和歌山の小学生が海の現状や生態系を考え感じるイベント「紀南が未来を変える〜わかやま海守り隊2023~」を開催しました!

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一般社団法人海と日本プロジェクトin和歌山県(テレビ和歌山内)は、次世代を担う子ども達に「和歌山の海」の美しさや海を守ることの大切さを再認識してもらうことを目的に、9月16日(土)~9月17日(日)の2日間、和歌山県串本町で体験型学習イベント「紀南が未来を変える~わかやま海守り隊2023~」を開催しました。参加者は和歌山県内の小学校5・6年生20名で、「海守り隊」として、1日目は和歌山県(串本町)の海が抱える危機や持続的な水産資源確保の課題について、近畿大学水産研究所大島実験場で「サンゴの保全活動や県の水産業の現状、水産資源を守る一つの方法である養殖業の課題や役割」を学びました。その後、串本港内にある「クロマグロの養殖生簀」で見学・餌やり体験、潮岬青少年の「串本の海水から塩づくり」を実体験して、海の恵みの大切さを学習しました。2日目は串本港内での「珍魚釣り体験」、串本海中公園でのバックヤード体験・海中展望塔見学で、近海の生き物に実際に触れて観察を行い、串本の海の生き物の特徴や生態系のバランスについて学び、串本の海で起こっている危機について学習しました。そして、最後にこのイベントを通して、感じたことや学んだことから、これから海のために自分たちには何ができるのかをチームで話し合い、海を守るための宣言に仕上げました。

このイベントは、次世代へ海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

  • イベント概要

・開催概要:和歌山県内の小学校5・6年生20名を「わかやま海守り隊」に任命。2日間のイベントを通して、子どもたちが和歌山の海を守り、海の大切さを未来に伝えるのに必要なことを学び、感じたことをチームで話し合い、海を守るための宣言で表現する体験型学習イベント。

・開催日程:2023年9月16日(土)~17日(日)1泊2日

・開催場所:串本町(串本海中公園・近畿大学水産研究所大島実験場・潮岬青少年の家・串本港)

・参加人数:和歌山県内の小学校5・6年生20名

・協力団体:近畿大学水産研究所大島実験場/南紀串本観光協会/潮岬青少年の家/串本海中公園

  • 串本には2つの海がある⁉海で起こっている危機や課題について、サンゴの保全活動・最新の養殖技術・和歌山県の水産業の現状を学習。

初めに、南紀串本観光協会の宇井晋介事務局長より串本の海について、説明を受けました。「串本の海は温帯域にありながら海の中は亜熱帯の海になっている」、「黒潮の影響で串本の海は潮岬を挟んで東西で海の中の温度や生き物に違いがある」、「西の海(串本~白浜)は暖かな黒潮の影響でサンゴが群生し、東の海はやや冷たい海であるため海藻が茂っている」、「海の中が熱くなりすぎると、サンゴも死んでしまい、海藻も取れなくなってしまう」ことなどを学習しました。宇井事務局長は子ども達たちに「この素晴らしい海を守るために、海のことをもっと知ってもらい、もっと海で遊んで欲しい」と話されました。

続いて、近畿大学水産研究所の升間主計所長から、和歌山県の水産業の現状や持続的な水産資源を確保するための1つの方法である養殖業の大切さを教えて頂きました。升間所長は、水産資源は環境バランスの良い海と適切な漁獲量を守っていれば再生産が可能な資源だが、近年は水温や海流の変化など環境の悪化により魚の数が減り、漁獲量が消費量を下回っており、その不足した分を補うために増殖技術や最先端な養殖技術を研究し、天然の水産資源に依存しない完全養殖に力を入れていると話されました。中でもクロマグロの完全養殖は難しく、マグロは稲光でパニックを起こしてしまったり、台風の影響で海の中が濁ってしまうと、生け簀の網に体をぶつけてしまったりして死んでしまうことがあることを教えて頂きました。その後、実際に養殖生け簀を見学し、餌やりを体験しました。子ども達からは「クロマグロを完全養殖するにあたって、苦労したことは?」、「クロマグロが成長するのに大切なことは?」などの質問が出てきました。升間所長のお話や養殖生け簀見学を通して、「なぜ、海を汚してはいけないのか?」、「なぜ、養殖が研究されているのか?」を知り、子ども達一人ひとりに何ができるのかを考えるきっかけになったと思います。

