「自分の意見に価値があると思う」「社会問題の解決に関わりたい」校則見直しに取り組んだ生徒・先生・保護者に対する意識調査

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認定特定非営利活動法人カタリバ(本部:東京都杉並区、代表理事:今村久美、以下 カタリバ)は、2022年8月に文部科学省が定める生徒指導における手引書「生徒指導提要」が12年ぶりに改訂され、新たに生徒参加に関する観点が明記されることが大筋で了承されました。それに伴い、全国で対話的な校則見直しに取り組んだ生徒・先生・保護者を対象に、その実践によってどのような変化が生まれたのか、調査結果をまとめましたのでお知らせします。

■ 校則は児童生徒が自ら見直し続けるものへ。生徒指導提要の改訂とは。

「生徒指導提要」とは生徒指導に関する先生の手引書で、全国の教育委員会、小中高校は生徒指導提要に従って指導を進めています

現行の生徒指導提要が作成された2010年以降、学校現場ではICTの普及や性の多様性、発達障害への合理的配慮、人権侵害の恐れがある校則の見直しや廃止などが全国的に広がるなど、子どもたちを取り巻く環境が変化しています。

そうした背景から時代にそぐわない可能性がある内容を見直すべく、改訂の対象となりました。「校則」についても新たに生徒参加に関する観点が明記される予定です。改訂内容案は以下のとおりです。
 

  • 校則見直しの過程に児童生徒・保護者等の学校関係者からの意見を聴取した上で定めていくことが望ましいこと
  • 校則見直しの過程に児童・生徒自身が関与することが教育的意義をもつことが明記
  • 校則が制定された背景についても示すこと
  • 子どもの意見表明の権利をはじめとした4原則が明記
  • 絶えず校則を策定・見直し続けるために、どのような手続きを踏むべきか、その過程について示しておくことが望ましいこと
  • 校則は学校のホームページに公開すること

カタリバでは2019年から生徒・先生・保護者や地域の方と対話を重ね、納得解をつくることを大切にする校則見直し「みんなのルールメイキング」プロジェクトに取り組んでいます。

2020年度・2021年度にルールメイキングを実践した全国13校での意識調査や、各校でのアンケート調査の結果をもとに、校則見直しのプロセスを通じて生徒・先生・保護者にそれぞれにどのような変化が生まれるのかをまとめました。

■ 調査から分かること

校則の見直しを生徒主体、かつ対話的な方法を用いて実践(=以下、ルールメイキング)をした学校では、生徒の意見表明や社会参加への高い意欲のほか、先生方の職場環境における心理的安全性の向上、保護者の学校に対する前向きな印象を醸成することがわかりました。
 

  • 活動に参加した生徒は、参加していない生徒と比較して「自分の意見には価値がある」「社会をよりよくするために関与したい」と回答する割合が高い
  • 先生の約7割が「本音を気兼ねなく発言できる雰囲気がある」と回答
  • 保護者約8割が「学校は生徒自身が行事や学校生活のことを決めることを大切にしている」と回答

■ 活動を中心的に進めた生徒は、かかわりが薄い生徒よりも「自分の意見に価値がある」と回答

ルールメイキングの活動を1年間に渡り中心的に進めてきた生徒と、活動への関わりが薄い生徒を比較する研究調査を実施しました。

その結果「自分の意見に価値があると思う」という設問に対し、活動に取り組んだ生徒は、取り組まなかった生徒と比べて約25ポイント高いという結果になりました。

また「社会をよりよくするために、社会問題の解決に関与したい」という設問には20ポイント高いという結果になりました。

■ 先生の約7割が「本音を気兼ねなく発言できる雰囲気がある」と回答

高校魅力化の取り組みの一環として、ルールメイキング活動に取り組んだ学校でアンケート調査を実施しました。(*2)
7割の先生が「本音を気兼ねなく発言できる雰囲気がある」と回答。さらに約9割以上の先生が「失敗してもよいという雰囲気がある」「人の挑戦に関わる機会がある」「立場や役割を超えて協働する機会がある」と回答しました。

■ 保護者の8割が「学校は生徒自身が行事や学校生活のことを決めることを大切にしている」と回答

ルールメイキングを実践した学校の保護者に向けたアンケート調査を実施しました。(*3)
「学校は生徒自身が行事や学校生活のことを決めることを大切にしている」という設問に対して、85.2%の保護者が「大切にしている」と回答しました。
 

 

