都道府県において寄付額には大きな差があります。また、都道府県の自治体毎に分析をすることで寄付額の現状を把握し、寄付単価や寄付件数なども分析の対象とすることで、ふるさと納税の傾向を探ります。今回は宮崎県を分析します。宮崎県は、ふるさと納税で3度日本一になった都城市や残念ながら指定除外になってしまった都農町など、全国的に有名な自治体が揃っています。では、具体的に見ていきましょう。
宮崎県と全国平均との比較
1自治体あたりの平均寄付額も平均件数も全国自治体の平均を大きく上回っています。平均単価も全国平均を若干上回っています。1億円をこえる自治体が全体の84%となり、北海道の60%と比較すると、宮崎県のそれぞれの自治体はおしなべての寄付額を集める力が大きいと感じます。宮崎県の県民性はのんびりしている、闘争心がない、などと評されることも多いのですが、ふるさと納税では真逆のように、寄付額競争がとても激しくなっています。
1位から10位
平成27年、平成28年、令和2年と3回も寄付額日本一に選ばれた都城市を取り上げてみます。国内トップクラスの寄付獲得実績はマーケティングの基本を忠実に進めた結果と考えています。平成25年頃から、肉と焼酎に特化してプロモーションを開始しています。都城市は宮崎牛や焼酎では生産量も多く当然と言えるかもしれません。一般的に自治体は自らの返礼品を平等的に取り扱うことが多いものです。しかし都城市は上記の返礼品に特化するという
非常にインパクトの強い訴求方法を採用しました。しかも当時は返礼品が寄付額の3割以内という法律はなく、8割もの還元率で返礼品を提供しており、ダントツの価格競争力でした。自治体トップの強いこだわりや現場の優秀なスタッフの努力が、今のふるさと納税における都城市のポジションを確立しました。
トップダウンで、自治体平等主義に陥らず、競争力のあるカテゴリーに特化、さらに地域産業の支援になれば良いとの思い切りでどの自治体も当時やっていなかった還元率8割を先行して実施。寄付額日本一になるという目標達成に向け徹底した戦略的取り組みであり、他の自治体は全く追随できませんでした。
法律の施行後、大きな逆境になり返礼品提供事業者も苦難がありましたが、返礼品提供事業者の団結の強さもあり
常に一位争いをする自治体になっています。
11位から20位
16位の綾町を取り上げます。ユネスコエコパークに登録されているほど、自然と共生した美しい町です。ふるさと納税もかなり古くから力を入れており、綾町のファン作りを目指しています。ふるさと納税総合案内所という自治体サイト内のページは大変ユニークです。各事業者の詳細な紹介ページだけでなく、定期的に事業者のリーフレットを作成し、寄付者に送付しています。これらのことから、事業者をとても大切にしていることがわかります。またツイッター、フェイスブック、インスタグラムにクックパッドまで、SNSを駆使し寄付者との関係性を深めようとされています。このページ上にあるサイトやSNSの関係が記されているイラストも大変わかりやすくなっています。
20位から26位
21位の三股町は寄付額も大きく増加しています。この自治体の特筆すべき取り組みとして、寄付の使い道を形式ばることなく丁寧に、しかも漏れなく報告していることが挙げられます。(ふるさとチョイス 寄付金の活用報告)寄付が大きく集まっている自治体でもこの項目は空欄が目立っていますが、ふるさと納税の意義を考えた時には最も重要であると言えます。継続していただきたいと思っています。
分析を終えて
宮崎牛、鰻、マンゴー、焼酎、豚肉など、魅力豊かな地域産品を豊富に揃えることができている宮崎県。ここではどの自治体もそれぞれ強みを持っていることが確認できました。やはり都城市の成功の姿は周りの自治体にも良い影響を与えていると考えます。特に隣接する宮崎市、小林市、日南市の寄付額の伸びはそれを物語っていると考えます。都農町の不在が周辺自治体にどのような影響を与えるかは不明ではありますが、返礼品、SNSを使ったファン化、使い道やその報告にこだわっている自治体が多く、引き続き宮崎県の各自治体の優位は続きそうです。
社名:株式会社ふるさと納税総合研究所
本社所在地:大阪府大阪市
代表取締役:西田 匡志(中小企業診断士、総合旅行業務取扱管理者)
事業内容: ふるさと納税市場における調査、研究、アドバイザリー、コンサルティング、ソリューション提供等
HP:https://fstx-ri.co.jp/