本プログラムにおいては、学校紹介動画を生徒自身が360度カメラで撮影・制作する体験学習と、事前のVOD学習、参加校同士の交流といった複数のカリキュラムを組み合わせ、コロナ禍における新しい学習スタイルとしても注目されている「ブレンド型学習」形式での研修プログラムとして構成し、2022年11月27日(日)に伊那市役所にて完成動画試写会が開催されました。
完成した動画は、2022年12月9日(金)より「伊那市公式動画チャンネル」内のYouTubeコンテンツとして公開されており、今後、参加校への入学を検討する中学生や、伊那市近郊への転入を検討するファミリー層等へ向けて、市内外に広く情報発信していくことを想定しております。
1.背景
全国の多くの自治体は、進学・就職期の若年層の転出とそれに伴う人口減を課題として抱えており、伊那市でも進学期の転出傾向は従来と変わらないものの、就職期・転職期の転入傾向は近年弱まり、特に20歳代の若者の人口減少が顕著となっています。
こうした中、伊那市では、「伊那に生きる、ここに暮らし続ける」を目指す姿として掲げ、最新の技術・データを活用して地域課題を解決し、若者が定住・子育てしたくなる街づくりを実現するべく、2018年に「新産業技術推進ビジョン」が策定され、以降、市政の充実や地域の魅力発信、歴史の継承等にXR等の最新の映像技術を積極的に活用する取組み※1が行われてきました。
一方、当社は、2020年6月に京都府宮津市と連携して「観光VR映像」※2を制作するなど、XRを活用した地域振興に貢献するべく取り組んでおり、さらに、ICTと教育・研修のノウハウを活かした「新しい学び体験」の創出にチャレンジしています。
こうした背景を踏まえ、この度、新技術を活用した地域の活力創造に取り組む伊那市と、上伊那広域連合のキャリア教育事業「郷土愛プロジェクト」、教育・研修のノウハウとVR映像制作技術を有する当社が手を携え、伊那市近郊の高校5校を対象に、地元の高校の魅力をVR映像化して地域内外に発信する取組みを体験学習としてプログラム化することで、産官学連携により、XRを活用した学生向けの新たな学び体験創出と上伊那地域の魅力発信が実現しました。
※1 モバイルクリニック(オンライン診療による移動診療車)、ぐるっとタクシー(AIを活用した乗合タクシー)などICTを活用した行政サービスの拡充や、XRを活用した郷土の歴史の継承(高遠城の戦いをVRで再現)、地元の見どころ紹介(高遠城址お花見VRツアー等)など。
※2 【NTT XR】宮津市観光VRプロモーション https://www.nttls.co.jp/bizcase/vol005
本サービスはNTTグループが展開するXR*事業「NTT XR(Extended Reality)」の取り組みの1つです。
*XRとは、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)といった先端技術の総称です。
https://group.ntt/jp/nttxr/index.html
2.概要
事業概要
名称 | 令和4年度 高校生によるVR技術を用いた学校紹介動画作成 |
期間 | 2022年10月~2022年11月 |
参加校 | 上伊那農業高校、高遠高校、伊那北高校、伊那弥生ヶ丘高校、伊那西高校 |
主催 | 伊那市企画部 |
後援 | 上伊那広域連合 郷土愛プロジェクト |
全体カリキュラム
事前VOD学習 | 2022年10月下旬 | VRや映像制作の基礎に関する動画学習 |
集合研修 | 2022年10月30日(日) | 360度カメラの操作体験、企画・コンテ制作等 |
撮影体験/編集 | 2022年11月上~下旬 | 動画撮影/プロの編集技術者との編集会議 |
完成動画試写会 | 2022年11月27日(日) | HMD(ヘッドマウントディスプレイ)で作品鑑賞 |
10月下旬に実施した事前VOD学習では、VRをはじめとしたXR技術に関する基礎知識や360度VR動画の企画・制作ノウハウが学べる動画コンテンツを提供。生徒たちにはスマートフォン等で各々好きなタイミングで視聴していただきました。
10月30日には、参加5校の交流プログラムと集合研修を実施し、360度カメラの実機を用いて操作体験をしたり、制作する動画のテーマや構成について話し合ったり、絵コンテの制作も行っていただきました。
集合研修当日に360度カメラを生徒へ貸し出し、翌日から1週間が動画撮影期間となりました。11月上旬と日も短くなる中、授業中・昼休み・放課後の時間をフル活用して課外活動的に思い思いの動画を撮影してきていただきました。
動画の編集は当社の映像制作部門に所属するプロの編集技術者が実施しますが、生徒たちには「編集会議」に参加してもらい、映像をどうつなげるか、テロップやBGMはどこで入れるか、イメージ通りの作品になるよう編集技術者と相談しながら仕上げを行いました。
ついに、5校のVR映像が完成し、11月27日の完成動画試写会でお披露目を行いました。各校の生徒に工夫したポイント、苦労した点などを発表していただき、いざHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着。工夫が凝らされた作品を360度映像として楽しんでいただきました。
3.集合研修(10月30日)の模様
当日は日曜日にも関わらず多くの生徒が参加し、VRに関する基礎知識や、360度映像の特長を活かした撮影方法をはじめとした各種撮影・編集技法について学んだ上で、実際に360度カメラを利用しながら自身の学校の魅力を紹介する動画の構想をまとめました。
講義後、実際の360度カメラを手にすると生徒たちは興味津々。360度カメラと自身のスマホを連携させてその場で試し撮影を実施し、プレビュー映像をチェックしながら撮影方法を確認しました。その後、自身の学校の魅力を再確認しつつ、どこで何を撮影するのかなど活発な議論を実施していました。
<ご担当者様の声>
上伊那広域連合 地域振興課 郷土愛プロジェクト担当
キャリア教育コーディネーター 傳田(でんだ)様
「生徒たちが自身の学校紹介を検討する際に、真剣にディスカッションしている様子や、終わった後の反応を見ると、どのような映像が完成するのかが楽しみ。360度カメラを興味深く操作している生徒の姿が印象的だった。」
4.完成動画試写会(11月27日)の模様
生徒たちに加えて撮影をサポートされた先生方にも参加いただき、工夫したポイント・苦労した点などの発表と併せて完成した動画を順番にお披露目していきました。同じ地域の高校生が同じ時期に作成した動画ですが、校舎内の様子や一日の流れ、特徴的な授業内容といった学校の個性と、動画全体の構成、ナレーション・テロップのセンスなど生徒たちの個性が存分に表現された作品に仕上がりました。
今回制作した360度VR動画はPCやスマートフォンの画面でも簡易的に視聴することができますが、試写会では参加者全員にHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を貸し出し、360度の視野を体験していただきました。全方位の映像が視聴できるという特徴を踏まえた演出の工夫も見られ、生徒たちはその場で後ろを振り返ったり上を向いたりしながら全5校の動画作品を鑑賞しました。
参加後アンケートの満足度も高く、映像作品の企画・撮影といった普段なかなかできない経験を、忙しい学校生活の中でも楽しんでいただけた様子でした。
<ご担当者様の声>
伊那市 企画部 企画政策課
新産業技術推進コーディネーター 小林様
「撮影期間が短い中で、各校の特色を活かした映像が盛り込まれたコンテンツとなっており、非常に素晴らしかった。参加して下さった生徒の皆さんが、全体のストーリー検討から撮影まで良く考えながら制作したのが分かる内容だった。」
<参加生徒アンケート(抜粋)>
「どこの学校も完成度が高くて各学校個性があって面白かった!」
「外の映像を撮る時は暗くなる前に撮らないとならないから放課後に急いで撮らなくちゃならなくて大変だった」
「時間に余裕がなく天候や大会の練習の関係で100%満足するものは撮れなかった。」
「なかなか携わることの出来ない機会でしたので、不安もありましたが楽しい活動をすることが出来ました。ありがとうございました。」
「VRを自分たちで撮影するのは滅多にできないと思うのでとてもいい経験になった。」
5.今後の展開
完成した動画は、2022年12月9日(金)より伊那市公式動画チャンネル内のYouTube上で公開され、今後、参加校への入学を検討する中学生や、伊那市近郊への転入を検討するファミリー層等へ向けて、市内外に広く情報発信していくことを想定しております。各校の特色・特長が生徒自身の感性で思い思いに表現された動画の活用機会の広がりとともに、上伊那地域への理解・関心が広がっていくものと考えています。
当社では、今回の取り組みを皮切りに、学校教育現場におけるVR動画制作や、VR動画による地域・学校の魅力発信に貢献するべく、より良いサービスの提供に取り組んでまいります。
■伊那市公式HP
https://www.inacity.jp/shisei/inashiseisakusesaku/shinsangyougijutu/174kij20221209.html
(伊那市公式動画チャンネルURL掲載先)