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全身型重症筋無力症(gMG)の治療薬として初の皮下注射剤
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作用機序が異なる2剤の同時承認
リスティーゴはヒト胎児性Fc受容体(FcRn)モノクローナル抗体製剤
ジルビスクはペプチド補体(C5)阻害剤
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ジルビスクは初の在宅自己投与が可能な補体(C5)阻害剤
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ジルビスクは世界初の承認取得
リスティーゴは、FcRnに結合し、IgG自己抗体を含む血中のIgG濃度を減少させるヒト化IgG4モノクローナル抗体です1。リスティーゴは、gMGの最も一般的なサブタイプである抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性および抗筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体陽性gMGに有効性が認められています。また、これまで定量的な評価がなされていなかった疲労感などの患者さんの自覚症状の改善を評価しました。
ジルビスクは、補体C5を阻害する1日1回自己投与型皮下注ペプチド製剤です。補体C5に結合しC5a及びC5bへの開裂並びにC5bおよびC6の結合を阻害するデュアル作用によって神経筋接合部への補体が関与する損傷を阻害する次世代補体C5阻害剤です2。gMG治療薬としては初の自己注射が可能な皮下注射剤です。
代表取締役社長の菊池加奈子は、「この度の2剤の承認により、gMGというユーシービーにとって新たな領域での貢献に一歩を踏み出せたことを大変嬉しく思います。一般的な疾患と比べ、治療法の選択が限られることの多い希少疾患に対しても、少しでも多くのソリューションを開発し、提供することは、ユーシービージャパンが新たに掲げるコミットメントの一つです」と述べるとともに、「両剤は、多くが生涯にわたって治療を続けるgMGの患者さんの症状の改善と共に、QOLの改善にもつながると信じております」と語っています。
gMGは、希少性の慢性的かつ症状の変動を予測することが難しい自己免疫疾患で、神経筋接合部の機能不全と損傷に特徴づけられます3,4,5。発症の原因として、補体や免疫細胞、病原性IgG自己抗体が関係しているとされています。gMGの患者さんは、眼瞼下垂、複視、嚥下困難、咀嚼困難、発語困難などのさまざまな症状を有し、また、生命を脅かすような呼吸筋の筋力低下に至る可能性のある重度の筋力低下を引き起こすことがあります4,7。gMGの有病率は、全世界で100万人につき100人から350人とされており5、国内患者数は29,210人と言われています6。
本承認は、いずれもgMGを対象とした日本人成人患者を含む国際共同試験[リスティーゴ:MycarinG試験(MG0003試験)、ジルビスク:RAISE試験(MG0010試験)]等の結果に基づいています2,8。
MycarinG試験では、gMGの成人患者さんを対象に、リスティーゴの有効性と安全性を評価しました。主要評価項目であるMG-ADL総スコアの43日時点におけるベースラインからの変化量で、リスティーゴはプラセボ群に対して統計学的に有意で臨床的に意義のある改善を示しました。 [ベースラインからの変化量のLSM(最小二乗平均値):リスティーゴ7mg/kg相当群 -3.37、10mg/kg相当群 -3.40、プラセボ群 -0.78 群間差:-2.59(7mg/kg相当群)、-2.62(10mg/kg相当群)(いずれもp<0.001)]また、副次評価項目であるQMG総スコアの43日時点におけるベースラインからの変化量においても、リスティーゴはプラセボに対して統計学的に有意で臨床的に意義のある改善を示しました。[ベースラインからの変化量のLSM:リスティーゴ7mg/kg相当群 -5.40、10mg/kg相当群 -6.67、プラセボ群 -1.92 群間差:-3.48(7mg/kg相当群), -4.76(10mg/kg相当群)(いずれもp<0.001)]
RAISE試験では、gMGの成人患者さんを対象に、ジルビスクの有効性と安全性を評価しました。主要評価項目であるMG-ADL総スコアの12週におけるベースラインからの変化量において、ジルビスク群はプラセボ群に対して統計学的に有意で臨床的に意義のある改善を示しました。 [ベースラインからの変化量のLSM:ジルビスク群 -4.39、プラセボ群 -2.30 群間差:-2.09 (p<0.001)]また、RAISE試験の副次評価項目であるQMG総スコアの12週におけるベースラインからの変化量でも、ジルビスク群はプラセボ群に対し、統計学的に有意で臨床的に意義のある改善を示しました。[ベースラインからの変化量のLSM:ジルビスク群 -6.19、プラセボ群 -3.25 群間差:-2.94(p<0.001)]
なお、MycarinG試験とRAISE試験の成績は2023年5月にThe Lancet Neurologyに掲載されました9,10。
【参考情報】
全身型重症筋無力症に対するロザノリキシズマブとジルコプランナトリウムの 第Ⅲ相臨床試験結果が The Lancet Neurology に掲載 (プレスリリース2023年5月10日)
https://www.ucbjapan.com/sites/default/files/2023-05/20230509_MG_LancetNeurology.pdf
リスティーゴは、2020年11月に希少疾病用医薬品としての指定を厚生労働省より受けており、優先審査が行われました。EUにおいても同じく、2020年に希少疾病用医薬品の指定を受けています。また、本年6月に米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得しております。ジルビスクは、2022年11月に欧州医薬品庁(EMA)およびFDAに承認申請が受理されています。
リスティーゴ皮下注 280mg |
ジルビスク皮下注 16.6mg シリンジ 23.0mg シリンジ 32.4mg シリンジ |
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【効能又は効果】 |
全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る) |
全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る) |
【用法及び用量】 |
通常、成人にはロザノリキシズマブ(遺伝子組換え)として下表に示す用量を1週間間隔で6回皮下注射する。これを1サイクルとして、投与を繰り返す。 体重 投与量 50kg未満 : 280mg 50kg以上70kg未満: 420mg 70kg以上100kg未満:560mg 100kg以上: 840mg |
