
重度障害・難病ケアの専門事業者であるユースタイルラボラトリー株式会社は、国内最大手※の重度訪問介護サービス事業者として、ALS(筋萎縮性側索硬化症、以下ALS)患者様への国内最多※の支援に携わってまいりました。
日々のケアに留まらず、ALS患者様の在宅環境の抜本的な向上を後押しするため、このたび難病専門誌『難病と在宅ケア』と共同で、ALS患者様の在宅支援に関わるご家族および支援職を対象とした実態調査『ALS患者の在宅支援に関する実態調査アンケート』を実施しました。
ALSに関する啓発デーである6月21日「世界ALSデー」に先駆け、厚生労働省にて発表した内容を公開します。
支援者への全国調査の背景:ALS支援に関わる人から見える課題を可視化

ALSは、筋肉を動かす神経(運動ニューロン)が徐々に変性し、全身の筋力低下と萎縮が進行する難病です。意識、感覚、知力は保たれる一方、手足、会話、呼吸の機能が失われていきます。日本国内の患者数は約1万人と推定されています。
進行に伴い痰の吸引や経管栄養といった医療的ケアを含む24時間の介護が必要となる疾患であり、ご家族および支援職(相談支援専門員・医療看護職・介護職等)のサポートが不可欠です。
現在、重度訪問介護をはじめとしたさまざまな障害福祉サービスの整備によりALS患者様が「在宅で暮らす」選択肢が可能になってきましたが、支援現場では「情報や支援が不十分」「もっと良い支援を届けたい」といった声があります。
在宅支援には実際にどのような困難と課題があるのか?
本調査は、ALS支援に関わる「ご家族」「相談支援職であるソーシャルワーカー」「医療・介護職」という3つの視点から課題を可視化し、社会に提言をおこなうものです。従来の調査は、当事者への意識調査や医学的治験を目的としたものが中心でしたが、本企画では、患者の介護に関わるご家族、そして支援現場を支える多職種という『ALS支援の全当事者』の視点から在宅支援の課題を抽出する、初めての全国調査として国内最大の規模となりました。

● 調査目的:ALS患者のご家族・支援者それぞれの立場から見える『課題』を可視化することで、ALS患者の在宅支援の質向上を目的としました。支援者が直面する課題(意思決定、社会資源の不足、心理的負担など)を可視化し、6月21日の世界ALSデーによせて、社会全体でALS支援を考えるきっかけとなることを目指します。
● 調査概要:ALS患者を支える「家族」「ソーシャルワーク職」「医療介護職」の3つの視点から、課題を抽出。
【調査対象・概要】
● 対象者:
○ ALS患者様を介護するご家族
○ ソーシャルワーカー(相談支援専門員、ケアマネジャー、MSW、保健師等)
○ 医療介護職(重度訪問介護士、訪問看護師、訪問介護士等)
● 調査方法:SNSなどで広く募集しWEBフォームによる回答を集計。
● 回答期間:2026年2月16日~3月13日
● 有効回答数:総計 486名(全国42都道府県から回答)
○ ALS患者様を介護するご家族:136名
○ ソーシャルワーカー:66名
○ 医療介護職:284名
● アンケート内容について:三者のそれぞれの視点から見える課題を選択式で回答。ご家族については、生涯在宅での介護を望むか(またその理由)を選択式と自由記述で回答。三者がそれぞれの立場に対して望むこと、行政に望むことを自由記述で回答。上記の質問項目に加え「介護経験年数」と「支援経験人数」等のクロスデータも収集。
■ 調査結果のまとめ
1. ご家族:長期化するケアの中で直面し続ける「コミュニケーションの壁」と物理的負担
【調査結果データ】(対象:ご家族 総計136件)
● 最も課題に感じていること
○ 1位:本人との意思疎通が困難(20件)
○ 2位:利用できる社会資源・福祉サービスの情報不足(12件)
○ 3位:サービス支給の希望が通りにくい、
介護による肉体的負担、
治療情報および治療薬・治験・緩和ケアの不足(各11件)

