営コンサルティングなどを行う株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC ※1=本社・東京都新宿区、代表取締役社長・渡辺幸子)はこのほど、GHC保有の医療ビッグデータを用いて、国内で比較的患者数が多い「悪性新生物(がん)」と「糖尿病」の患者を調査しました。新型コロナウイルス感染拡大の前後でデータ比較し、それぞれの疾患における受療行動が変化していることが分かりました。
新型コロナの影響で国内の受療行動が大きく変化しています。手洗いやマスク着用の徹底による感染防止策が広まったことで、肺炎やウイルス性胃腸炎など感染症による入院患者が激減しています。

今回は国内で比較的患者数が多く関心も高い「がん」と「糖尿病」の患者を調査しました。調査はGHCが保有する「匿名加工DPCデータ ※2」と呼ばれる医療ビッグデータを用いて分析しました(レポートの詳細は以下のURLからご確認ください)。

<レポート詳細 ※3>
◆コロナ禍におけるがん受療動向の変化
https://www.ghc-j.com/document/arv2_cancer_2207/

◆糖尿病患者の外来の現状
https://www.ghc-j.com/document/arv3_diabetic_2208/

コロナ禍で進んだがん化学療法の外来移行

がん患者の調査に用いた匿名加工DPCデータは580病院(入院データ:580病院、外来データ:304病院)。

 
外来受診回数は、第1波(2020年4~5月)に4割減と激減したものの、2021年12月にはコロナ前の水準にまで戻ってきています。入院患者における手術なし症例については、2021年12月時点のデータを見る限り、症例数がコロナ前を下回る状況が続いています(図表)。GHC調査担当アナリストの菅原啓太は「化学療法など外来での運用がなされた可能性がある」と指摘しています。

図表:部位別がん手術なし症例の増減率の推移図表:部位別がん手術なし症例の増減率の推移

手術あり症例については、コロナ感染拡大期に減少する検査とほぼ連動し、検査減少の約2か月遅れで手術件数が減少していました。

糖尿病、軽症や初診患者が受診控えの可能性

糖尿病患者の調査に用いた匿名加工DPCデータは182病院(外来データ)。

今回の調査では、糖尿病患者を一人当たりの月間受診回数で分類。受診回数が少ないほど、軽症の症例だったり、初診患者だったりする可能性が高いと言えます。この分類で分析した結果、最も患者数が多い月1回の受診症例の受診数は、2019年度と比べ、2020年度や2021年度は約1割低下していました。GHCの調査担当アナリストで理学療法士の穴田周吾は、「軽症や初診の患者が受診控えしている可能性がある」と指摘しています。

また、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置期間やその前後に受診回数減少のピークが見られ、それを過ぎると患者数が戻るという傾向も確認できました。

当社では今後も医療の質向上や病院経営の効率化に関するテーマを軸に医療ビッグデータを分析し、情報発信してまいります。

(※1)株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン
医療専門職、ヘルスケア企業出身者、IT専門家らで構成される経営コンサルティングファーム。急速な高齢化で社会保障財政の破たんが懸念される中、「質の高い医療を最適なコストで」の理念を実践する具体的な手法として、米国流の医療マネジメント手法「ベンチマーク分析」を日本に初めて持ち込み、広めたパイオニアです。http://www.ghc-j.com/

(※2)匿名加工DPCデータ
包括支払い方式で入院医療費を請求する「DPC(診療群分類別包括払い)制度」の対象病院が作成を義務付けられている「DPCデータ」にある個人情報を匿名加工したもの。DPC制度は、従来型の出来高制度と比較して、1日当たりの報酬が決まっているため、過剰な診療の抑制や必要なコスト削減を促すことが期待できる。主に病床数が多く、重症患者を診療する急性期病院の多くが導入している。対象病院は1730病院。

(※3)レポート詳細
当社では、医療に関する興味深いテーマについて、医療ビッグデータを用いたレポート「アナリストレポート」を随時、発表しております。レポートの調査は、医療現場を経験したデータサイエンティストである当社コンサルタントが担当しています。https://www.ghc-j.com/document/

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