移民・難民危機:地中海中央ルートおとなの同伴無く渡る子ども6割増~死者・行方不明者は昨夏比3倍【プレスリリース】

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ランペドゥーサ島の一時受け入れセンターに辿り着いた、チュニジアからの移民の親子。(イタリア、2023年9月26日撮影) © UNICEF_UNI443194_Antonioliランペドゥーサ島の一時受け入れセンターに辿り着いた、チュニジアからの移民の親子。(イタリア、2023年9月26日撮影) © UNICEF_UNI443194_Antonioli

2023年1月から9月中旬までの間に、1万1,600人以上の子どもが親や法的保護者を伴わずに地中海中央ルートを通ってイタリアに渡りました。昨年同期にこの危険なルートを横断した、同伴者のいない子どもや家族と離ればなれになった子どもの数は7,200人であったため、今年は60%増加したことになる、とユニセフ(国連児童基金)は警鐘を鳴らしました。

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ランペドゥーサ島はイタリア南部の小さな島で、欧州に庇護、安全や機会を求める人々が最初に寄港する場所です。今月は到着者数が最大となり、1日に4,800人がたどり着いた日もありました。


たった一人で過酷な旅をしようとする子どもは、多くの場合、乗客過多のゴムボートや、悪天候に弱い粗末な木造漁船に乗せられます。特に危険が伴う船倉や鉄のはしけに乗せられ、航行する子どももいます。地域全体での連携した適切な捜索・救助能力や、上陸をめぐる海上での協力がないことが、地中海横断の際に子どもたちが直面する危険をさらに大きくしています。

 

戦争、紛争、暴力および貧困は、子どもたちが母国から一人で脱出する主な要因の一つです。おとなの同伴者のいない子どもは、旅のあらゆる段階で搾取や虐待の危険にさらされ、中でも女の子とサハラ以南のアフリカ諸国出身の子どもが虐待を受ける可能性が最も高い、ということが明らかになっています。

ランペドゥーサ島の一時受け入れセンターに辿り着いた、同伴者のいない子どもたち。(イタリア、2023年9月26日撮影) © UNICEF_UNI443166_Antonioliランペドゥーサ島の一時受け入れセンターに辿り着いた、同伴者のいない子どもたち。(イタリア、2023年9月26日撮影) © UNICEF_UNI443166_Antonioli

今年6月から8月にかけて、地中海中央部を渡ろうとした、子どもを含む少なくとも990人が死亡したか行方不明になりました。難破事故の多くには生存者がおらず、記録も残っていないため、実際の犠牲者数はもっと多いと考えられます。


何とか生きて渡れた子どもたちは、まず「ホットスポット」と呼ばれる施設に収容され、その後、往々にして閉ざされ、移動に制限のある受け入れ施設に移送されます。現在、イタリア全土で2万1,700人以上のおとなの同伴者のいない子どもがこのような施設に収容されており、1年前の1万7,700人から増えています。

 

ユニセフ・欧州・中央アジア地域事務所代表で欧州の難民・移民対策の特別調整官を務めるレジーナ・デ・ドミニーチスは、次のように述べています。「地中海は、子どもたちとその未来にとっての墓場と化しています。欧州に庇護と安全を求める子どもたちに壊滅的な打撃を与えているのは、これまで選択されてきた政策と、崩壊した移民システムの結果です。庇護と安全を求める子どもや家族たちを支援するための欧州全体の対応策を導入し、複数の危機に直面している国々を支援するための国際的支援を持続的に拡大させることが、苦しむ子どもたちをこれ以上増やさないために、切実に求められているのです」

 

国際法と子どもの権利条約に沿って、ユニセフは各国政府に対し、庇護を求めるためのより安全で合法的な経路を提供すること、子どもたちが閉鎖的な施設に収容されないようにすること、移住する子どもたちの保護を改善するために各国の子どもの保護制度を強化すること、捜索・救助活動を調整し、安全な場所への上陸を確実にすることを求めています。

 

ランペドゥーサ島の一時受け入れセンターで、同伴者のいない移民の子どもたちを支援するユニセフのスタッフ。(イタリア、2023年9月26日撮影) © UNICEF_UNI443164_Antonioliランペドゥーサ島の一時受け入れセンターで、同伴者のいない移民の子どもたちを支援するユニセフのスタッフ。(イタリア、2023年9月26日撮影) © UNICEF_UNI443164_Antonioli

欧州議会とEU加盟国との間で進められている「移民と庇護に関するEU協定」に関する議論は、子どもの保護の主要原則を確認し、支持するとともに、出身国・通過国・到着国で多発している子どもの権利の侵害への対応策を策定する、目前の好機です。

 

ユニセフは引き続き、EU加盟国が実施する移民出身地のコミュニティにおけるシステム強化と支援拡大をサポートし、子どもが移動する際に直面するリスクを予防・軽減し、そして子どもやその親の法的地位にかかわらず、すべての子どもたちへの支援と包括的なサービスを提供することに努めます。


ランペドゥーサ島でユニセフは、メンタルヘルスケアや心理社会的支援などの保護に関する必要不可欠なサービス、情報の提供、および専門サービスへの紹介などを実施しています。この活動は、PROTECTプロジェクトの一環として、欧州委員会の移民・内務総局の支援を受けています。

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■ 出典一覧

  • 地中海中央ルートを横断しようとして亡くなった、または行方不明となった人々に関するデータ:国際移住機関(IOM)の行方不明移民プロジェクト(Missing Migration Project)

  • おとなの同伴者のいない、または家族と離ればなれになった子どもの数に関するデータ:イタリア内務省

  • 受け入れ施設に収容されている、おとなの同伴者のいない、または家族と離ればなれになった子どもの数に関するデータ:イタリア労働・社会政策省

■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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