● 課題に感じていること(複数選択・上位5つ)
○ 1位:本人の意思表出が困難になる課題(70件)
○ 2位:介護による肉体的負担(64件)
○ 3位:本人との意思疎通が困難(63件)
○ 4位:介護と家庭の両立課題(57件)
○ 5位:治療情報および治療薬・治験・緩和ケアの不足(52件)

● 生涯自宅での介護を希望するか
○ 1位:はい(83件/約61%)
○ 2位:わからない(45件/約33%)
○ 3位:いいえ(8件/約6%)

ご家族へのアンケートでまず注目すべきは、長期にわたる介護の実態と、自宅での介護を希望する割合の多さです。回答者の半数以上(76件)が介護経験「3年〜10年未満」の層であり、「10年以上」の層も含めると長期にわたりケアを続けている方が多いことがわかります。さらに、「生涯自宅での介護を希望しない」と答えた方はわずか6%程度に対し、全体の約61%(83件)が「生涯自宅での介護を希望する」と回答しており、住み慣れた家での生活をいかに大切に考えているかが伺えます。
その理由としては、「本人が希望しているから」「施設や病院では決まった担当者がマンツーマンで介護することができず本人が不便だから」「できるだけ長く一緒にいたいから」といったことが主でした。「わからない」と回答したご家族の自由記述では、「自身が介護を継続できなくなる可能性」を挙げた方が主でした。
一方で、日々のケアにおける最大の課題として挙げられたのは「本人との意思疎通が困難(20件)」でした。これは特に介護経験「3年〜10年未満」の層で最も高く表れています。一般的に、介護は年数を経るごとに慣れが生じるものと思われがちです。
しかしALSの場合、病状の進行に伴って発声や表情の表出、さらには眼球運動までが徐々に失われていきます。つまり、ご家族は「一度コミュニケーションの手法を確立しても、進行によって再び意思疎通ができなくなる」という喪失と再構築を、何年にもわたって絶えず繰り返していると推測されます。年数が経過しても慣れることのない「コミュニケーションの壁」こそが、ご家族の抱える苦悩と言えるでしょう。
また、利用できる社会資源・福祉サービスの情報、治療情報が不足しており、情報にたどり着いたとしてもサービス支給の希望が通りにくいといった課題も浮き彫りとなりました。加えて、「介護による肉体的負担」が「最も課題に感じていること」の3位に挙がっていましたが、「課題に感じていること(複数選択・上位5つ)」で見ると「介護による肉体的負担」は2位、さらに「介護と家庭の両立課題」(4位)も上位に入り、ご家族自身のQOL低下という課題がより色濃く浮き彫りになります。
2. ソーシャルワーカー:情報・知見・地域資源の「あらゆる不足の狭間に立つ」難しさ
【調査結果データ】(対象:ソーシャルワーカー 総計66件)
● 最も課題に感じていること
○ 1位:利用できる社会資源・福祉サービスの情報不足(10件)
○ 2位:ご本人の意思決定支援不足、
重度訪問介護事業所等のサービス事業所不足(各9件)
○ 3位:ALS患者の支援・地域移行に関する知見・経験不足(7件)

● 課題に感じていること(複数選択・上位5つ)
○ 1位:利用できる社会資源・福祉サービスの情報不足(37件)
○ 2位:福祉制度の複雑さ(32件)
○ 3位:ご本人の意思決定支援不足(29件)
○ 4位:ALS患者の支援・地域移行に関する知見・経験不足(27件)
○ 5位:重度訪問介護事業所等のサービス事業所不足(26件)

ご家族の長期にわたる孤軍奮闘が見える一方で、ソーシャルワーカーのデータからは異なる実態が浮かび上がってきます。それは、「経験・情報・社会資源のすべてが不足している」と感じている現実です。回答者はケアマネージャーおよび相談支援専門員の方(が主)でしたが、最も課題に感じていることを選択した場合も、課題の上位5つを選択した場合も同様の傾向が見られました。
どのように本人の意思に沿った支援プランを立て、介護サービスの提供事業者と繋げていくかについて、知見が地域の中で蓄積されていないこと、また、そもそもサービス提供事業者が地域に不在であるという課題が明らかとなっています。
ご家族へのアンケート結果と照らし合わせて見ると、ご家族がソーシャルワーカーに支援の相談をしても、ソーシャルワーカーは利用できるサービスの情報を持っていなかったり、また、情報を知っていたとしてもサービス提供事業者が不足していたりするために、支援につなげることができていない可能性が浮かび上がって来ます。
3. 医療・介護職:構造的に熟練者が少ない中、命に関わる専門性の高い業務への心理的負担
【調査結果データ】(対象:医療・介護職 総計284件)
● 最も課題に感じていること
○ 1位:ご本人との意思疎通が困難(67件)
○ 2位:ALS患者の在宅介護・医療的ケアに関する知見・経験不足(54件)
○ 3位:緊急時対応等の判断の難しさ(37件)

● 課題に感じていること(複数選択・上位5つ)
○ 1位:ご本人との意思疎通が困難(196件)
○ 2位:ALS患者の在宅介護・医療的ケアに関する知見・経験不足(180件)
○ 3位:緊急時対応等の判断の難しさ(160件)
○ 4位:担当業務の責任の重さによる心理的負担(120件)
○ 5位:ご本人の意思決定支援不足(112件)

医療・介護職では、回答者の6割以上(181件)が、これまでに担当したALS患者数が「0〜3人未満」であると回答しました。そして、「最も課題に感じていること」として「ご本人との意思疎通が困難(67件)」、「ALS患者の在宅介護・医療的ケアに関する知見・経験不足(54件)」、「緊急時対応等の判断の難しさ(37件)」が上位に挙がっています。

課題に感じることを上位5つ選択した場合も傾向は変わらず、多くの現場医療・介護職が「ALS患者への在宅支援の知見・スキルの迅速な習得が求められる現場で、医療的ケアや緊急時の判断を迫られる心理的不安と責任に対峙しながら、ご本人の意思を汲み取り応えようとする」姿が浮かび上がりました。
〜ALS在宅支援の環境改善に向けた提言と今後の取り組み〜
共通課題と支援現場のギャップ
まず、各支援者のデータから、ALSの在宅支援現場でご家族を含むすべての支援者が課題と感じている共通の課題が見えてきました。それは、「情報不足」と「知見の蓄積不足」です。
また、三者に共通して「ご本人の意思決定支援の難しさ」や「コミュニケーション課題」が上位に挙がりました。
進行性難病者における”意思決定”とは、例えば「気管切開手術により呼吸器を装着して24時間介護を必要とする環境で生きる」か「延命しない」か、という過酷なものです。たとえご本人が希望しても、それを叶えられる環境整備がなされることが必要です。進行性の難病であるALS患者の意思を汲み取り、それをスピーディに実現することの高いハードルと、どのような段階においても本人の意思を第一に大切にしたいという三者共通の支援の根幹が見てとれます。

一方で、ご家族と支援職が感じている課題にギャップがあることも明らかになりました。ご家族は、最も近い距離で患者と長年向き合い続け、微細なサインや進行のプロセスに伴走しています。これに対し、ソーシャルワーカーや医療介護職の多くは、「ALSの方を担当するのは今回が初めて」あるいは「数人目」であることが一般的です。「ニーズの解像度があがっていく家族」と一般的に「ALS支援の経験が少ない支援者」という構造にも、難しさが生じます。
前提として、相談支援・医療・介護サービスの提供内容は制度によって決められ、存続可能な支援のために支援が個別に属人化されないことが推奨されます。ご本人や家族が求めるニーズに無制限に応えることが難しい構造もあります。
これからの取り組み
本調査を通じて、ALS在宅支援の現場における「意思決定支援の困難さ」「ご家族の長期的な心身の負荷」、そして「社会資源と知見の圧倒的な不足」という深刻な構造的課題が浮き彫りとなりました。
ALSをはじめとした難病支援の重度訪問介護国内最大手事業者※として、ユースタイルラボラトリーでは、深刻な担い手不足を解消するため、全国での重度訪問介護事業所の展開に加え、資格スクールにおいて年間3,000名を超える医療的ケア人材を輩出しています。今後も「支援の担い手」の育成を加速し、重度障害・難病を抱える方の在宅生活の土台を支えてまいります。
また、一人ひとり進行スピードも症状も異なるALS患者をサポートするには、個々の経験に頼るのではなく、地域やオンラインでの勉強会・情報公開を通じたナレッジの共有を強化し、支援の質を「社会全体の知見」へと引き上げていくことが急務です。地域・他職種・事業者間の連携を推進してまいります。

