内閣府「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2023」
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フローレンスの政策提言について
近年の人口動態統計によると日本の出生数は7年連続で過去最少を更新、2022年の出生数が80万人を切り、少子化に歯止めがかからず、「異次元の少子化対策」が政府の重要課題として議論されています。
また、今年度は「こども家庭庁」設立、こども基本法が施行されるなど、子ども・子育てをとりまく課題やその取り組みへの注目度がますます高まっています。
認定NPO法人フローレンスは、子ども・子育て領域に関わる社会問題解決集団として、「訪問型病児保育」「障害児保育」「小規模保育」などの事業を運営すると同時に、そこから日々得られる親子の生の声や事業ノウハウを社会に広げ、社会課題の根本の解決を目指した政策提言を関連団体の皆さんとともに行ってまいりました。
このたび、6月16日に閣議決定された『経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2023』に、私たちが提言してきた保育園の空き枠を利用して無園児の定期預かりを行う「こども誰でも通園制度(仮称)」が新たに盛り込まれたほか、仲間とともに提言してきた「こどものウェルビーイング指標」「男性育休の取得促進」が入りました。
さらに、「子育て無料社会」として提言してきた子育て世帯への経済的支援や、「伴走型相談支援(デジタル化)」について記載されたほか、「医療的ケア児支援の強化」「日本版DBSの導入」「こども宅食」も昨年に引き続き盛り込まれています。
「骨太の方針」は国として最重視している施策をまとめたものです。この重要な指針に子ども・子育て支援政策として、私たちの提言した政策について「こども未来戦略方針」にも触れながら詳しくご紹介します。
「こども未来戦略方針」(6月13日閣議決定)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_mirai/dai6/siryou1.pdf
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【こども誰でも通園制度(仮称)の創設】
全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備するとともに、全ての子育て家庭に対し て、多様な働き方やライフスタイルにかかわらない形での支援を強化するため、現行 の幼児教育・保育給付に加え、月一定時間までの利用可能枠の中で、就労要件を問わ ず時間単位等で柔軟に利用できる新たな通園給付(「こども誰でも通園制度(仮称)」) を創設する。(こども未来戦略方針 P.17) |
「こども誰でも通園制度(仮称)」は、フローレンスが「みんなの保育園」構想という名称で政府に訴えかけてきた政策で、保育の必要性認定にかかわらず、誰もが週に1回でも2回でも保育園を利用できるようにする、というものです。
フローレンスは保育園や幼稚園を定期利用していない「無園児」、いわゆる未就園児が置かれている状況に着目。去年、株式会社日本総合研究所に委託し、全国の0歳以上の未就学児の保護者2,000人にアンケート調査を実施しました。
その結果、無園児家庭のほうが「子育てのなかで孤独を感じる」割合が高いことや、定期的な保育サービスの利用ニーズが多いことを明らかにし、無園児家庭の孤立を防ぐために、保育の必要性認定がなくてもすべての親子が保育園を利用できるようにすべきだと訴えてきました。
<「無園児家庭の孤独感と定期保育ニーズに関する全国調査」結果発表。働く親のための保育園から、全ての子どものための保育園へ!>
待機児童問題が解消に向かいつつある今、保育園は「共働き家庭のための施設」というこれまでの常識から、「すべての親子にとっての新しいセーフティーネット」へと変わろうとしています。政府は今年度・2023年度中に行う国のモデル事業を踏まえた上で、来年度・2024年度から制度の本格実施を見据えるとされています。
フローレンスが運営する保育園では、これまでも空き定員枠を活用して専業主婦家庭などの定期的なお預かりを独自に試行してきましたが、今年度始まる国のモデル事業においても、東京・中野区と仙台市で実施事業者として採択されました。これまでの独自の取り組みやモデル事業の実践を積み重ねて、その重要性や課題点、制度の活用方法について積極的に発信してまいります。
<無園児家庭に「みんなの保育園」を! 東京都中野区、仙台市で「こども誰でも通園制度」のモデル事業者として採択されました>
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【こどものウェルビーイング指標】