通常、成人にはジルコプランとして下表に示す用量を1日1 回皮下投与する。 体重 投与量 56kg未満 : 16.6mg 56kg以上77kg未満: 23.0mg 77kg以上: 32.4mg |
リスティーゴ(ロザノリキシズマブ)について
リスティーゴは皮下投与のヒト化モノクローナル抗体であり、胎児性 Fc 受容体(FcRn)に高い親和性で特異的に結合します。FcRnと免疫グロブリンG(IgG)の相互作用を阻害することにより、抗体の異化を促進し、病原性IgG自己抗体を含むIgGの血中濃度を低下させます。
ジルビスク(ジルコプランナトリウム)について
ジルビスクは、15個のアミノ酸から構成される大環状ペプチドであり、補体C5の不適切な活性化が関与する疾患の治療を意図した自己投与可能な皮下注射製剤(補体C5阻害剤)です。次世代補体C5阻害剤として、デュアル作用によって神経筋接合部への補体が関与する損傷を阻害します。
全身型重症筋無力症(gMG)について
gMGは、有病率が全世界で100万人につき100人から350人と言われる希少性の自己免疫疾患です。gMGの患者さんは、眼瞼下垂、複視、嚥下困難、咀嚼困難、発語困難などのさまざまな症状を有し、また、生命を脅かすような呼吸筋の重度の筋力低下を引き起こすことがあります。gMGでは、病原性自己抗体が、シナプス後膜上の特定のタンパク質を標的とすることにより、神経筋接合部におけるシナプス伝達を阻害すると考えられています。これにより、神経が筋肉に連絡する方法が妨げられることにより、筋肉が収縮しにくくなります。
UCB(ユーシービー)について
UCB(www.ucb.com)は、ベルギーのブリュッセルに本社を置くグローバルバイオファーマで、ニューロロジーや免疫・炎症領域の重篤な疾患と共に生きる患者さんのより良い生活の実現を目指して、革新的な医薬品の研究開発ならびにソリューションの提供に力を注いでいます。約40カ国に拠点を置き、従業員数は8,700名あまりを擁しており、2022年の収益は55億ユーロでした。UCBはユーロネクスト・ブリュッセル証券市場に上場しています。
ユーシービージャパン株式会社 (https://www.ucbjapan.com) はUCBの日本法人として1988年に設立され、抗てんかん薬「イーケプラ®」、「ビムパット®」、関節リウマチ治療薬および乾癬治療薬「シムジア®」、新規機序を持つ乾癬治療薬「ビンゼレックス®」を中心に医薬品事業を展開しています。患者さんにとっての価値を創造するバイオファーマリーダーとして、従来の治療で十分な改善が得られなかった患者さんに、新たな治療の選択肢を提供することを目指しています。
出典
1 Smith B, et al. Generation and characterization of a high affinity anti-human FcRn antibody, rozanolixizumab, and the effects of different molecular formats on the reduction of plasma IgG concentration. MAbs. 2018;10:1111-30.
2 Howard J, Efficacy and safety of zilucoplan in patients with generalised myasthenia gravis: A randomised, double-blind, placebo-controlled, Phase 3 study (RAISE). Lancet Neurol. 2023;22:395-406.
3 Juel VC, Massey JM. Myasthenia gravis. Orphanet J Rare Dis. 2007;2:44.
4 National Institute of Neurological Disorders and Stroke. 2022. Myasthenia Gravis Fact Sheet. https://www.ninds.nih.gov/myasthenia-gravis-fact-sheet. Accessed August 2023.
5 Punga AR, et al. Epidemiology, diagnostics, and biomarkers of autoimmune neuromuscular junction disorders. Lancet Neurol. 2022;21(2):176-88.
6 Yoshikawa Hiroaki, Adachi Yumi, Nakamura Yosikazu et al.;Two-step nationwide epidemiological survey of myasthenia gravis in Japan 2018;PLoS ONE;2022;17;9:e0274161
7 Myasthenia Gravis Foundation of America. Clinical Overview of MG. https://myasthenia.org/Professionals/Clinical-Overview-of-MG. Accessed August 2023
8 Bril V. Efficacy and safety of rozanolixizumab in patients with generalised myasthenia gravis: a randomised, double-blind, placebo-controlled, adaptive Phase 3 study MyCarinG study. Lancet Neurol. 2023;22(5):383-94.
9 Bril V. Efficacy and safety of rozanolixizumab in patients with generalised myasthenia gravis: a randomised, double-blind, placebocontrolled, adaptive Phase 3 study MyCarinG study. The Lancet Neurology. 2023. Published online. Available at:
10 Howard J, Efficacy and safety of zilucoplan in patients with generalised myasthenia gravis: A randomised, double-blind, placebocontrolled, Phase 3 study (RAISE). The Lancet Neurology. 2023. Published online. Available at: