『南方ノート・戦後日記』(未知谷刊・大佛次郎記念館編)
今回が初公開となる「南方ノート」は、太平洋戦争中の昭和18年11月から約3か月に渡り、同盟通信社の嘱託として南方(現シンガポール、マレーシア、インドネシアなど)を視察した際、6冊の大学ノートに綴った手記。「戦後日記」は、敗戦後の昭和21年3月から25年8月までの8冊の日記です。
東南アジア史、日本文学の研究者2名による解題と、各分野の研究者による監修を経て、読み応えある書籍となりました。
既刊の『敗戦日記』をはさみ、その前後をつなぐ本書には、検閲を想定しない「日記」だからこそ書ける、大佛次郎の“肉声”が詰まっています。戦時でありながら、一見平穏に見える南方の日常の中に作家が見た物とは?敗戦を経て、混乱する被占領下の日本で小説を書くことの意味とは?
それら作家の視線を通して浮かび上がる、軍政下南方の日常や、敗戦直後の日本の社会状況といったものは、大佛次郎研究にとって重要であることは云うに及ばず、東南アジア史研究、戦後の文壇史、文化史研究にとっても価値ある史料といえます。
特別展 初公開&出版記念
「南方ノート」と「戦後日記」大佛次郎が見た戦中・戦後
出版を記念する特別展。
大佛次郎は南方から帰国後「別の生き方が初まっているのである」(『敗戦日記』1944.10.9)と記し、南方体験が自身にとって、一つの転機となったことを示唆しています。
南方体験のもつ意味とは?
また、その体験は敗戦直後の社会的、経済的混乱の中で、どのように作品へと結実していくのでしょうか。
本展は二つの「日記」の記述をたどることで、戦中の南方、敗戦直後の日本で作家が何を見、何を思ったのか、等身大の大佛次郎にせまります。
大佛 次郎 (おさらぎじろう) 1897年(明治30年)横浜生まれ。本名は野尻清彦。長兄は星の文学者・野尻抱影。東京帝国大学卒業後、教員や外務省の嘱託として勤務。この頃ロマン・ロランの訳書を出し、その他小説の抄訳などを雑誌に寄稿。関東大震災の翌年、生活のために書いた「鞍馬天狗」シリーズが人気となり、作家としての道を歩み始めた。その際、用いた筆名が<大佛次郎>だった。以降、50年にわたり、時代小説の他、開化期の横浜が舞台の「霧笛」、現代小説「帰郷」、フランスの歴史を題材としたノンフィクション「パリ燃ゆ」、童話「スイッチョねこ」、戯曲、ライフワークとなった「天皇の世紀」まで、幅広いジャンルの執筆活動を行う。1964年文化勲章受賞。1973年(昭和48年)死去。 |
≪特別展概要≫
【会期】
2023年8月26日(土)~12月10日(日)
【開館時間】
9月 10:00~17:30(入館は17:00まで)
10月以降10:00~17:00(入館は16:30まで)
【休館日】
月曜日(祝休日の場合は翌平日)
【観覧料】
一般(高校生以上)200円
中学生以下 無料
※横浜市内在住の65歳以上の方は100円
※毎月23日「市民の読書の日」と、第2・第4土曜日は高校生無料
※障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は無料
【主催】
大佛次郎記念館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)