政府の各種の基本計画等におけるKPIへのWell-being指標の導入を加速するとともに、こどもに着目した指標の在り方について検討する。さらに、地方自治体におけるWell-being指標の活用を促進する。(骨太の方針 P.36) |
ウェルビーイングとは、WHO(世界保健機関)によると「個人や社会が経験するポジティブな状態のこと」「健康と同様、日常生活の資源であり、社会的、経済的、環境的条件によって決定される。」と定義されています。
フローレンスは、このウェルビーイング調査を子どもにも展開し、国のこども政策のKPIとすることを公益財団法⼈ Well-being for Planet Earth(代表理事:石川善樹氏)、東京大学 鈴木寛教授らと一緒に提言してきました。
今の日本にはこども政策の効果を測る指標がありません。指標がなければ、せっかく実施した政策が本当にこどもたちを幸せにしているか評価することが不可能です。学力や健康状態だけではなく、主観的ウェルビーイング(こどもが幸せを感じているか)が政策の指標として活用されるよう、これからも提言を加速させます。
<子どもの幸せを測る新たなものさしを創る。 「こども・青年のウェルビーイング国際会議」初開催レポート!>
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【男性育休の取得促進】
給付面の対応として、いわゆる「産後パパ育休」(最大 28 日間)を念頭に、出生後一定期間内に両親ともに育児休業を取得することを促進するため、給付率を現行 の 67%(手取りで8割相当)から、8割程度(手取りで 10 割相当)へと引き上げる。 具体的には、両親ともに育児休業を取得することを促進するため、男性が一定期間 以上の「産後パパ育休」を取得した場合には、その期間の給付率を引き上げるととも に、女性の産休後の育休取得について 28 日間(産後パパ育休期間と同じ期間)を限度 に給付率を引き上げることとし、2025 年度からの実施を目指して、検討を進める。(こども未来戦略方針 P.20) |
父親が「産後パパ育休」を取得し、母親も育児休業を取った場合、休業前の賃金を「夫婦ともに」実質的に100%保障するという方針が記載されました。
「産後パパ育休」とは、「出産後8週間以内」に「4週間(28日)※4分割可能」まで男性が育児休暇を取得できるもので、2022年10月に始まった新しい制度です。
現在、「産後パパ育休」取得中には、賃金の67%の育休給付金を受け取ることができますが、これを80%に引き上げるとともに社会保険料の支払いも免除することで、実質的に賃金の10割を保障するということです。
「4週間も休んだら給料が減って家計に影響が出てしまう」という、産後パパ育休取得を躊躇させる最大のハードルが解消されることになりました。
<【政策実現】「産後パパ育休」取らない理由はなくなります!育休前賃金100%保障へ>
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【出産等の経済的負担軽減・医療費負担軽減・学校給食無償化・高等教育費負担軽減等】
出産等の経済的負担の軽減、地方自治体の取組への支援による医療費等の負担軽減(骨太の方針 P.17) |
学校給食無償化の課題整理等を行う。(骨太の方針 P.19) |
高等教育費の負担軽減を着実に進める。2024年度から、授業料等減免及び給付型奨学金の多子世帯や理工農系の学生等の中間層への拡大、大学院修士段階における授業料後払い制度の創設及び本格導入に向けた更なる検討、貸与型奨学金における減額返還制度の年収要件等の柔軟化による拡充を図るとともに、多子世帯の学生等に対する授業料等減免について、執行状況や財源等を踏まえつつ、更なる支援拡充を検討し、必要な措置を講ずる。 地方自治体や企業による奨学金返還支援など多様な学生支援の取組の促進、初等中等教育段階も含めた関係者への周知等を図る。(骨太の方針 P.43) |
政府が「異次元の少子化対策」「子ども関連予算倍増」を検討し始めたのを受けて、フローレンスは子育て世帯の経済的負担の軽減が少子化対策には不可欠だと考え、「5つの無償化」による「子育て無料社会」の実現を提言してきました。
<#子育て無料社会 をみんなで目指す~こども予算倍増キャンペーン開始!>
骨太の方針では、この5つの提言のうち「出産等の経済的負担軽減」「医療費等の負担軽減」「学校給食無償化」「高等教育費の負担軽減」に関する文言が入りました。
誰もが希望すれば安心して産み育てられる「子育て無料社会」を実現させるため、私たちは諦めずに提言を続けます。
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【伴走型相談支援(デジタル化)】
手続等のデジタル化も念頭に置いた伴走型相談支援の制度化(骨太の方針 P.18) |
妊娠期から出産・子育てまで、身近な場所で相談に応じ、多様なニーズに応じた支援につなぐ「伴走型相談支援」について、地方自治体の取組と課題を踏まえつつ、継続的な実施に向け制度化の検討を進める。その際、手続等のデジタル化も念頭に置きつつ制度設計を行う。(こども未来戦略方針 P.16) |