  • しょっぱい⁉辛い⁉まろやか⁉串本の海水を使った塩づくり体験!実体験することで海の恵みのありがたさを感じる。

宿泊先でもある潮岬青少年の家で後藤歩指導員より串本の海水から塩づくりの指導を受けて体験しました。2人1組の班に分かれて、海水(500cc)をろ過して、小さな海藻・マイクロプラスチックといったごみ等を取り除く→煮詰める→再度ろ過→フライパンで更に煮詰める→塩とにがりに分ける→乾かすといった工程で塩(約12g)に仕上げていきます。子ども達のほとんどが塩づくりは初めての体験で、目を輝かせながら取り組んでいる姿が印象的でした。出来上がった塩の味見をして、「辛い」、「まろやか」など各々の感想を述べていました。中には他の班が作った塩と自分たちが作った塩の味を比べ、「こっちの塩は味が尖っている」といった大人顔負けの食レポをする子どももいました。

こうして作られた海の恵みである塩が自分たちの生活をどう支えているのか、例えば、「海と日本プロジェクトin和歌山県」とのコラボ商品である梅干し(カツオ・昆布)の製造にも塩が欠かせないこと、食品以外でも工業の分野ではアルミ製品や石鹸やパルプの製造に欠かせないことなどを学習しました。後藤指導員は「みんなとても上手に出来ました。食卓に並んでいる塩がこうやって何段階もの工程を経て苦労して作られているのだということ、塩づくりには新鮮できれいな海水が必要であることを覚えていて下さい」と締めくくりました。子ども達も塩づくりからきれいな海を守ることの大切さを感じていたようでした。

  • 大物・レアものゲットなるか⁉串本の海での珍魚釣り体験!釣獲した魚を通じて、串本の海の生態系バランス・課題について考える。

串本港内で「珍魚釣り体験」を南紀串本観光協会の宇井晋介事務局長の指導のもとに体験しました。和歌山県串本地方には1500~2000もの多種多様の魚が住んでおり、沿岸地域は日本初の海中公園になっています。そんな海ではカゴカキダイやミノカサゴ・サザナミフグ・クマノミなど多くの魚が釣獲でき、これまでには本州で初めてキテンハタが釣獲されています。そんな話を聞き、子ども達は大物・レア物を狙って、海に釣り針を投げ入れていました。釣獲した魚は1日だけの水槽に移され、子ども達は宇井事務局長から1匹1匹、特徴や生態について説明を受けながら観察しました。この日、釣獲されたのは全部で11種類で、1番最初に釣獲された魚が「クマノミ」、1番多く釣獲された魚が「マアジ」、1番大きかった魚が「ボラ」、1番珍しかった魚が「クロサギ」・「ネズミゴチ」でした。釣獲した魚を海に逃がした後、最後に宇井事務局長は子ども達に向けて、「魚はとても温度の変化に弱い生き物であり、1℃や2℃の差で死んでしまう。魚はそんな変化に気づき、自分で泳いで移動できるが、サンゴは動けない。我々人間のせいで、海温が上昇しているのであれば、我々のちょっとした気持ちの変化でそれを食い止めることができるのではないか?」と子ども達に自身で出来ることを考えて欲しいと話されました。また南紀独特の漁法の「船から長い竿を出して船を走りながら釣るケンケン漁」についても仕掛けを見ながら説明を受けました。子ども達からは、「初めて釣りをしたけど、釣れて楽しかった」、「串本の海の生き物について知れて良かった」などの感想が上がっており、海を身近に感じ、考えるきっかけとなったのではないかと思います。

  • うみがめの赤ちゃんに触れてみた!串本海中公園でバックヤードツアー!串本の海の中は生き物でいっぱいだった!

串本の海に住んでいる生き物の展示にこだわった串本海中公園で森美枝館長から串本の海の特徴やそこに住む生き物について教えて頂きました。黒潮の影響を受けている串本の海は、抜群の透明度と冬でも15℃を下回ることがない温かい水温を誇り、そこでは、色とりどりの熱帯魚や世界の北限と言われる本州最大のテーブルサンゴの群落など美しい海中景観が1年中楽しめます。そんな串本の海を再現した水族館や水深6mの自然の海の中を観察できる海中展望塔を見学し、子ども達は食い入るように生き物を観察していました。中でも、水族館でのサンゴの飼育年数日本一を誇る「ウミバラ」の大きさにはとても驚いていました。バックヤードツアーではムラサキヒトデ・マンジュウヒトデといった近海の生き物のほか、ウミガメの赤ちゃんに直接触れて、生態や飼育状況について学習しました。子ども達は「ウミガメはどのくらい生きるのか?」、「ウミガメは何を食べるのか?」など、積極的に質問していました。森館長は「串本の海は世界的に見ても珍しい、生き物がたくさんいる海。串本海中公園では50年もの間、海の中を見続けてきたが、その間にも水温の上昇、熱帯の生き物の増加、サンゴの減少などといったことが起こっている。これからもずっと、海の中を見続けていかなければならない。みんなも海の中に入ってみて、どこか変化している所はないだろうかと考えていって欲しい」と話されました。子ども達も実際に生き物を見て触れて、こんなにたくさんの生き物がいる豊かな海を大切にしていかなければと改めて感じてくれました。

  • 「和歌山の海を守る!」子ども達の想いを込めた【宣言】を作成。JR和歌山駅などに掲出して拡散していく予定。

2日間を通して、子ども達1人ひとりが学んだこと・感じたことをもとに自分たちはこれから海のために何ができるのだろうかということをグループのみんなで話し合い、1つの「宣言」を作成し、みんなの前で発表しました。「プラスチックごみを減らすために、①レジ袋からエコバックへ、②ごみをきちんと分別する、③リサイクル・リユースを心がける」、「ごみを捨てない!①珍魚釣り体験を通して、漁師さんが大切にしている海を汚してはいけないと思った、②海にごみがあると魚が減ってしまうこと学んだ」、「きれいな海を守るために、①ごみのポイ捨てをしない!②山・川をきれいに!③節電する!④限られた資源を守る!」、「海の温度を上げないために、①CO₂を出さない、②電気を節約する、③1人ひとりがごみを出さないようにする、④ごみを分別する、⑤プラスチックを使わない」、といった4つのグループそれぞれ、想いがこもった「宣言」が出来上がりました。2日間で勉強したことや体験したことを、自分が和歌山の海を守っていくという想いに変えて、他の参加者と共有することで、海を守っていくことの大切さを改めて考える機会となりました。

なお、今回、子供たちが発表した「宣言」を一枚にまとめたポスターを作成し、JR和歌山駅、串本駅に掲出、わかやま新報・紀伊民報へ掲載されるほか、推進パートナーとのコラボ商品(梅干し)等で活用し、拡散していきます。

  • 参加した子ども・保護者からの声

・海の大切さを友達にも伝えたい。

・サンゴの種類が変わってきていることに驚いた

・今の和歌山の漁業の現状を知れて良かった。

・たくさんの「人生初」のことがあって、楽しかった。

・クロマグロの養殖生け簀を見れて良かった。

・海は山の栄養をもらって魚たちを育てていることが分かった。もっと詳しく勉強したい。

・子どもにとって非常に素晴らしい経験をさせることが出来感謝です。(保護者)

<団体概要>

団体名称:一般社団法人海と日本プロジェクトin和歌山県

URL:https://wakayama.uminohi.jp/

活動内容:和歌山の豊かな海を未来に残すため、次世代を担う子どもや若者を中心に全ての県民に海の大切さ・大事さ・豊かさなどを再確認し多くの方が海への関心を高め、海の大切にする心を育てる運動を推し進めています。

日本財団「海と日本プロジェクト」

さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。

海と日本PROJECT【日本財団】
日本全国の海に関する様々な情報を日本財団「海と日本PROJECT」がお届けします。おでかけにぴったりなイベント情報や、海の現状を知る最新調査報告など、海を知って、海を思い、海に集うための情報が満載です。
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