行政に対する要望(自由回答より抽出)
また、本調査の自由回答欄において、行政に対しては以下の内容が強く要望されました。
1.決定プロセスの迅速化と「申請主義」からの脱却:病状の進行に即応した柔軟な支給決定
2.処遇改善と医療行為の規制緩和:担い手不足を根本から解消する環境整備
3.地域格差および「制度の壁」の撤廃:介護保険優先原則や家族支援を前提としない弾力的な運用、自治体によるサービス格差の是正

私たちは全国介護事業者連盟障害福祉事業部会を通じて、業界全体として全国各自治体の窓口に調査結果の共有と要望内容を提言します。当事者・支援者・行政が真に連携し、ALS患者様および難病に対峙するすべての方々が安心して自分らしく暮らせる社会の実現に向け、全力を尽くしてまいります。
全国介護事業者連盟障害福祉事業部会 会長
中川 亮 氏(日本福祉コンサルティンググループ株式会社 代表取締役)コメント
このたび、当連盟障害福祉事業部会東京支部のユースタイルラボラトリー社が実施した「ALS在宅支援に関する大規模調査」により、支援現場の切実な課題が浮き彫りとなりました。
病気の進行に追いつかない行政の手続き、自治体ごとの支給量の「地域格差」、そして命に関わるケアを阻む「ヘルパー不足と規制の壁」。これらは、一事業者やご家族の努力だけで解決できる段階を遥かに超えています。また、これはALSに限ったことではなく、あらゆる進行性難病に共通する課題です。
当部会は、こうした構造的課題を打破するため、現場の声を代弁し、国や自治体へ実効性のある「政策提言」を行う機能を強力に担当してまいります。
具体的には、病状の進行に即応した迅速な支給決定、全国一律の支給基準の策定、そして処遇改善と医行為の規制緩和を柱とした環境整備を働きかけてまいります。
制度の隙間で孤立する当事者や支援者をなくすために当部会がハブとなり、誰もが安心して自分らしく暮らせる社会の実現に向け、全力を尽くしてまいります。
ユースタイルラボラトリー株式会社
重度障害・難病者への重度訪問介護提供事業者国内最大手。ALS 患者への重度訪問介護提供実績は国内最多。24 時間 365 日医療的ケアを含めた在宅介護を提供する。
近年は重度障害者向けグループホーム「ユースタイルホーム」も全国70カ所に拡大中。
代表 :大畑 健 (全国介護事業者連盟 障害福祉事業部会 東京支部長)
スタッフ数: 6,527名人(2026年5月現在)
本社 :〒 164-0012 東京都中野区本町 1-32-2 ハーモニータワー 18 階
設立 :2012 年 2 月
売上 :210 億円(2025 年度)
事業所 :重度訪問介護事業所、障害者グループホーム、資格取得スクール等を含め全国約 200 事業所運営
事業内容 :重度訪問介護、居宅介護、訪問介護、訪問看護、生活介護、通所介護、就労支援、介護経営支援等
コーポレートサイト:https://eustylelab.co.jp/
ユースタイルケアサービスサイト:https://care.eustylelab.co.jp/
※重度訪問介護国内最大手/ALS患者への重度訪問介護提供国内最多:国内事業者公表数値より自社調査(2026年6月時点)
2026年6月10日同日リリース
【ユースタイルケア、難病ALS患者への重度訪問介護サービス提供 、国内最多に。計約441万時間、利用者数1,098名、累計サービス提供約72万件 】