伴走型相談支援は、妊婦・子育て家庭の孤立防止のため、妊娠期から産後の間に3回、助産師さん等と子育てについて相談する仕組みです。
「出産・子育て応援交付金事業」という新しい制度で、この3回の面談を受けるとセットで合計10万円の経済支援が受けられるようになりました。
(厚生労働省ページより引用)
とても大切な取り組みですが、妊娠中や産後に外出して相談に行くのは困難であることや、行政の窓口が開いている平日の日中に時間を作るのも簡単なことではありません。フローレンスは、さまざまな環境にある親子とLINEなどのSNSでつながり続け、対面とオンラインの両輪で伴走する相談支援「デジタルソーシャルワーク」を立ち上げました。社会福祉士等の専門資格を持つ支援員が、雑談・相談を受けながらゆるやかにつながり、情報提供、行政や他機関・団体と連携して地域の支援につなげています。
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【医療的ケア児支援の強化】
発達障害児や強度行動障害を有する児童、医療的ケア児を始めとする全ての障害のあるこどもへの支援体制の整備等、多様なニーズを有するこどもの地域の支援基盤の強化を図る。(骨太の方針 P.18) |
たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な「医療的ケア児」は、新生児医療の進歩などを背景に増加傾向にあり、全国に約2万人いると言われています。
フローレンスは、2014年に日本で初めて医療的ケア児・障害児を専門的に長時間お預かりする「障害児保育園ヘレン」を開園するなど、医療的ケア児・障害児保育のパイオニアとして、子どもやご家族のサポートを行ってきました。
2021年には障害のある子どもを自宅でお預かりしながら、一度仕事を離れた親御さんでも再就職を希望する方がサポートプログラムを受けられる『障害児かぞく「はたらく」プロジェクト』も始めています。
また、フローレンスが事務局を務める「全国医療的ケア児者支援協議会」も、「永田町子ども未来会議」のメンバーとして医療的ケア児の支援拡充のために提言を行ってきました。
こうした活動を経て、2021年に「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(通称:医療的ケア児支援法)」の制定につながりました。
骨太の方針に盛り込まれましたが、まだまだ支援内容・対象ともに限定的で、親の経済的・身体的負担が大きいのが課題のため、具体的な支援の実施まで行うべく、引き続き政策提言を行ってまいります。
<歴史的瞬間…!「医療的ケア児支援法」が全会一致で可決!医療的ケア児の支援が自治体の責務へ>
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【日本版DBSの導入】【こども宅食】
ほかにも、過去に性犯罪歴がある人が子どもと関わる仕事に就けないようにする仕組み「日本版DBS」や、地域社会から孤立しがちな環境にある子どもを出前型(アウトリーチ型)支援で見守る「こども宅食」なども、昨年に引き続き入りました。
特にフローレンスがいち早く創設を訴え、ソーシャルアクションを続けてきた「日本版DBS」は、6月16日、小倉こども政策担当大臣が今年秋に見込まれている臨時国会に関連法案を提出する考えを示したと報じられました。
6月中に有識者会議を立ち上げ、議論を進めるということです。
ようやく実現が見えてきたこの制度の実効性と安定的な運用のために、今後の議論を注視します。
<2023年4月こども家庭庁発足! 子どもたちを性犯罪にあわせない社会を「制度」でつくる! 「日本版DBS」制度化を進めるための5つのポイントとは?>
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さいごに
私たち一人ひとりが政治や政策を担う主体として参画し、知恵を出し、手を動かして実際に制度づくりや社会のルールに影響を与えていく政策提言を行ってまいりました。
日本中のすべての親子の笑顔のために、フローレンスはこれからも皆さんと共に「新しいあたりまえ」を形にしていきます。
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認定NPO法人フローレンスについて
認定NPO法人フローレンスは、「みんなで子どもたちを抱きしめ、子育てとともに何でも挑戦でき、いろんな家族の笑顔があふれる社会」の実現に向け活動する、国内最大規模の認定NPO法人です。
病児保育事業、認可保育園事業、障害児保育事業などを運営するほか、子どもの虐待や貧困問題等、国内の親子領域の課題を解決するため、各種支援事業や政策提言活動、ソーシャルアクションを推進しています。
認定NPO法人フローレンス コーポレートサイトURL: https://florence.or.jp/