また調査に参加した保護者からは、下記のような声が寄せられました。
ーーーーー
「ルールメイキングは自主性や自立性を促すことにつながると思い、とても良い取り組みだと思います。」
先生の指示待ちではなく、自ら考え行動にうつし失敗成功を繰り返し成長できるようになってきている。」
「時代に合わせただけの形だけの取り組みでは終わらせず、今後も続けていってもらいたいです。」
ーーーーー

■【まとめ】対話的な校則見直しは、生徒・先生・保護者にポジティブな変化を生み、市場形成力の形成にもつながる

生徒指導の手引きが12年ぶりに改訂されることになり「校則」に関連する項目に新しい観点が加えられ、今の時代に合った学校づくりの中で「生徒自身が校則見直しの過程に関与すること」が示される想定です。今回の調査によって、さらに生徒中心の校則見直しの活動によって得られるものが明らかになりました。

前述の通り、生徒が中心となり先生・保護者・地域の方と協働しながら対話的に校則見直しを行うことで、それぞれに次のようなポジティブな変化が生まれています。
 

  • 生徒は意見表明や社会参加に高い意欲を示す
  • 先生方の職場環境における心理的安全性の向上
  • 保護者の学校に対する前向きな印象(生徒の主体性を重んじてくれている)を醸成

「校則」を題材に、関係者との対話を重ね、納得解を導き出し「ルールは自分たちで変えられる」ことを実感した生徒が、社会参加に対して前向きに捉えるようになったり、そのような生徒たちの様子を目の当たりにした保護者の心境にも変化が生まれているということはとても興味深いと感じます。

また昨今、ビジネス業界では、社会課題解決を新しいビジネスの機会と捉え、ルールメイキングを活用し、新たな市場を形成する力=「市場形成力」という言葉が生まれています。「新たな市場形成はルールづくりから始まる」とも言うことができ、ルールメイキングの力は、学校を卒業して社会に出てからも必要な力であり、育むべき力であるという見方もあります。

今後、生徒指導提要の改定により、さらに校則見直しの活動は全国に広がっていくことが予想されます。ただ単純に「校則を見直した」「校則が変わった」という結果というよりも、そのプロセスに生徒たちがどのような深度で関わり、そうしたルールメイキングの経験を元にどのようなことを考え、どのような力を育むことができるのか。その「校則見直しの中身」によって、生徒たちの未来、ひいては日本の未来が変わってくるのかもしれません。

■ 認定特定非営利活動法人カタリバとは

どんな環境に生まれ育った10代も、未来を自らつくりだす意欲と創造性を育める社会を目指し、2001年から活動する教育NPOです。高校への出張授業プログラムから始まり、2011年の東日本大震災以降は子どもたちに学びの場と居場所を提供するなど、社会の変化に応じてさまざまな教育活動に取り組んでいます。

<団体概要>
設立   :2001年11月1日
代表   :代表理事 今村久美
本部所在地:東京都杉並区高円寺南3-66-3 高円寺コモンズ2F
事業内容 :高校生へのキャリア学習・プロジェクト学習プログラム提供(全国)/被災地の放課後学校の運営(宮城県女川町・岩手県大槌町・福島県広野町・熊本県益城町)/災害緊急支援(西日本豪雨、令和元年東日本台風、熊本豪雨)/地域に密着した教育支援(東京都文京区・島根県雲南市・島根県益田市)/困窮世帯の子どもに対する支援(東京都足立区)
URL   : https://www.katariba.or.jp/

■ 調査概要

*1 
調査名:「生徒の変化に関する調査研究」認定NPO法人カタリバ
みんなのルールメイキング調査研究報告書より
調査対象:2021年度ルールメイキングプロジェクト先進事例校・実証事業校 全国13校
調査方法:質問紙調査、参与観察、インタビュー調査
調査実施者:研究統括 古田雄一、認定NPO法人カタリバ/データ取得・分析:研究コアチーム(10名)によって実施。
調査期間:2021年4月1日〜2022年3月31日
報告書:https://onl.la/wvGBEjx

*2
調査名:高校魅力化評価システム調査
調査対象:岩手県立大槌高校 生徒・先生
調査実施者:地域・教育魅力化プラットフォーム、三菱UFJリサーチ&コンサルティング
調査方法:インターネットによるウェブアンケート
調査期間:2019年5月〜2020年8月

*3
調査名:学校マネジメントプランにおける学校像検証調査
調査対象:泉大津市立小津中学校 生徒・保護者
調査実施者:泉大津市立小津中学校
調査方法:質問紙調査
調査期間:2020年4月1日〜2022年3月31日

■ 問い合わせ

取材に関するお問い合わせは下記フォームにご入力ください。
https://www.katariba.or.jp/report/ (担当:カタリバ広報 阿部)

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